エピローグ
見事なまでの秋晴れ。
海は陽の光を反射し、キラキラと光る。
丘に望む、一つの石がある。
石には花が添えられていて、墓だということをうかがわせる。
時折吹く潮風が、その花を揺らす。
常にここへ立って海を見つめていた一人の影は今は、ない。
海は何も語らない…。
ただ、陽を反射し、光を波に揺らし、風を吹かせる。
「さて、と……」
ある薬草の植わっている10数個のプランターを船へと運びこみ満足そうに微笑む、少女。
黒髪が肩のあたりで短めに切りそろえられている。
色は抜けるように白く、まるで陶磁器のようである。
黒い瞳は、いたづらっぽく光る。
晴れ晴れとした顔で、空を見上げ、少女は船を出した。
沖に出て、少女はもう見えない丘の上の墓を見ようとした。
……あなたが守ってくれた島は、私がいなくとも、もう大丈夫です。島の皆、それにあの子たち3人が、あなたや私の後を継いで、しっかりと守ってくれます…
私の病気も、完全に治ってはいませんが、安定しています…
だから……
「中央都市へと行って参ります」
これを手渡さなくてはなりませんからね。
一つの研究論をおもしろそうな目をしながら撫でた。
キラキラと光る波を見つめながら、船を進める。
丘から眺める海の沖には、一艘の船の影……。
柔らかい、秋の日差しの中、墓の花だけが揺れていた。
これで終わりとなります。
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