第三話
常に繁忙期のような弊社だが、大きめの案件が落ち着き、二週間に一回くらいは定時退社ができるようになってきたある日。
衝撃の話が降りてきた。
『堀園ホールディングスによる買収について』
出社して一番に目に入る掲示板にデカデカと貼られていた通知文書に書かれていたのは、些か信じがたい内容だった。
「…え!?なにこれ、どういうこと?」
「由美ちゃんおはよー。どうしたの?」
通知文書の前で一人ボソボソと声を上げていたら、後ろから声をかけられる。
彼女は同期の原杏里。ふわふわとした雰囲気からは想像のできないタイピング能力とタスク消化力で、私の同期達で唯一残った二人のうちの一人である。
「杏里!ねぇねぇ、見た?これ」
「ん〜……えぇ?なにこれ。今初めて聞いた…こんな内容って、文書だけの告知でいいの?」
「いや、流石に今日説明あるでしょ。これだけは流石に…」
掲示されている内容によると、来月頭には締結し、新業務体制に入るとのことだった。
このような大きい内容でも、簡素にペラっと紙一枚で告知するあたりも、ブラック企業たる所以である。
「せっかく繁忙期終わったのに、また残業まみれになるってこと…?」
「え〜でも、堀園グループから社員が流れてくるんじゃない?そしたら流石にこの業務体制も落ち着くと思いたいけど…」
些か信じがたい内容に、二人でポスターの前で話していると、執務室から集合の声がかかった。
うちの会社は業務も各々に任せている部分が大きいため、朝礼なども滅多に行われない。
二人で顔を見合わせ.執務室へ入る。
まさか、こんな残業まみれのブラック企業OLライフが、この日を機にここまで大きく変わることになるとは、このときの私はまだ何も気づいていなかった。




