第四話 魔法の使い方
さて、撤収、撤収。
私がこれ以上ここに居たら不審に思われる。
その後、泥棒達は使用人の一人に発見された。既に拘束状態のまま、その事で屋敷は騒然とした。
父は「侵入経路の特定を急げ!」や「屋敷の警備を強化しろ!」など使用人達に指示をだし、泥棒達を傭兵団に引き渡した。
私は少し離れた場所でその様子を眺めている。
今回の事件、表向きには使用人の一人が賊を撃退したということになったらしい。
「賊を捕らえた人物の正体、身元を突き止めろ、それと───内部の人間の可能性も視野に入れておけ。」
そう言っていたが私がやったなんて考えつくはずがない。
しかし彼女は知らない、ある視線がこちらを静かに睨んでいるということを。
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数日後。
「火球!」。
リオンの掌に小さな火の火球ができた。
ゆらゆらと不安定な火の玉だ。
「や──。」
しかし数秒も持たずにボシュッ、と音を立て消滅した。まるで息を吹きかけられたように。
リオンは露骨にしょんぼりと肩を落とす。
「違いますよ、リオンお嬢様。」
「魔力を出すのではなく、流すのです。」
「そして、その流れを止めずに保つ。」
難しいこと言ってるな、リオン姉ちゃん困ってるよ。
私は少し離れた場所で見ている。
理論っぽいことを言っているのは姉の魔術の家庭教師の女性だ。スーツ姿にメガネとThe教師と言わんばかりの姿だ。
「魔力を水だと思い、魔力を流すための装置はお嬢様だと思って下さい。」
「う〜ん、わかんないよぉ。」
姉は困ったように眉を下げる。
お姉ちゃん困ってらっしゃる。
まぁ私も神様からやり方は聞いたが、聞いた物を自分の物にするのって難しいからね。
「・・・。」
少し手助けをしよう。
私は姉の方に駆け寄った。
「お姉ちゃん!」
「カノン!ダメだよ、今お姉ちゃん勉強中だよ。」
「カノンお嬢様。」
家庭教師の鋭い視線がこちらを見つめてくる。
「ご用事があるのなら、もう少し後にしてくれませんか?」
「・・・大丈夫です。直ぐに終わります。」
私は姉に問いかける。
「カノン?」
リオンが不思議そうに声をかける。
「お姉ちゃん、私の言った通りにしてみて。」
私は決して家庭教師の言ってることを否定してるわけじゃない。
姉と家庭教師ではおそらく考えてること自体が違うかもしれない。同じ火球の術式でも家庭教師はその意味を熟知してるから出来るが姉の場合ただ言われた通りにやってるだけだ。
「火ってどういう風に見える?」
「え?どうって、メラメラ燃えてる?」
「そう、つまりは想像力だよ」。
「想像力?」
「考えてみてメラメラと燃えたぎる火の球のことを。」
「自分で想像した物を魔力って言う粘土で形取って、それを具現化させる。」
「・・・わかった、やってみる。」
「リオンお嬢───、」
「静かにして!!」
「メラメラ、、、う〜ん、、、」
次の瞬間、
ボッ、と掌の上にさっきよりもはっきりと形を持った火球が生まれる。
揺らめきながらも、今度は消えない。
「や、やったぁ!できた、できたよ!カノンすごいすごい!」
ぱっと顔を輝かせる。
頬を赤く染め、嬉しさのあまりその場でぴょんぴょんと跳ねている。
ホッ、と胸を撫で下ろす。
良かったちゃんと説明できた。
「やったのはお姉ちゃんですごいのはお姉ちゃんだよ。」
「教えてくれたのはカノンじゃん、カノンのおかげで初めてちゃんと魔術打てたし〜。」
頬をすりすりしてくる。
ちょっ、痛い、流石に痛いよ。
「これは・・・カノンお嬢様。」
家庭教師が私と姉の所にやってきた。
「大変感服致しました。この助言はどちらで?」
「・・・、」
まずい、私が魔術使える事は秘密にしておきたい、なんていえば、えーと、えーと、そうだ。
「その持ってる魔術書に書いてありました。」
ニコッと笑い誤魔化す。
別に嘘は言ってないはずだ。
「魔術書?」
「カノン、5歳の誕生日で父様から魔術書貰ったんだよ、ね〜。」
「う、うん。」
「・・・そうですか、、」
誤魔化せたか?誤魔化せたな、うん、誤魔化せたことにしよう。
ちなみに父親の名前はガイアス・クロムウェル、母親はアイリス・クロムウェルです。




