性癖破壊幽霊と少年①
唯一日時を確認する手段であった愛用のタブレットの電源が入らなくなってしばらく経つが、用水路の向こうに田植えから間もない様子の田んぼが広がっているので、今はまだ初夏といったところか。だというのに傾いた日差しが過剰に辺りを熱していた。
雲が出て空気がにわかに湿気を帯びてきてはいたが、日中は晴れており季節外れに暑かったので、ひび割れたアスファルトはさぞ寝苦しかろう。
なにが起こったか簡単に説明すれば、俺はついさっき、通りがかったこの少年に声をかけた。
その後色々あって少年が失神・昏倒した。
もし推察が当たっているならば信じがたいことだが……自ら進んで気絶したようだった。
少年は少し微笑むような安らかな表情をしているが、ピクリともしない。
彼とのやり取りはなに一つ、本当に一から十まで期待通りにならなかった。
俺がここしばらく、どんな思いで挨拶の口上やタイミング、表情、ポーズを研究してきたと思ってるんだ。
初手も初手で目論見があえなく崩れ去った失望感に、大きなため息が鼻腔を突いて出た。
誰に見せるでもないが、唇をキュッと結んで不服の意を表す。それを嘲笑うかのように強い風で乱れる髪の毛が顔面をバシバシとはたく。
寂しげに佇むことすらさせてもらえないのか。
薄暗い木立に巣食う女子大生の地縛霊、即ち〈俺〉は、無様に立ち尽くすほかなかった。




