2
父は昔気質の人でもあった。
ゲームや漫画が大好きで、子供のためにと言っては自分がハマっているような人だったが、どこか考え方が古く、
『女は男より1歩下がって歩く』
そんな昔ながらの大和撫子を理想とするような人だった。
母はおっとりとして優しい人で、かなり天然な人だった。
料理は普通にうまい癖に、よく不思議なひと手間を加えて味を劇的に変えている。
でも怒らせると本当に怖い人だった。
ココという線引きがはっきりとしていて、それだけは絶対に譲らない
芯のしっかりとした人。
私達兄弟はそんな母が大好きで、母が近くにいる時はべったりとくっついていた。
だから幼かった私は気付かなかったんだろう。
愛してくれる父と世界一大好きな母が
いつも最低限の言葉しか交わしていなかったことに…
私達が歳をとるにつれて、2人の関係が見る間に変わっていった。
母は笑わなくなった。
父は怒鳴るようになった。
母は泣きそうな顔をするようになった。
父は姉に手をあげるようになった。
そうして
姉が家を出て
弟が不登校になって
私が壊れてしまった。
私の大好きな家が壊れてしまった。
よくある話。
むしろこんなのはまだまだ序の口だと自分でも思う。
それでも当時の私達には限界だった。
私は母を守りたかった。
姉を逃がしたかった。
弟を支えたかった。
でもその為に
私は父を切り捨てる道を選んだ。
私は、母を、姉を、弟を
そういう建前を振りかざして
自分の中の父親を守るためだけに
2人に離婚を迫ったのだ。