第五話
社長の紹介とやらが終了し、各々業務に散るタイミングで、私達も各自の仕事に戻った。
私は当然のように朝ごはんを抜いてきていたため、なんでもいいから腹に入れようと給油室へ向かっていたところ、後ろから誰かの足音が聞こえて来た。
なんとなく足並みを緩めて先に行ってもらおうとしたところ、向こうも同じく足並みを緩め私の真横に立ち、きれいな笑顔で声をかけてきた。
「久しぶり」
「…あ、初めまして。先程挨拶されていた、堀園社長…でしたよね?ウワーナマデハジメテミマシタカッコイイデスネさようならお疲れ様です!」
「は?ちょ、おい!」
こいつ覚えてるのかよ。記憶力まで完璧とかそんなこと許されるの!?
走って給油室に駆け込み、流石のあいつも来たばかりのビルでは着いてこれないだろうと一息ついたと思ったのもつかの間、壁に手をかけて偉そうに立つやつがいた。
「おい、なんだそれ。謎の棒読みもやめろよ気持ち悪い」
「…なんでついてくるの。っていうか、なんでうちに来てるの!?」
「買収って言っただろ、聞いてなかったのか?」
「わざと?狙った?腐れ縁にも程がないと思わない?やっと大学で離れたと思ったのに…数ある会社の中からなんでうちな訳?」
「それはまじで偶然だって!てか、大学離れたのってやっぱりわざとかよお前…」
だと思った…やられた…とぶつぶつ呟く亮。
つい彼のペースに乗せられてしまったが、ここは職場である。
しかも相手は買収先の、次期弊社社長(独身、イケメン)だ。
こんなところで仲良く話しているところなんてバレてしまったら何が起きるかわからない。
適当にコーヒーを入れ、何か文句を言い続ける亮の横をそろりと通り抜けようとしたところ。
「おい、だからなんで無視すんだって」
普通に腕を捕まれた。
「ちょっと!あのさ、私に関わらないでって!知り合いだと思われたくないの!ほんとにお願いだから!」
「はぁ?だから、なんで嫌なんだよ」




