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プロローグ
中央都市、役人会議。
会議前ということもあり、集まった数名が他愛も無い雑談をしている。
「そういえば、また一人、欠席していますね。例の人ですかね」
「それはそうでしょう、何といっても、隠遁の賢人殿、ですから」
「まったく、この都には一度も訪れず、会議にも出席せず。報告書を送ってよこすだけとは良い身分だ」
「若いくせに隠遁生活などしてるというが。本当は気ままに根無し草生活でもしているんじゃなかろうか」
「どっちにしろ、羨ましいことですよ。この都での、わずらわしい雑務に追われずにすむのですからな」
空席の椅子を横目に忌々し気に役員らはそう語っていた。
「しかし…今年提出してきた、これは……」
「軍隊は強化されるでしょうけれど、これは…」
重いため息が会議室を満たした。
「しかも、これで完成ではない、と書かれている」
「何がどう未完成なのか…調べさせてはいるけれども…」
どうしたものか……
不穏な書類を出した当の本人不在のまま、全員が頭を抱えそうになっていたのだった。