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11-1

皆を巻き込むわけにはいかない。

その言葉は、本当ではあったが、ルカの一番の気持ちではなかった。


……本当は……

ルカは、息をするだけで痛む体を気取られないようにしながら、思った。

……本当は、ウーシェと同じ顔のあなたが怪我をするのを、絶対に見たくなかったんですよ。


ルカは、ふっと、息をつき笑った。

ウーシェを未だに追い求める自分、ずっと過去を引きずっている自分。

そんな弱い自分を思わず笑った。


ルカは、気を取り直し、アンスティスへと刀を構える。

しかし、後方で、幹部たちがレンたちへとかかっていったので、一瞬、そちらへ気を取られる。

その隙を、アンスティスは見逃さなかった。

大きく重そうな斧槍をルカめがけ、振り下ろす。

ルカは、すんでのところで、それを避ける。

が、足がふらつき、手近にあった岩へ、手をついてしまう。

斧槍は、容赦なく再び振り下ろされてくる。

ルカは剣でそれを受けとめる。

体が、ぽっきりと折れてしまいそうなほど、後ろへと反るが、剣でとどめた斧槍を徐々に押し返していく。


弱り切っているはずのルカのどこにそんな力が残っているのだ?

確かに、自分で作った薬は飲んだと言うが…だが、その効き目は今は残っていない事は、先ほど見えた一瞬の姿でわかる。

“私は死なないから”

さっきそう言って笑った。

アンスティスを倒す、その思いだけが今ルカを動かしているのかもしれない。

ドン、と音がして、ルイたち3人が、力任せに岩へ叩きつけられた。

背中を思いきり打ちつけられ、さすがの3人もすぐには動けない。

いくら鍛えてあるといっても、10歳の子どもなのだ。

ルカは歯を食いしばり、斧槍を退けようとするが、重い斧槍とアンスティスの力により切られないようにするので精一杯だ。

海賊の1人が、3人へと剣を突き立てようとする。

他の2人はルカの背後から襲いかかろうとしていた。

1人は、靴の先に刃物がしこまれていて、それでもってエレノアを蹴ろうと。

そして、1人は、銃を向けている。

ルカは身動きが取れない。

「せ…先生!!!!!」

ルイが叫ぶが、その自分も地面に背をつけてしまっていて、剣が降りてくる寸前だ。

もう、ダメか…と3人は、一瞬、ぎゅっと覚悟をして目を閉じた。


キン!!

鋭い音が聞こえ、3人は襲ってくるはずの痛みがないことに気が付いた。

そっと目を開けると、シオンが3人に切りつけてきていた男の剣を弾き飛ばしていた。

「お前の敵は、そいつだろう。じゃぁ、邪魔をするこいつ等はおれが相手をする」

シオンが刀を突きつけながら言う。

エレノアは、その言葉を、うつむいて唇を振るわせながら聞いた……

怒っているのではない。

泣きそうなのだ。


「………」

エレノアは何かを呟いた。

そして、斧槍を受けとめたまま、シオンを見て、哀しそうに言った。

「お願いです…怪我だけは、絶対にしないで……」

そして、途切れ途切れだが、優しい微笑んだ声で、言った。

「……力を…貸してください…私一人では……やはり無理だ……」

再び、稲光が走り、エレノアの姿が浮かぶ。

片方の目から、すぅっと涙がこぼれるのが、見て取れた。


「当然」

シオンはニヤリと笑って答えた瞬間に襲っていた一人を薙ぎ払った。


一撃必倒。

手は、崩れ倒れていった。

「まずは一人…」

シオンはクルリと刀を回した。

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