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以前挙げた短編を元にした中編です。家庭崩壊の話なため、不快になられる方もおられるかと思います。ご注意下さい。
私には父がいた。
俗にいう団塊世代の人で、仕事に厳しい人だった。
子供が大好きで、幼い頃から可愛がってくれていた。
幼い頃の私は、週末の夜には父が早く帰ってきて聞かせてくれる私を主人公にした冒険の話がとても楽しみだった。
織姫と冒険したり、桃太郎と決闘したり、シンデレラと踊ったり。
父は若い頃に詩やポエムを書いたりしてたそうで、その話はめちゃくちゃだったけれどとても面白く、20年を過ぎた今でも断片的に覚えていたりする。
父の仕事が忙しくて日曜日に出かけた記憶は数えるほどだったけれど、写真はたくさん残っていて、愛されているんだと嬉しく思ったものだ。
遊園地とか公園とか、姉弟と私、そして母が写ったその写真はすべて父が写したものだ。
正直ピントはあってないし、背景のバランスも悪いが、4人とも楽しそうに笑っている
良い写真だと思った。
愛されている自覚があった。
だから周りから言われる「素敵なお父さんね」という言葉に私はいつも笑顔で肯いていた。
このころはこんな風に父と別れて生活するだなんて思いもしなかった。