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1-5 彼女と刀のカンケイ

 レイルーブの街の警察署は街の北より、商店街から少し離れた場所にあった。ラクード達三人が駆け付けた時には、その対して大きくも無い2階建ての建物を武装した男たちが囲んでいた。署の一部からは火が上がり、喧噪が聞こえる。そんな光景を確認するが否やノワは腰から刀を抜いた。


「いきなり走るな! 危ねえだろ!」

「すいません。しかし今は我慢してください!」


 爆発音を聞くと直ぐに走り出したノワ。必然的に鎖で繋がれたラクードも走る羽目になり不満を漏らすが、今はそれどころでは無い。警察署を取り囲んだ暴漢達はそれぞれ武器を手に内部へ侵入して行っている。のんびりしている暇は無い。

 こちらの接近に気づいた男たちが何かを叫び武器を構えるのを視界に収めつつ、ノワは身体強化を発動。更に加速をかけ、


「おい馬鹿!?」

「あ―――っ」


 一足飛びに飛び出した瞬間、ラクードと繋がれた右腕が引っ張られバランスを崩す。加速しようとした力は相当な物であり、それを突然止められたせいでノワは足をもつれさせラクード共々地面に転がる羽目になった。


「きゃああっ!?」

「うおぉっ!?」


 幸い積もった雪のお蔭で大事には至らなかったがノワとラクードは数メートルの距離をお互い絡み合う様に転がっていき、やがて停止する。


「痛ってぇ……クラーヴィス! お前ちったあ考えろ!」

「っ……す、すいませ――ってきゃああああ!? ど、どこ触ってるんですか!?」


 地面を転がっている間に二人を繋げる鎖はお互いに絡み合い、二人の体を密着させた状態になっていた。ノワが慌てて抜け出そうとするが中々上手く外れない。


「ちょっと待て暴れるな! 今何とか……」

「え、ええ。……はい、そこです。あっ! んっ、痛いですっ」

「我慢しろ。ここをこうすれば」

「んっ……」

「顔を紅くするな! やり難くくてしょうがない!」

「な、何を想像してるんですか!?」

「お前ら何やってんだ?」


 突然転がりこんで来たかと思ったら、鎖に絡まって何やらごそごそ動く男と扇情的な声を漏らす女。そんな二人に呆気に取られていた男たちが気まずそうに尋ねる。ノワとラクード二人も『あ……』と気づき、何とか解けた鎖を鳴らして慌てて立ち上がった。


「あ、あなた達! これ以上の狼藉は許しませんよ!?」

「無理やり話を変える気か」

「あなたは話を蒸し返さないで下さい!」


 ラクードのツッコミを顔を真っ赤にして返しつつノワは改めて刀を構えようとして、己の手にそれが無い事に気づく。どうやら転がった拍子に手放してしまったらしい。ノワの額に冷や汗が流れる。ラクードもそんなノワの様子に気づき半眼で睨んだ。


「……おい」

「すいません……」


 別の意味で顔を赤くして俯いたノワとその隣のラクードに男たちが襲い掛かった。





 刀を失ったノワと、もとより武装していなかったラクード。その二人を囲む様にして男たちが襲い掛かる。その手には剣や銃などが握られている。


「他に武器は!?」

「あります!」


 ノワがナイフを抜き、もう一本をラクードへ渡す。ラクード自身の武器は昨日の戦闘で殆ど失われている。二人は襲い掛かってくる相手を迎え撃とうとそれぞれ動きだし、そしてまたしても鎖で邪魔をされてバランスを崩した。


「おい右だ!」

「左です!」


 お互い逆方向に動いた故に鎖がピンと伸びて反動でよろける。ラクードは己の頬を剣がかするのに冷や汗を流した。


「こんっのぉぉぉ!」

「きゃあああ!?」


 力任せに利き手の左腕を振り抜く。男の腕を狙ったそれは腱を切り裂き、男が血を流しながら悲鳴を上げた。そのまま追撃をかけようとするが、力任せに引っ張られてきたノワが男にぶつかり悲鳴を上げた。


「何をするんですか!?」

「悪い、事故だ事故!」


 よろけながらも立ち上がったノワの抗議を受け流し新たな敵を迎え撃つ。ノワも直ぐに飛び出し何とか鎖が張らずに自由に動ける距離までラクードに近づくと同じ敵に向かう。

 男の武器は両手の双剣だ。その左右からの斬撃をラクードとノワはお互いのナイフで受け止めるが、その途端、刃がぶつかり合った場所から炎が噴き出した。魔導器だ。

 急ぎ二人は刃を引き後ずさる。だがその左右から別の男たちが迫る。二人はそちらに注意を移し、それぞれナイフで防ごうとするがまたしても鎖に邪魔されて思う様に動けずバランスを崩してしまった。


「面倒だなおいっ!」

「っ、同感です!」


 体勢を崩した二人に襲い掛かる凶器。対し、ラクードは片手を地に付けそのまま体を横に半回転。重い足払いをかけ相手を牽制。ノワはナイフを相手に投げつけそれを牽制として体勢を直す。


「跳んでください!」


 ノワの叫びにラクードは確認せず従った。続いてノワも追いかけるように飛び上がりつつ腕を振るう。


「《天落・土竜式》!」


 昨日大型機導人形を地に沈めた腕輪の魔導器を発動。一瞬にして地面が崩れ男たちが足を取られ沈んでいく。


「な、なんだこれは!?」

「し、沈む!? うわあああああ!?」


 その気になればかなりの深さまで相手を沈ませる事の出来るこの魔導器だが、このまま続けば落下したラクードとノワも巻き込まれてしまう。故に直ぐに発動を切ると二人は崩れた地面の中でも比較的安全な場所へ着地した。


「おお、やるじゃねえか」


武装した男たちは膝下程までを地に沈められ動きが鈍い。そんな男たちに対しラクードが蹴りを叩きこんでいく。だがノワの反応は薄い。


「まだ居ます。気を付けて下さい」


 ノワの言う通り地面の崩落に巻き込まれなかった者達も多い。二人は背中合わせに敵を見据える。


「わかってる。しかし思っていた以上に邪魔だなこの鎖」

「ええ。これでは思う様に動けません。それに武器も心もとないです。急がなくてはならないのに」

「ぶっちゃけ俺は余り関係ねえんだが……。まあ、お前と離れられない以上仕方ねえ。さっきの魔導器でこの辺一体掘り起こすのはどうだ?」

「自分達まで巻き込みますので不可能です。それにこの街の警官達にあれを防げるとは思えません」


 ノワが視線を移した先では年配の警官が盾を手に防戦一方な姿があった。何人か血を流して倒れている者もいる。早く彼らを助けなければなら無い。ラクードも同じ方向を見てため息を付いた。


「あれで警官かよ。随分と平和ボケしてたんだな」

「仕方ありません。普段は見回りと小さな犯罪の取り締まり以外は盆栽とゲートボールに人生を捧げている方達なので」


 それは色々とどうなんだろうかと思ったがあえて口には出さずラクードは頷いた。別に地方警察の怠慢を糾弾する気は無い。


「だったらてっとり早く全滅させるしかねえが、こんなナイフ一本じゃどうにもなんねえな」

「敵の武器を奪うのも手ですがどちらにしろ難しそうですね」


 武装した男たちが持っているのは剣や銃。斧まであるがそのどれもが例え奪ったとしても一網打尽に出来るとは言い難い。


「セシルとかいう女とあのネジの飛んだ変態女はまだ来ないのか」

「セシルさんはあまり走るのが早くありませんし、ジェネスも遅れて出た筈なのでまだかかるでしょう」


 こうしてる間にも武装した男たちは少しずつ復活してきている。のんびりはしていられない。故にラクードは先程から少し考えていた提案をする事にした。


「なら、俺を使ってみるか?」

「あなたを……?」


 その提案に驚き目を丸くするノワにラクードが頷く。


「どの道この鎖が邪魔で上手く動けねえ。だったら一人でやった方が安全だろ。それにもし剣に変わった俺が魔導器と同様の物なら、何かしら力があるかもしれないしな」


 だがそれは同時にノワ一人で敵を相手にする事にもなる。故にラクードは判断をノワに任せる事した。ノワは少し悩んだ様だが、意を決して頷く。


「わかりました、やりましょう」

「本当に良いのか? 何も力もない唯の剣かもしれねえぜ?」

「そうしたら別の方法を考えるだけです。それにそもそもこの戦いは私があなたを巻き込んだような物ですから。私が何とかするのが筋の筈なんです」


 この方法もあなたに頼るみたいで情けないですけどね、と苦笑するノワにラクードは何も言わず、そうか、とだけ頷いた。


「お前が良いならいい。上手く使えよ」


 言うが否や、ラクードが黒い光に包まれそしてそれは巨大な剣の形となってノワの手に握られた。

 見れば見る程異様な剣だ。漆黒に染まる刀身は分厚くノワの体を隠せる程。長さもそれに応じた物があり、ノワの身長より長い。そんな刀身には複雑に刻まれた紋様。核らしきものは外観からは見受けられないが、代わりとばかりにその紋様が時節淡く赤色に光っている。そして剣の柄に当たる部分から伸びた鎖はノワの右腕の腕輪と繋がっていた。

 突然剣に変わった事に驚いた男たちに囲まれた中、ラクードが声を発する。


《何度やっても妙な感覚だな》

「そうなんですか? それでどうでしょうか。何か出来そうですか?」

《そうだな……なんとなくだが、分かる。クラーヴィス、俺を奴らの中央に叩きこめ》

「叩き込む? それだけですか?」

《ああ、別に当てなくても良い。何となくだか、出来そうだ》

「わかりました」


 少々心許ない言い方ではあったがそれを帳消しにするほどの力強い声にノワは頷く。そして少々重く感じる漆黒の大剣を構え、腰を落し、


「行きます」


 強化した肉体を駆使して高く飛び上がる。目標は男たちの中央。もしラクードの言っている事が事実でなければそれは敵の最中に飛び込む無謀な行為だが自然とその不安は無かった。事実、握り占めた大剣がその刀身に赤と黒の光を走らせ、どくん、と脈打つ。

 男たちはその大剣の巨大さに恐れたのか受け止める事はせず躱す事を選んだ。あわよくば外した隙に一気にたたみかけるつもりだろう。それが分かっていながらも、ノワは持てる力を総動員してその大剣を振り下ろす。


「はあっ!」

《潰れな!》


 どこか楽しそうなラクードの声。同時に地面に叩き付けられた刀身から一際鈍く輝き、そこを中心としてまるで波紋の様にそれが広がっていく。そして、


「う、うわあああああ!?」

「なんだこれは……あああああッ!?」

「ぎゃあああああああ!?」


 ずんっ、という音と共に周囲一帯に異常な強さの重力がかかる。男たちが地面へと叩き潰され、その地面もその重さで陥没していった。


「これは……」

《おう、いい感じだな》


 着地したノワが驚いた様に辺りを見回す。武装した男たちはその殆どが地面に沈みうめき声をあげていた。中には腕や足が妙な方向に曲がっている者もいる。


「な、何をしたんですか?」

《ぶっ潰しただけだ。どうもこの魔導器はそういう力があるみたいだな》

「しかしやり過ぎでは?」

《細かい事は気にするな。それよりまだ残ってるぞ。とっとと仕事を済ませろ》

「わ、わかりました」


 周囲の男たちは全滅したが、警察署の入り口付近で警官と戦っている者達や侵入した者達がまだ残っている。ノワは大剣を片手にそちらへと走っていった。





 レイルーブの警察署はそれほど広さは無い。受付や事務スペースがある1階と、会議室や仮眠室のある2階。そして罪人を拘留するための地下の牢屋だ。武装した男達はその地下が目的だったらしく入り口付近の敵を倒したノワ達が駆け付けた時、地下への階段を守る警官達と睨み合っている最中だった。

 こちらの姿を見つけた警官達がその顔に笑みを浮かべる。


「おぉ、ノワちゃん! 助けてくれい」

「ちゃんは辞めて下さい! 行きますよ!」

《おう》

「なんだお前……はっ!?」


 突如現れたノワとそれがもつ異様に巨大な剣。それに驚いた男たちが慌てて武器を構える。対してノワは刀身を前に突きだし一気に接近した。剣が大きすぎて室内で振る事が出来ないのだ。

 巨大な剣での串刺しを恐れた男たちが左右に分かれる。だがその行動はあらかじめ予想していた。ノワは刀身を立てると一気それを右に振り抜く。巨大な刀身は突きを避けた男た達に激突し壁へと叩き付けた。続いて左に避けた男達に向かおうとするノワをラクードの声が止める。


《後ろだ!》

「――っ!」


 隠れ潜んでいたのだろう。背後から剣を振りかぶった男が迫る。ノワは咄嗟に剣を引き、振り返ることなくその柄を槍の様にして男へ叩き込む。だが浅い。


「調子にのるなよ!」


 男がノワの背中へと剣を振り下ろす。だがそれが当たるより早く、その腕を大きな手が受け止めた。


「よお」

「なっ!? 剣が人間にぃぃ!?」


 それは一瞬で人間に戻ったラクードだった。いきなり剣が人間に変わった事に唖然とする男の腹にラクードが蹴りを叩きこみ悶絶させる。


「ありがとうございます」

「いいさ。俺としても早く片付くに越したことはない」


 礼をいうノワに頷くとラクードが残る敵を睨みつける。数は三人。一人が銃を手に、残り二人は剣を手にしている。


「け、剣が人に変わった!?」

「なんだこいつは!」

「……奇妙な男だな」


 怯えた様に震える二人と、一人冷静な男。その男が手に握る剣は他の者達が持っていた物より装飾が成されている。


「おうよ。どうもオモシロ体質になっちまった見たいでな。まあお前らには関係ないからとっとと捕まるか痛い目に合うか選びな」

「言う事を聞くと思うか?」

「いーや。聞いただけだから安心してノされちまいな」


 獰猛な笑みを浮かべるラクードに男も口を吊り上げる。


「そうか。だがごめん被る!」


 男の手の剣型魔導器の核が光る。その眩しさに咄嗟に眼を閉じたラクードだが、何かに気づき咄嗟にノワの方へと跳んだ。


「きゃっ」


 突然のそれにノワが小さく声を上げるノワの襟首を掴み、そのまま署内の廊下を数メートル引きずるようにして停止する。目を開いてみれば先ほどまで自分が居た床に剣を突き刺す男の姿があった。


「躱したか。良い勘をしている」

「男に褒められても嬉しくねえよ。随分とセコい魔導器持ってんだな」

「実用的と言え」


 再度男の剣型魔導器が光る。今度は予想出来ていたので目を瞑ることなく光を腕で遮るが、その一瞬の隙に男が懐まで距離を詰めていた。今度は躱せないと判断するが否やラクードは咄嗟に鎖を掴みそれを掲げた。ギィッ、と金属がぶつかり合う音が響き、鎖が刃を受け止める。


「ほう?」

「やれ!」


 ラクードが掴んだことで引っ張られたノワだが今回は彼女も準備していた。男の顔目掛け掌底を放つが、再び男の剣が光ったかと思うと男は数メートル後ろまで一瞬で後退していた。


「あいつのあれ、光るだけじゃないみたいだな」

「ええ、身体強化でもあそこまで予備動作無しでは動けません。あの剣の力でしょう」


 囁き合う二人の前で男は笑う。まるで正解だと言わんばかりだ。


「やっぱり武器が心もとないな。また俺を使うか?」

「駄目です。あなたが変化したあれは大きすぎて室内では不向きです」


 それもそうだとラクードが頷く。だがそうなるとあの武器を相手にするのは中々に骨だ。先ほど倒した男たちの武器を使う手もあるが、あの速さ相手では拾いに行っている間に斬られかねない。


「武器……」


 ふとノワは己の右腕に視線を落とす。鎖で繋がれた腕輪。その力は先程ラクードが見せて見せた。やはりこれは武器としての力を目的とした魔導器だ。だがそうならば……自分自身も変化する事が出来るのだろうか?

 自分の右腕の腕輪はラクードの左腕の物と全く同じだ。勿論、同じ形状でも機能はそれぞれ違う可能性は十分ある。しかしそうでなく、自分自身も変化する可能性も大いにあるのだ。それがどんな武器になるのかは分からないが、この状況を打開する可能性が少しでもあるのならそれにかけてみたい。


「ラクード」


 思えばちゃんと名前を呼ぶのは初めてな気がした。そんな場違いな事を考える自分に少し呆れつつ隣の男を見上げる。


今度は私が(・・・・・)やってみます」

「っ、そうか」


 ラクードもこちらの言いたいことに気づいた様だった。小さく頷き了承する。


「相談は終わりか? ならそろそろ行かせて貰おう。……しかし思わぬ拾いものだな。男はともかくそこの女は色々使い道がありそうだ」

「おいおいおいおい。散々恰好つけて置いてゲス発言かぁ? 勘弁してくれよ。今更キャラ付されてもどうせ覚えねえから無駄な事はしなくていいぞ」

「黙れ小僧。あまり吠えると惨めに見えるぞ?」

「じゃあ何だ? 猫撫で声で鳴けってか? 随分と特殊な性癖だなおい。変な菌が感染ると嫌だから近づくなよ」


 ラクードの挑発に男の額に青筋が浮かぶ。そんな様子をどこかおかしく感じつつ、ノワは敵の目前にも関わらず目を閉じた。

 イメージするのは武器となった自分。ラクードは最初から剣だったので剣をイメージしたと言っていたが、自分はまだ出来るかどうかも分からない。だがラクードが時間を稼いている間に何とか出来なければ他の方法を考える必要が出てくるのだ。故に真剣にイメージする。自分の考える武器、それは自然と普段よく使う刀が思い浮かんだ。そしてそれが思い浮かんだ瞬間、頭の中で何かが組み合わさる様な感覚。


「もういい。死ね」

「無個性過ぎるのもどうかと思うぜ?」


 時間稼ぎも限界だ。だがその成果はあった。

 男の剣が光りラクードの懐へ一瞬で飛び込む。そしてその剣でラクードを切り裂かんと振り下ろし、


「へえ、こいつはまた」

《良い感じです》


 ラクードが左手に握る、薄く蒼く光る刀。その銀閃により、受け止められた。


「なっ!?」


 予想外の事態に男が後ずさる。ラクードは試す様に二、三度その刀を振るうと、むう、と唸った。


「軽いな」

《むしろ女性に重いと言ったら怒りますよ?》

「そういうもんか? まあいい。それでお前も出来そうか(・・・・・・・・)?」

《ええ。あなたの言っていた『何となく』の意味が今なら分かります》

「なら行くぞ」

《はい》


 ラクードが腰を落し、刀を引く。その刀は先程以上に青白く光りその刃に超上の力が込められている事を示していた。


「くそっ、そんな子供騙しが!」

「子供騙しはお前だろ、おっさん」

《同感です》

「黙れぇぇぇぇぇ!」


 激昂した男が魔導器の力で接近してくる。その動きは全く見えない。見えないが関係ない。ただ振るだけでいい。それはノワもラクードも理解していた。

 ラクードの全身に力が籠る。引いていた刀を引き戻し、一気に振り抜いた。だが早すぎたその一振りは男が近づく前に振り抜かれ刃は男に届かない。男の顔が喜色に歪む。

 だが、


《纏めていきます》


 振り抜かれた刃。その軌跡に沿って青白い光が放たれた。光はまるで根の様に幾重にも分かれ、複雑な軌跡を描きながら男に迫る。そして直撃するが否や男の体を凍りつかせていく。


「なんだ……これ……は……!?」


 体が凍りついていくという異常な状況に顔を恐怖で彩られた男はやがて文字通りの全身氷漬けとなり動きを止めた。更にはその光の根は背後にいた男の仲間たちまでも巻き込み氷漬けにしていく。

 やがてぱぁっ、と周囲に青白い光が舞い、それは霜となって室内を凍えさせていった。

 そんな極寒の世界に佇みながらラクードがふむ、と頷く。


「やりすぎじゃねえか?」

《細かいことは気にしないのでしょう?》


 そんなノワの返答に、事態を見守っていた警官達が縮み上がっていた。


ノワさんはうっかり属性


時代背景は近世よりファンタジー

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