物は言いよう(こんとらくと・きりんぐ)
小さな田舎町。
カフェの前を、旅のバイオリン弾きが通りがかった。
そこで地獄みたいに煮立ったココアを飲んでいた田舎紳士がバイオリン弾きを呼び止めた。
「きみの職業は何かね?」
「見た通りバイオリン弾きです」
「住所不定かね?」
「そうですね。風の向くまま、気の向くままですよ」
田舎紳士は三十分、定職と住所を持つことの素晴らしさを旅のバイオリン弾きに説いた。
ショートヘアの少女、または長髪の少年に見える殺し屋がやってきた。
「きみの職業は何かね?」
殺し屋はさっきのやり取りを見ていた。
「殺し屋です」
殺し屋は付け加えた。
「根無し草です」
田舎紳士は六十分、定職を持ち、さらに国じゅうを出張する役職の素晴らしさを殺し屋に説いた。