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ヲタッキーズ85 下り坂148事件

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。


ヲトナのジュブナイル第86話「下り坂148事件」。さて、今回は総勢148人のアイドルグループがエスコート嬢に身売りw


ところが、サイドビジネスに勤しむ嬢が死亡、背後にフライングゲットした新作RPGをめぐる謎の組織が浮上して…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 下り坂は終わってる


高層タワー最上階のペントハウス。


「1秒30フレームだ!じゃ撮るぞ!」

「alright!でも、カメラキャップがついたママだけど…」

「今、取ろうと思ってた」←


画像はいきなりステーキ、じゃなかった、イキナリ男の顔wかつては一世を風靡した、イケメンプロデューサーの顔だ←


「じゃ行くょ…アクション!」

「Hi!ドルヲタのみんな!"下り坂148"センターのラビアだょ!今日は、私達の聖地"ヲタベース"を紹介しちゃうぞ!…Hi!セルビ!気分は?」

「寒っ!梅雨入りしたの?え。本番?!やーね…アキバの太陽娘、セルビだじょ!キャピキャピ!アラフォーだけど太陽娘」←


極秘出産騒ぎの果て"奇跡のカムバック"をしたセルビがハラリとガウンを落とす…モノキニだがプロレスラーみたい←

エントランスから続くナゼかロココ調の階段は緩くカーブを描き階下のサンルームへ下る。その先にはガーデンプールw


「あ。PVの絵撮りが始まったみたい」

「やっと?もぉ寒くて鳥肌が立っちゃってるわ」

「よっこらしょ」


プールサイドの全員がバラバラと立ち上がりハラリハラリ羽織っていたガウンを落とす…

ビキニ、ワンピ、スク水…だけど、まるで気分はベテランCAの年に1度の定期健診の会場←


地下アイドルグループ"下り坂148"は終わってるw


「Hi!ドルヲタのみんな!国民的地下アイドルグループが聖地アキバに凱旋したょ!お待たせ!ただいまー!」

「プロデューサー、素敵な御屋敷(ホーム)をありがとう!想像以上だわ!人生、勘違いしそう!ウレP!」

「私達、ココを拠点に世界レベルで活躍スルね!」


ムリだ。だがPTA役員会を思わせる赤い火焔は止まらないw


「じゃ我らの不動(明王)のセンター、ラビアはコレからボイトレのお時間です!頑張って!」

「あ。太客の指名が入ったわ…じゃなかった、レッスン、行って来るね!ココからは、どうぞお好きに私達の"ヲタベース"を見て回って!」

「いってら、ラビア。じゃあ遠慮なく見て回るね…じゃーん!ドルヲタは必見。私達の寝室でーす。このシーツは、後でネットオークションに出すから買ってね!…こっちは、衣装部屋。私達が何度も着て洗濯してないコスプレの宝庫ょ!まみれたい?…そして、ワォ!見て!素晴らしい眺め!」


ウソで固めた画像だが…ココだけはモノホン!眼下には関東平野の形に東京が広がる絶景だ!遠く東京湾に白浪が光る!


「しかも、ココはお風呂なのれす!ココで一緒に泡にまみれたいな、ア・ナ・タ・と。あ、しまった風俗嬢時代の口上が… hey hey hey!嘘でしょマジ?誰か呼んで!早く!」


バスタブにパンティだけの女が沈んでる←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


と逝う画像を見終わった万世橋(アキバポリス)の面々は溜め息←


「ラギィ警部。約2時間前に匿名で配達されて来たビデオテープです」

「今どきビデオテープ?"下り坂"ってホント終わってる。信用出来るの?彼女達は地下アイドルでしょ?"いいネ"のためなら何でもスルわょ」

「今のトコロ、目立った110番通報はありません」


ラギィ警部は、万世橋警察署特捜班の敏腕警部ナンだけど、僕とは彼女が"新橋鮫"と呼ばれていた頃からの付き合い。


「ビデオの録画日付が6日前だわ。何かあったとしても、隠蔽するには充分ね…冒頭で顔がチラ見えしたブレド・コモロだけど、スッカリ老けちゃって。ガッカリ」

「え。誰ですか?知りませんけど」

「し、しまった!昭和の頃に流行った…"らしい"けど、とにかく、有名人だった"らしい"から、少し慎重にやりましょう。で、パンティだけの被害者は誰?」


捜査本部のモニターがバスタブ画像に切り替わり、美人ナンだろうが、顔半分がお湯に浸って隠れた水死体にチェンジ。


「SATOのパツキン姐さん(ルイナ)が画像解析をしてくれてます。間もなく結果が…」

「え。もう頼んじゃったの?未だスーパーヒロイン絡みかどーかわからないじゃない。ウチの鑑識の面子を潰さないでょ」

「ってか、鑑識の連中が勝手にパツキン姐さん(ルイナ)に頼みに行っちゃって…顔が歪んでるとかで、手には負えないらしくて」


南秋葉原条約機構(SATO)はアキバに開いた"リアルの裂け目"からヲタクを護る防衛組織だ。ルイナは国宝級IQを誇る超天才。


「確かに歪んでいるけど、この状態はガラス越しに鉛筆を見た時とかと同じ」


別のモニターに車椅子のゴスロリ女子が写る。ルイナだ。


「ソレに多重屈折と運動追跡アルゴリズムを加えるわね」

「STOP!ルイナ、何やってんの?そもそも」

「例えば、ガシャが何百も入った販売機(ガシャポン)ょ。ハンマーで叩き割った場合、ガシャの飛び散り方は決まってる。ガシャそれぞれの軌道や位置は、特定の力学に拠り決定される。重力。速度。運動量。質量。どの程度の力が加わったかを知るには、散らばったガシャの最終位置から計算すれば、元の販売機(ガシャポン)の形を再現出来るわ。このバスタブ画像も同じ。屈折の力で歪んでいるけど"グース・ヘンシェン・シフト"…」

「あ。ソレって室町幕府を作った人ょね?ドイツ人だっけ?」

「いいえ。大化の改新ょ。さらに"スネルの法則"…」

「スネ夫?実は、しずかちゃんを好きだったって知ってた?」

「ス・ネ・夫、じゃなかったw、ル!波動一般の屈折現象における2つの媒質中の…もぉ良いわ!行くわょ!」


画像の中でルイナが何かをクリック!すると…


「おおおおっ!」

「ひょえー!」

「エクソシスト(1973年)?」


別画面で水死体の顔がクルリと回り恨めしげに僕達を睨むw


「はい、万世橋(アキバポリス)の鑑識のみなさん。コレで桜田門(けいしちょう)の顔認識システムとの照合が出来るのではナイかしら」

「素晴らしい!ありがとう、SATOのパツキン姐さん(ルイナ)

「ちょっと!アンタ達、ルイナの頭脳は国家の財産なのょ!勝手に使っちゃダメでしょ!」


ラギィ警部は吠えるが、内心では助かったと思ってるw

一方、ルイナのラボの前を通り過ぎるメイド服の女子…


「おっと!ヒロインの中のヒロインの登場だ!」

「おかえり、マリレ!」

「元気そうね。薬の副作用はナシ?」


ヲタッキーズのロケットガール、マリレだ。前回"地底ナヂス"に拉致され、薬物で拷問されるが間一髪で救出されるw

あ、彼女はエアリと共にヲタッキーズのメンバーだけど、いつもはカフェ勤務なので、何もない時にはメイド服が多い←


「ありがとう。今のトコロ、副作用は無さそうょ」


笑顔で応えるマリレだが、ソレを遮って相棒のエアリが…


「ラギィ警部!顔認証データベースの照合結果が出ました!彼女は運転免許を更新してます。名前はドレア・バトン」

「待ってください…やや?もう1人ヒットしましたw」

「もう1人?」


照合結果を見て頭をヒネる万世橋(アキバポリス)の鑑識とエアリ。


「名前はレイシ・ミード」

「誰なの?今、何処にいるの?」

「ウチの霊安室(レインボールーム)です」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田リバー沿いの西陽が当たる安アパート2F。


「どーりで最近見かけないと思ったわ。でも、まさかバスタブでお亡くなりナンて」

「ドレア・バトンさんの御親族は?」

「知らない。契約書の保証人とか見てみないと…やれやれ。コレで事故物件になってしまったわ」←


大家さんはラギィ警部に溜め息をついてみせる。

アパートの鍵束から、ジャラジャラと鍵を探す。


「あったわ。開けるわね」

「ドナタか同居人はおられたでしょうか?」

「いないハズょ。あら?中で物音が?」


ラギィ警部が頷くと、若い刑事が裏口へと走る。


「下がって!」


ラギィが蹴ると薄いドアは吹っ飛ぶ!大家さんは絶叫して昏倒wソレを素早く介抱し、音波銃を抜いて突入するラギィ←


「裏窓から逃げた!」

「了解!あ…」

「追って!追うのょ!」


ところが、裏窓から中庭に飛び降りた"女"は、ゴミ捨て場に隠していた何かを引っ張り出して飛び乗る…セグウェイ?


万世橋警察署(アキバP.D.)!止まれ!車?電動スケボー?キックスクーター?ソ、ソレは何だ?」

「改造セグウェイょ!」

「と、とにかく降りろ!止まれ!クソッ!ダメか…」


スゴいスピードだっ!若い刑事が全力ダッシュで追い掛けるが楽々引き離し裏通りの路地に消える。ラギィが追いつく。


「け、警部、スミマセン!取り逃しました!改造セグウェイって侮れない。ゼェゼェ」

「で、逃げた"女"の顔は見たの?」

「ゼェゼェ…はい、アレは、バスタブで死んだドレア・バトンです!間違いありません!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋警察署。地下にある死体安置室(レインボールーム)


「彼女が改造セグウェイで逃亡?この…死体の彼女が?」

「そーなのょ。最近、この死体が生き返って出歩いたり…改造セグウェイで突っ走るのを見てない?」

「見てない!おい、ラギィ!悪い冗談だ。安置されて3日はココにいる、と言うか、アルと言うか…」


最初は冗談だと思ってた監察医は、段々薄気味悪くなる。


「それなら、姉妹とか?おいおい。フランケンシュタインの次はドッペルゲンガーかょ。オカルト雑誌"ラー"の来月の特集はコレで決まりだな!」

「まさか愛読者?…とにかく!母親に確認したら、ドレア・バトンは1人娘だった。戸籍も確認済み」

「検視は未だだが、気になる点がいくつかある。死因は水死だが事故じゃない。首と肩のアザは明らかに押さえつけられた痕だ。かなり激しく抵抗してる」

「地下アイドルを目指して家を出たらしいンだけど」

「アラサーなのに?ソレは相当の覚悟だなw」

「何故そう思うの?」

「全身を整形しまくってるのさ。豊胸だろ、顎の手術だろ…恐らく脂肪吸引もやってるな」

「この体型で?!」←


ココで目を丸くするラギィ警部←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「テリィたん、ゴメンね。地球に戻ったばかりなのに連れ回して。エアリが未だ私とは組みたくないらしいの」

「無理も無いょ。長い間、嘘をついてたワケだからね」

「テリィたんやミユリ姉様も欺いてたわ」


しょげるマリレ。最近まで彼女は3重スパイだったのだw


「で。今日はミユリ姉様の差金でしょ?私のお目付役?」

「僕は一応、ヲタッキーズのCEOだ。ミユリさんの指示は受けないょ。コレは監視が目的じゃナイ。OK?」

了解(rog)。ボス」


ソンな話をスル内に専用EVはタワー最上階に到着。


「ブレド・コモロ、いる?」

「え。何処の代理店(エージェント)?ICM?CAA?」

南秋葉原条約機構(SATO)


いかにも軽薄そうなビキニガールに声をかける。

よく見たら"下り坂148"の"神77"の誰かだw


「スゴい!実は今度、SF映画に出ルンですけど」

「ブレド・コモロは?」

「います。プールサイドに。ねぇ私のSF映画…」


マリレが飛びっきりの笑顔。


「必ず見るわ」

「ヲタッキーズがマジ?やった!」

「推すから」


拳と拳をぶつけ合う。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


プールサイド。


「ブレド・コモロ。ヲタッキーズょ」

「マジで?ホントに普段はメイド服ナンだな!君は…マネージャー?」

「いや。ヲタクだ。名前はテリィ」


ブレドはサンデッキでビールをラッパ飲みしてビキニ美人をハベらせてる。羨ましい。個人的にはメイド服が好みだが。


「彼女達、次の映画はSFナンだ。参考にさせてょ」

「あ、僕は第3新東京電力の宇宙発電所長だけど…さっき軌道から降りて来たトコロ」

「いや。君じゃなくてコッチのメイドさんだ」


ショック。しかも、ココでヤタラ背の高い男が…


「アンタ、御用は?」

「君は誰?」

「ロガン。ブレドの警護を担当してる」


すかさず、ブレド本人のフォローが入る。


「頼りになるボディガードだ。で、コッチはヨシュ。トラブルメーカーさ」

「"ヲタベース"に出入りしたいなら、メイドさんは大歓迎だね。次は1人でおいで」

「いつも3人でツルんでるのかな?」


キャップをアミダに被った、またまた軽薄な男が登場w

何だか面倒臭くなり、ドレアの水死体の写真を見せる。


「え。何コレ?ウチのバスタブ?何でこんな…」

「ソレが聞きたくて来たンだ」

「どーせヤラセだろ?」


ウソぶくブレド。マリレが突っ込む。


実物(リアル)は、ウチの霊安室(レインボールーム)ょ」

「生前の彼女の画像もゲットしたが、見覚えは?」

「全然」「ナイな」「マジさ」


口々につぶやき、首を横に振る。ブレドが話題を変える。


「スゴい眺めだろ?下り坂が全員ビキニだ。ココへの出入りは下り坂のメンバーは自由でね」

「危なくないのか?」

「ライアの考えさ」

「ライア?誰?」

「兄貴だ。一緒に小諸市(長野県)を出て、プロデューサーを目指したけど、秋葉原に来てスグ車泥棒に殺された。以来、儲けはコモロマフィアでシェアするコトにしてる」

「ピィトは?動画担当ナンでしょ?バスタブの画像もピィトが撮ったのょ」

「ピィトが?」


ナゼか絶句スルのはボディガードのロガンだ。


「ピィトは、確かに小諸出身だが、秋葉原に来たのは1週間ほど前のコトだ」

「ソレで今は?」

「急にいなくなったンだ。実は、僕達も探してる」


ブレドの言葉にウソは無さそうだ。


「…そういうコトか。しかし、恐ろしいな。自分の家で女が死んでさ。でも!必要なら今日からメイドさんも出入り自由だ」

「メイド服でもOK?ビキニだと若い子に負ける」

「大丈夫。全員アラサーだ。演技の参考にしたいので、君の捜査方法とか、詳しく知りたいな…」


マリレの方へグッと身を乗り出すブレド・コモロ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地良くなって、実は(僕を含むw)常連が沈殿して困ってるw


「あら?テリィたん、秋葉原に帰って来てたの?」

「今朝のシャトル(死海3)で戻ったばかり」

「腕まくりして…何してるの?」


モニターの中のルイナに話しかけられる。車椅子でゴスロリ女子の彼女は、今宵は"オンライン呑み"で参戦のようだ。


「水槽の掃除だょ。見ればワカルだろ?」

「え。テリィたん自ら?何かの罰ゲーム?」

「プランターの世話、屋根裏や車庫もピカピカ。朝までに、表の御屋敷まで新しくなりそうょ」


僕の推しでメイド長のミユリさんは大満足←


「ソレで、何かあったの?ルイナ」

「私が12才で描いた"友情数学論"の話ナンだけど」

「あ。この前話してた奴?覚えてるょ。"友情の数理解析"だっけ?」

「YES。学会誌に送ったら返事が来たの。ぜひ掲載したいって」

「スゴいな!で、何を悩んでるの?博士号ならたくさんアルから、もう要らないとか?」

「実は…スランプなの」←

「えええええっ?!トランプの聞き間違えカナ。何が原因?」

「昔の論文を今の話に置き換えて展開したかったンだけど…閃かナイのょ」

「へぇ。少し腰を据えて取り組むべきだょ…」


その瞬間!


「閃いたわ!神が降りて来た!」

「早っ!」

「犯人のサイズがわかるカモ!」

「スリーサイズ?上から?」

「排水量ょ!テリィたん、そのママ水槽を掃除して!」

「もう終わったけど」

「ダメ!あぁ思考が切れる…あぁ!」


ヤバい!慌てて水槽の内側を雑巾で拭く僕。

雑巾を水面から出したり入れたりしてみる。


「ねぇ!テリィたんが雑巾を動かすと、水槽の水位はどうなると思う?」

「そりゃ上下スルょ」

「雑巾と全く同じ分量がね!被害者を殺した時、犯人は同じバスタブの中にいたんだわ!そして、バスタブを出たら水位が下がった!」

「ちょうど体積の分だけね。ねぇソレってアルキメデス…」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)に立ち上がった捜査本部では。


「何か目新しい話はナイの?」

「ラギィ警部!テリィたんがマリレと捜査してるみたいですが、彼女は捜査に復帰したんすか?」

「転属まででしょ?ミユリは誰か、探さなきゃね。しかし、マリレは相当高いポジションに就くわょ。何たって彼女はヒロインの中のヒロインになったんだから」


ココへ、外回りの若い刑事が駆け込んで来る。


「ドレアの自宅で写真を何枚かゲットして来ました!」

「え。マジ?コレ誰?」

「まるで別人じゃないの!何でまた大変身?」


写真の中では、見慣れぬドレアが子犬を抱き可憐に微笑むw


「感受性の強い年頃だから…両親の離婚で変身願望が芽生えたとか」

「両親、離婚してません!何かの黒歴史を封印した反動とか」

「早い話が…整形手術をしたのね。執刀医は?」

「"獣人整形外科"。机の中に名刺がありました。昔は新橋にあったみたい」

「調べて!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕とマリレは、両手に大きな漏瑚とポリタンクとポリバケツを持って"ヲタベース"のバスタブを訪れる。清掃員かょw


第3新東京電力(TEPCO-3)の宇宙発電所の狭いお風呂と比べると、ちょっと度が過ぎるな。天井だけで3階分の吹き抜けだw」

「でも、どこか空虚だわ。好きになれない…けど、窓の外は文句ナシの絶景ね!東京全体を見下ろす感じょ…」←


なんてハシャいでたら、ブレド・コモロ本人が顔を出す。


「メイドさん。とても、君がSATOには見えないな」

「SATOそのものじゃない。まぁコンサルみたいな感じ?今回は犯人のカラダの基本パラメータを決定するコトになった。液没体積という考え方らしい」

「見て。この画像だと最終的な水位はココ。実際の位置だとバスタブのこの辺りょ。高水位の算出は、かなり面倒ってルイナが言ってたわ」

万世橋(アキバポリス)に送られて来た画像だと、タオルがこんな感じでバスタブの縁にかかっていた。そして、その端が濡れてた。つまり、タオルの吸収と蒸発。泡を計算に入れる必要があるらしい。その結果、今回の高水位は、この辺りになるらしい」


僕とマリレがカワリバンコに話すのを敏腕プロデューサーのブレド・コモロは、彼なりに何やら頭を働かせては(うなず)く。


「つまり…バスタブには第三者も入ってたってコト?ソイツが…犯人?」

「この水量をポリタンクに詰めて持ち帰り、正確に計測すれば、犯人のカラダの容量がわかるワケさ」

「スゲェ。まるで映画みたいだ…でも、イマイチ地味だなぁw下り坂用SF映画の参考にはならないや」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"獣人整形外科"。


「美容整形の理由なんか、女性の数だけあります。医師は、理由に関係なく手術をスルだけですょ」

「一般論の話ではナイの、ドクター。この患者ナンだけど」

「どれどれ」


例のバスタブ画像の水死体を見せるマリレ。


「うーん誰だろう?」

「あらあら。自分の患者でしょ?ご存知では?」

「ドレア・バトンだ。でも、彼女は双子でね」

「ウソね。戸籍を確認したけど、彼女は1人娘ょ」


ドクターは1呼吸おいて答える。


「レイシ・ミードもだ。私が双子にしたンだ」


第2章 慰めは言葉のコスプレ


捜査本部のギャレーでコーヒーブレイク。


「しかし…ブレド・コモロとレイシ・ミード。ホントに良く似てるわ」


パーコレーターで淹れたコーヒー片手に、2人の画像を画面分割で左右に並べ、見比べては深ーい溜め息をつくラギィ。


「片や巻き毛で陽気なポップガール。片やロン毛ストレートで挑戦的な眼差し…でも、顔はソックリ。タマンねぇな…じゃなかった、見分けがつきませんね!警部w」

「地下アイドルの路線変更(イメチェン)みたいだわ。いかに似たタイプを整形でソックリにしてるとはいえ…で、バスタブの被害者はレイシ・ミードの方でした」

「ソンな大事なコトが、何で今頃わかるの?」

「カラダがフヤけて指紋照合が不可能だったモノで」

「ドレア・バトンは、整形手術後に運転免許の更新をしています。そのお陰で顔認識ソフトでヒットしたンですが…」


ナゼかドヤ顔で語る若い刑事にイラつくラギィ警部。


「その更新した運転免許のお陰で、マラソンで追っかけたアンタを楽々と振り切って、車で逃走しちゃったワケね?ねえねえ。NYPDやロス市警なら、普通はココでボンネットにつかまって、振り落とされそうになりながら必死の追跡…」

「警部。ココは秋葉原です」←

「まぁまぁ…とにかく!警部、この2人ですが、手術費用を請求されてません。2人の手術代を支払ったのは"メルロ・マダム"」

「えええええっ!」


ギャレーの全男性が大声を発し、コーヒーを噴くラギィw


「"メルロ・マダム"?だ、誰?美味しいの?」

「今、秋葉原で1番ホットな"エスコートサービス"です…と何かの調書で読んだような…気がスルってコイツが言ってました」

「え。俺か?いや、確か脱税容疑で捜査中じゃなかったかな…警部、とりあえず聞き込み行きまーす!では!」


署内の男性の約半数が腰を浮かす…


「お待ち!何でマダムはソンなに流行ってるの?特別なサービスでもあるワケ?例えば…"裸エプロン"とか?」

「まさか!今さらw」

「ソンなの何処でもヤッてますょアッハッハ」


ギャレーの全男性に大声で笑われ落ち込むラギィ。

出番だ!落ち込んだ女子を励ますのは僕の十八番!


"慰め王子"の異名をとる←


「ラギィ…」

「何?テリィたん」

「"双子プレイ"だ」

「双子…プレイ?」

「双子相手の3Pだ。需要の多さを考えれば、手術代を投資スル経営判断はアリ得る」

「そう…なの?じゃテリィたん、悪いけど事情聴取、行って来てくれる?私、ついていけないわ」

「大OK!…じゃなかった、仕方ない、考えとくょ。せっかくの休暇中だったンだけど。あぁ残念だ」←


署内全男性の怨嗟と嫉妬を満身に浴びるwあぁ爽快だ←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「あ、エアリ。空いてる?」

「何?テリィたん。空いてるわょ」

「一緒に"メルロ・マダム"と会ってくれ。万世橋(ラギィ)のリクエスト」

「メッチャ怪しいw単なるヲタクの野望でしょ?後でミユリ姉様に睨まれるの嫌ナンだけど」

「既に万世橋(アキバポリス)の全男性からの白い目を浴びてる。ココは是非w率直に逝ってカモフラージュ」←

「…確か前回はマリレと行ってナイ?」

「だから、次はエアリとだ。順番だろ?…未だマリレと満足に口を聞いてナイんだって?」

「え。ナンのコト?」

「貨物船の船内で薬物を打たれてたマリレの命を救ったのは確かエアリだったょな?」

「ヲタッキーズとしての責務を果たしたまで」

「なぁそろそろ忘れなょ」

「ムリ。余りに長い間、真実を知らされズにいたわ」

「そもそも潜入捜査は極秘任務だ。人に言えるか?ましてや、僕達も容疑者だったンだぜ?わかってるだろ?」

「ですょね。わかってます。テリィたん、仕事に戻ろ?マダムと逢いましょ」

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


「スピア!タオルに拠る蒸発の分は?」

「変数化アルゴリズムを組んだわ…ルイナ、その後"友情数学論"の研究が本になる話はどーなったの?」

「うーん少し主観的過ぎたカモ。特にアポロニウス・ネットワークのパートとか」


会議アプリをつないで"オンライン呑み"をしているルイナとスピアの会話。スピアは、ストリート育ちのハッカーだ。


「へぇ。奥深いんだね」

「なのょ。数字で人間性を表したいけど、なかなかソコまで行けなくて…ミユリ姉様、何とかならない?」

「え。私?」


"潜り酒場"のカウンターの中のミユリさんに無茶ブリw


「人間関係は一筋縄じゃ逝かないから…原子の結合と似てる?長く結合したり性質が変わってしまう結合とかアルでしょ?一方で、消え去ったり、萌え盛ったり。悲劇的な結合もアルわ」

「ミユリ姉様、深いです」

「でしょ?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


プールサイドを赤ビキニの垂れヒップがモンローウォーク。

何と"メルロ・マダム"は、ブレドのペントハウスにいるw


「私宅ょ!令状ナシで踏み込まないで!」

「だから、ベルを鳴らしたら"裏へ回れ(come around back)"と張り紙があって…」

「ソレは、フィリピン人の宅配業者宛の伝言。貴方がテリィたん?というコトは、コチラが貴方の推しのミユリさん?…貧乳って聞いてたけど意外にグラマーね」←

「ヲタッキーズのエアリです!マダム、レイシ・ミードさんの件でお話があります」

「あら、私も彼女を探してるの。彼女は今何処にいるの?」

「ウチの霊安室(レインボールーム)です」

「…ソ、ソンな。病気か何かかと思ってたのに」

「ドレア・バトンは?」

「私が何?」


プールハウスから水玉ビキニが出て来る。ドレア?


「前回は改造セグウェイで逃げたけど、今回は実物がサンプリングに協力ょ」

「ブラボー!…でも、何で前回は逃げたのに、今回は捜査に協力スルの?僕がイケメンだから?」

「貴方、リアルテリィたん?ブラボー返し!抱いて!ん?推しのミユリさんって貧乳だっけ…だって、まさか万世橋(アキバポリス)とは思わなかった。歪んだ双子妄想を持つ客に出待ちされるナンて良くアルわw命の危険を感じたコトも1度や2度じゃナイわ」

「レイシ・ミードの死は?」

「知らなかった。必ず連絡があるのに変だなとは思ってたけど」

「ブレド・コモロのペントハウスへは?」

「双子プレイの御指名で何度も行ってる。太客だったわ。でも、レイシは1人でも通ってた。彼女は、有名人に弱いから。先月"下り坂148"全員を"メルロ・マダム"が買い取ったの。私達、その時点で全員"地下アイドル"を卒業して"エスコート嬢"になったのょ」


ドレアは、マダムに意味ありげな視線を送る。


「え。とゆーコトは、このペントハウスは"エスコート嬢"のショーケースだったのか!ココに来て好きな子を選ぶwまさに"セレブのための後宮"だ。そして、ブレド・コモロはココに居候して毎晩、大好きな双子プレイにふけった…」


マダムが立ち上がり、口を挟む。ガウンの下は紫ビキニだ。


「惜しい。もう1盛り足りないわ。ソレだけじゃビジネスの世界では生き残れない」

「余計なお世話だけど、ソレじゃもう1味、調味料を足してくれ」

「双子の…"スーパーヒロイン"」

「え。彼女達は"blood type BLUE"?」

「まさか。タダのコールガールょ」

「ソレじゃ誇大広告だろ?ヲタクの気持ちを(もてあそ)ぶな!」

「コレは言葉のコスプレ。そして、ココは秋葉原。ヲタクに夢を売って何が悪いの?」


第3章 マザコンクエストを推せ


捜査本部の専用EVのドアが開き、今日も慌ただしく…と思ったら、スマホを振り回す観光客?の御一行が押し掛ける。


「ようこそ!ココが万世橋(アキバポリス)の捜査本部ょ。私は、女警部ラギィ!逮捕しちゃうぞ、ドキューン!」


げ。お出迎えのラギィは…ミニスカポリスのコスプレw


「うおおっ!マジかょ!モノホンのミニスカデブ…じゃなかった、警部だっ!」

「ヤバい!お触り禁止?萌えぇ!」

「俺を逮捕してくれ!」


まるでサーカス団wイケメンディレクターのブレドを筆頭にボディガードのロガン、トラブルメーカーのヨシュ、あと…


「マネージャーのミトモです。この度はどーも。ブレドのプロデューサーとしてのインスピレーションを刺激する、貴重な素材の御提供に感謝します」

「良かったわ。みんな、プロデューサーの大ファンなのょ。さて、何から御覧になる?」

「マネージャーさんって、前にプロデューサーと一緒に歌ってたアイドルさんだょね?確か援交ソングが大ヒットして年末の黒白歌合戦に…」


話に割り込む僕。あの頃、彼女は水着モデルで…


「さぁ!コチラが取調室です!」


サーカス団が大歓声を上げ僕の話は立ち消えにw


「スゲェ!見ろょ、コレがリアル取調室だ!」

「モノホン?ヤルな!見ろょ!ココで自白させるんだ!」

「…そーだけど。ねぇアンタ達、私にウソをついたわね?」


突然、口調を変えてスゴむラギィ。サーカス団はドン引きw


「待ってくれ。ミニスカポリス、何の話だ?」

「バスタブで死んだ子を知らないと言ったのはウソょね?」

「よく見ろ。この画像の子だ」


リアル迫力で鼻先にスマホを突きつけられてブレドは狼狽←


「…バ、バレたか!降参だ!でも、女を双子で買ってたナンて言えないょ!ビビってただけさ。ごめん」

「フン。ソレだけ?ルイナ!」

「はい!ココょ」


モニターに車椅子女子が写りサーカス団は呆気にとられる。


「私の計算では、事件当夜、正味89.6リットルの水置換があったわ。犯人は、標準以上のサイズの人」

「ねぇボディガードのロガン。貴方は190cm100kgってトコロかしら」

「ウン。私の計算にピッタリだわ、ラギィ」

「OK!ロガンと話すわ。他の人は出て」

「待て!冗談でしょ?」

「俺達は、何処にも行かないぞ!」

「はいはい、他の人達は監獄を見せてあげるから。ソレとも今から入る?」


結局、ロガン以外は取調室を追い出され、廊下で取調室をチラ見しながら、ヒソヒソ話をしてはカワリバンコに溜め息w


そして、取調室の中では…


「確かに、彼女とバスタブに入った。でも、殺してない」

「彼女がブレドに夢中とわかり、頭に来たとか?わかるわ」

「違う。レイシは俺に惚れていた。俺達は、互いに真剣だったんだ」


一応、大きくうなずくラギィ。


「…ホントだ。俺がバスタブから出た時は、レイシは未だ生きていた」

「なら誰に殺されたの?」

「わからない…」


その時、取調室のドアが開いてマネージャーのミトモ乱入w


「ソコまで!ソコまでょ!もう何も喋らないで!」

「ちょっと。何のつもり?公務執行妨害でパクられたい?」

「フン。今、弁護士と話した。令状が無いならロガンは連れて帰る。後は弁護士が来るからソッチと話して。さ、帰るわょロガン!」

「何様?」

「騙して連れ込むのが警察のやり方?法的な効力はないそうじゃない!」

「そうとは限らないし、ソレを決めるのはアンタじゃ無い」

「あのね。映画の公開まで3週間なの。所轄の杜撰な捜査で前評判が落ちたら、関係者全員が首をくくるコトになる。わかる?ショービズの世界は厳しいの」

「アンタの小屋(みせ)で女が死んだ。何があろうと捜査は続けるから」

「逮捕状がない限り、協力は一切お断り」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ロガンは絶対何か隠してる。ラギィの取調べ、スゴい迫力だったから、あと1歩だったのに」

「でも…核心には近づいてるワケですね、テリィ様」

「何が映画の評判が落ちるだプンプン」

「あの世界の人は、金蔓(かねづる)を守るためなら、何でもしますょ。忘れましょ?私が全て忘れさせてあげる…」

「ごっつぁーん」

「でも、テリィ様。コレじゃ私達、セフレですょね?」

「え。別れたいとか?」

「明日、生理が来なかったら考えます」

「うーん」


ミユリさんはコホンコホンと咳払い。


「で。テリィ様、エアリは何か?」

「え。先にソレを話すの?御褒美の前に?」

「お教えください」

「ミユリさんのTO(トップヲタク)だからと軽く見られるのは嫌だな。僕は、エアリを監視スル気はナイょ」

「じゃ御褒美の後で」


え。と息を飲んだ(何に?)瞬間、ベッドサイドのスマホが…


「もしもし。ミユリです」

「ロガンだ。スマホ嫌いのテリィたんと話すにはアンタのスマホに電話しろと言われた」

「テリィ様なら今、スピーカーでお聞きです。電話を代わりましょうか?テリィ様、よろしいでしょ?えw御褒美が先?」←


スピーカーからは思い詰めた絶望の叫びw


「ああ!でも、何か話せば"正解の終わり"だ!」

「世界の、だろ?」

「え。今、マックで流れてる楽曲って…」

「落ち着いて。今から迎えに行くわ。何処にいるの?」

「東秋葉原の和泉パーク」

「そこにいて。すぐ逝くわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


昔から東秋葉原には"リアルの裂け目"が突発的に開くコトが多く、界隈には異次元からの亡命者、革命家、難民などが多く住み着きスラム化している。その真ん中に和泉パーク。


「ミユリさん。確かにココかな?」

「はい。気が変わって帰ったカモしれません」

「あ。コッチだ」


砂場に人が倒れている。首に手を当てるミユリさん。


「死んでます」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「音波銃で正面から1発ね。左手を貫通してるから、相手が音波銃を抜いたのを見て反射的に庇ったけど無駄だった」


30分後。真夜中の児童公園には、パトカーが3台、救急車が1台、赤色灯を回転させて大混雑。現場の解説はラギィ警部。


「でも、気になるコトがある。ミユリ、何ですぐ連絡しなかったの?」

「あ。テリィ様と一緒だったから。ゴメンね、市民の義務を怠って…ねぇラギィ。ロガンはマダムのお館の同居人ょね?コレで"ヲタベース"を法的に捜査が出来ルンじゃない?」

「名案ね!とりあえず、コレで所有物の捜査令状を取りましょう!ありがとう、ミユリ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「あらあら!ダメ!ねぇ出て行って!」

「はい、捜査令状。そこどいて」

「…この令状だと、ロガンが生活してた部分に限定されてるわ。ソレならゲストルームょ。コッチ」


先に立つマネージャーのミトモ。ラギィ警部に毒づく。


「ワザワザこんな時に来なくても良いでしょ?ねぇロガンが死んだのょ?」


なるほど。いつもはビキニ、スク水、ワンピ水着で溢れかえる"ヲタベース"だが、今日はプールに人影はなく全員が喪服でPTA役員の御葬式みたい。でも、コレはコレで萌える…


「こんなのヒドいょ」


ナゼだか途中でプロデューサーのブレドまで加わる。


「兄貴の次は、幼馴染のロガンだなんてwもぉめちゃくちゃだ」

「お気の毒に。ところで、昨夜はどこに?」

「聞かれると思った。ヨシュとココにいたょ」

「証明出来る?」

「昨夜は下り坂は全員、契約切れで帰してた。今は、ムダに大勢いるけど、喪服ばかりだ。ビキニが見れないから部屋に戻るょ」


ブレドは去る。ラギィはビニ手で家探し中の刑事に聞く。


「今のブレド、どう思う?」

「名演技ですね…警部。ココのパソコンから大容量データがメルロ・マダム宛に送られてます」

「レイシ・ミードかしら。ルイナに調べてもらいましょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜"潜り酒場(スピークイージー)"にマリレが御帰宅。


「マリレ!また会えて嬉しいょ」


僕は、彼女の肩を叩き、握手してハグ←


「ミユリ姉様やテリィたんとも御無沙汰しちゃって…」

「名を呼ぶ順番が逆だけど、こうして戻って来て、しかも、ヒロインの中のヒロインとして(メイド服でw)戻って来てくれて、ウレしいょ。ヲタッキーズCEOとしても大歓迎さ」


さらに、背中をポンポン叩く僕に当惑顔のマリレ。


「未だピンと来ないけど…熱烈歓迎、thanksテリィたん」

「あ。マリレだ!戻ったの?」

「ルイナ?ただいま。迷惑かけたわ」


御屋敷のモニターに写る車椅子のゴスロリ少女はルイナ。

会議アプリで、ラボから"オンライン飲み"をしている。


「復帰してくれて何よりょ。貴女が真のヲタッキーズとわかってホントに喜んでる。おかえりなさい」

「ただいま、ルイナ。今、何をやってるの?」

「ラギィからのデータファイルを解析中ょ」


画面の向こうにストリート系ハッカーのスピアが加わる。

彼女は、ルイナの相棒でジャージ姿だけど、下はスク水←


「MPEG2からトランスコードしたMPEG1のファイルでエラい大容量…」

「つまり、何?」

「DVDみたいな動画ファイルだと思うンだけど…例のバスタブにパンティ1丁で水死体が浮いてた事件ナンだけど、現場から送信された大容量メールがコレ」

「何かの海賊版じゃないの?海外も含め海賊版って1大産業で、桜田門(けいしちょう)はモチロン、FBIナンかも専門の部署がアルらしいわ」


マリレの指摘に、ハッカーのスピアが敏感に反応スル。


ウォーターマーク(透かし)を探してみる。サンプルを撒く時に仕組む、デジタルタグのコトだけど。海賊版が出回った時に、誰がリークしたかがワカルの」

「海賊版だとして、何の海賊版?」

「動画ファイルみたいだけど…」

「映画?アニメ?…まさか特撮?」

「わかった!"シン・ウルトラセブン"だ!」


僕が、誠に的を得た指摘をスルと御屋敷内外から白い視線←


「テリィたん!真面目に生きて!」

「生きてるょ!」

「…"マザコンクエスト"。その前のファイルは"ファーストファンタジー"。コレは…」

「発売前の新作RPGゲーム?」

「TV CF見たけど、未だ発売前ょ!ヤバくね?ってか、何でこんなのが手に入るの?」

「コレが世に逝う"フライングゲット"だょ」

「テリィ様、黙って。あと、マリレも踊らなくて良いからw送信先のメアドは?」

「"ラブ 2(to) ラブ"。メルロ・マダムのオフィスです、姉様」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「私のメアドじゃない!海賊版なんて知らないわ!」


喪が明けたのか、再び水着の下り坂が溢れるペントハウス。

自身もガウンの下は紫ビキニのメルロ・マダムは憤慨スル。


「おやおや。世界に先駆けて新作RPGをフライングゲットして闇サイトで荒稼ぎスル算段だったンじゃないの?で、新作ゲームのデータは何処で入手したのかしら」

「ってか、どうやってブラドから盗んだのかを知りたいな」

「どーしてブラドが絡むの?」

「彼が居住スル"ヲタベース"から、マダムにゲームのデータが送信されてた。ゲームメーカーは、ブラドみたいなスターやセレブ、マスコミ、業界関係者には、ゲームの試作版を先行配信スル慣習がアル」

「ソレがフライングゲット?」

「YES。で、問題は、その何処でレイシ・ミードがスター限定の役得であるフライングゲットのオコボレに食い込んだかだ」


マダムは一気に御機嫌斜めだw


「私のビジネスモデルは、あくまでエスコートサービス限定ょ。下り坂1人1人の私生活にまで干渉してないわ」

「おや?下り坂オーナーのマダムは御存知ない?では、仕方ありません。本格的に捜査させていただきましょう。どうなるかわかってますね?令状があれば、御社のサーバを洗いざらい拝見します」

「さぞかし面白いモノが出るだろーなー。そもそも、令状捜査が入った"エスコートサービス"ナンて、秋葉原のセレブは今後、誰1人利用しないな。お気の毒に」

「警察だって人の子ょ。ソンなコトは望まない。さ、海賊版ビジネスのパートナーは誰?」

「…OK, you win。名前だけでOK?ビンナとブラナの姉妹ょ。地下アイドル通りの"カルタギニアン"ってクラブ。ただし、絶対に匿名にして。殺される。あの姉妹、激ヤバだから」

「必ず約束は守るわ。多分」←

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"カルタギニアン"。下手ウマなのかホンキでヘタなのか、イマイチ判然としない文字が、壁一面に大描きされている。


「とても行列の店には見えないけど」

「え。今どき強気な黒服が客を選ぶ店らしいけど。テリィ様が来たがってた。今日なら捜査令状がアルから、黒服に追い払われる心配がナイって」←

「ミユリ姉様もテリィたんと来たかったの?」


ソレはナイ。そもそも、僕の苦手な地下の箱だ。ミユリさんとエアリは階段を降りタイムマシンに模した鉄扉を開ける。


開店前の昭和なキャバレーって感じ。

ウエイトレスがカートを押しているw


万世橋警察署(アキバP.D.)ょ。ビンナかブラナ。出来れば両方と逢いたいンだけど」


令状を確認し、姉妹を寡黙に探しに逝くウエイトレス。


「今の子がビンケで、実は逃げちゃったとか…ま、良いわ。エアリ、未だマリレとキチンと仲直りしてナイみたいね。そろそろ機嫌直してょ」

「姉様。彼女とは古い仲です。ズッと相棒だと思って信じてた。だのに…」

「だから、ソレは仕方ナイでしょ?3重スパイの内偵だったンだモノ。私達全員が容疑者だったのょ?」

「姉様は抵抗は無いの?マジ?」


思い切り口をへの字に曲げるエアリだったが…


「妙ですね。さっきのウエイトレスが推してたカート。開店前なのに何かを運び出そうとしてた」

「誰か私に用?…やや?メイドさんの2人組?デリヘルの誤配かしら。メイドのコスプレはオプションなの?」

「いいえ。無料サービスょ…ねぇウエイトレスが運んでたCD-Rの話を聞かせてくれる?"マザコンクエストⅫⅸⅣ"って描いてアルけど、もしかして、コレってフライングゲットの海賊版かしら?ねぇ。新作ゲームの海賊版を探しに来たら、動かぬ証拠となる、タイヘンなモノを見つけてしまったわ。タイヘンです。どうしましょう、お姉様」

「伏せて!」


猿芝居を熱演するエアリの鼻先を対スーパーヒロイン用の殺人音波がかすめる。間一髪で彼女を突き飛ばすミユリさんw


「姉様!フロアを見下ろす2Fのmurders balcony!」

「ホントVIP席って、何処もロクな客がいないわね」

「命中!お見事!」


"ムーンライトセレナーダー"に変身したミユリさんが指先をちょっち動かすだけで必殺技"雷キネシス"が光を放つ。


どさっ!


黒焦げになった"誰か"がフロアに落ちて来てピクつくw


「ビンナ!よーく考えなさい!アンタも妹さんのように黒焦げになりたい?UVカットなしょ?」

「OK!ギブアップ!」


カウンターから音波銃が投げられ、恐る恐る両手が上がる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「妹の容態は?黒焦げになった妹の容態はどーなの?」

「さっき"外神田ER"に電話で聞いた。でも、コッチの質問に答えるのが先ょ。そうすれば、教えてあげる。さて、Lesson 1。この2人を知ってる?アンタのビジネスに首を突っ込んだ2人。因みに2人共、死んだけど」

「殺したのは私じゃナイわ」


SATO司令部の捕虜尋問室。戦闘組織のSATOには逮捕とか取調べの概念は皆無。また、万事に事実追求が優先される。


「眠たいコト言ってないで、画像を良く見て。次は、問答無用で薬剤投与ょ。自白後は廃人になっちゃうけど」

「え。画像の男は知らない!誰だか会ったコトもナイわ!」

「じゃバスタブでお亡くなりの彼女は?妹さんの容態、知りたい?シンジケートの仕組みも歌って」

「…スターの特権でフライングゲットした新ゲームを持ってそうなセレブや監督の家に女の子を行かせるの。未発表映画やゲームを手に入れたら、報酬は1本50万円」

「レイシ・ミードは何本ゲットしたの?」

「10本…この半年で12本かな。稼ぎ頭だったわ」

「男と寝てたから?」

「ソレはみんなヤッてる。レイシは、誰かの弱みを握ってた。ブレドの取り巻きの、確かロガンとか言う大男。大方、ソイツか…もしかしたらブレド自身がゲイだとか、多分ソンなネタだとは思うけど」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


SATO司令部の捕虜尋問の模様は、万世橋(アキバポリス)と共有される。


「ロガンは脅迫されてたのね」

「YES。確かロガンは"バレたら全て終わり"とか嘆いてたわ。その秘密を恐らくレイシ・ミードは握ってた」

「レイシ・ミードは、ロガンを数ヶ月脅してた。秘密を守るから未公開のゲームを寄越せって」

「そして、ナゼか今、殺された」


ラボのルイナが会議アプリで割り込む。


「ゲーム理論には、リスクと応答の分析があるの。ジャッカルがライオンを観察する時、少し離れて忍び寄れば危険は少なくて済むし、ライオンも襲わない。でも、近づき過ぎてライオンの許容範囲を超えると、自らの死を招く結果になる。脅迫だけなら、ローリスクだけど何かがゲーム環境を変えたのね。コレをゲーム理論で説明すると…」


みんながウンザリしかけた時、捜査本部に刑事が飛び込むw


「バスタブ画像の撮影者、自称YouTuberのピィトがメイド通りのカフェに御帰宅してるのを見つけました!」

「よくやったわ!アンタが大将!全員出動(アルファストライク)!」

「え。ラギィ警部、私のゲーム理論のレクチャーは?」


周囲をザッと見回したラギィは秒で結論←


「テリィたん、聞いといて」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


自称YouTuberピィトは、万世橋(アキバポリス)の取調室に連行される。


「確かにバスタブ動画を撮影したのは俺だ。既に10万いいネを獲得した。撮影後、直ちに"ヲタベース"をズラかった」

「何でょ?」

「何で?おいおい。バスタブに女の死体があったのに、ヨシュもロガンも、誰にも秘密だと言うンだぜ?ブレドにも教えるな、死体さえ始末すれば何とかなる、とか言ってンだょ。激ヤバだろ?」

「激ヤバは動画を撮ったアンタでしょ?下手すりゃ消されるょ?で、撮った動画はどーしたの?」

「消去するフリして、アイツらに協力すると見せかけた。でも、1週間経っても何も報道されない。だから、黙ってられなくなって、警察にコッソリ動画を送ったんだ」

「ソレが匿名で送られて来たアレか」

「アイツら幼馴染で、ガキの頃からワイワイつるんでたのに…みんな変わっちまった。この秋葉原で」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「…詰まるトコロ、ゲーム理論とはモデルを提供して、プレイヤーが利益を極大化スルための戦略を提示するワケ。聞いてる?テリィたん」

「聞いてるさ。だから、オプションに沿って犯人が動くとは限らナイってコトだ。報酬を極大化スルために、秘密につけ込む、過剰な防御策を採る、などのリスクケースもアリ得る。結局、どの時点で犯人が殺そうと思ったかだょな」

「スゴい!テリィたん、わかってるのね!あぁ何でテリィたんはミユリ姉様のTO(トップヲタク)なの?私に推し変しない?24時間、ゲーム理論を議論しょ?ソンなお嫁さん、スーパーヒロインじゃ望めないぞ」

「間に合ってます」

「…あら?このモデル、レイシ・ミードは殺されたのに未だリスクが残存してるわ」

「え。何だって?」

「さっきのライオンとジャッカルの例え話だと、死んだハズのジャッカルが未だ生きてる。つまり、未だリスクが存在してるコトになってる。ヤバ。私、何処かで計算を間違えたかしら」

「殺しにゆすりに映画スター。ソレに邪悪な双子まで登場とはね。今回はミステリー要素満載だ。どーりで執筆ペースが落ちるハズだな」←

「テリィたん!ソレよっ!」

「ソレだっ!…ってかドレ?」

「私達、前にも双子を取り間違えた。今回も同じ。この演算モデル、レイシ・ミードをドレア・バトンに入れ替えて計算してみるわ!やったわ!ありがとう、テリィたん!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


プールサイドのビキニ美人をナンパ←


「こんにちは、ドレア。いいや。"ラブ 2(to)ラブ"さん」

「そろそろ来る頃だと思ってたわ。テリィたん」

「君には、万世橋(アキバポリス)の取調室か、SATOの尋問室か。どちらかを選ぶ権利がアル。どーする?」


ビキニ美人は、長い長い溜め息をつく。


「ソレでナンパのつもり?激ヲコ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


結局、取調室だ。となると、担当はラギィ警部。


「もう何もかもわかってるくせに」

「脅迫してたのが貴女ってコトはね。ブレドの何を知ってるのかを歌って」

「教える見返りは?」

「あら?取引はしないけど」

「私は犯人逮捕に協力出来るわ」

「…内容次第ね。そもそも、何で秘密を知ったの?」

「レイシが聞いた。寝物語(ピロートーク)でね。そして、レイシは双子だから、って私に何でも話した。ホントの親友だと思ってたみたい」

「違うの?」

「だって!整形手術までは見知らぬ赤の他人だったのょ?顔が似てたから千載一遇のチャンスが回って来ただけ」

「ソレでレイシは殺された。平気なの?」

「何度も言うけど、ホントの姉妹じゃないの。もうウンザリ。ねぇ司法取引しましょ。情報が欲しいのなら、私を脅迫罪に問わないで」

「貴女、何にもわかってない。秘密を歌わなきゃ脅迫罪どころか、殺人の共犯にもなるのょ?わかってる?」

「OK!どーせ秘密なんてバラスためにあるの。約束なんて守るだけ損。あのね、秘密はブレドの兄ょ」

「ライア?秋葉原に来て、直ぐ車泥棒(カージャック)で殺されたとか…」

「ソレは、警察向けの大本営発表。真実は違うの」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ペントハウス"ヲタベース"。


「やぁヲタッキーズ!来てたんだ。何か用?」


ポロシャツ姿のブレド・コモロが片手を上げる。爽やかだ。


「ブレド。秘密はバレたわ。お兄さんを殺したのね?」

「あぁ。カージャックで()られた。地元の警察も確認してる」

「調書を見たわ。目撃者は、貴方とヨシュと死んだロガン。そして、3人の供述は全て同じ。筋が通ってるだけじゃなくて、まるで一緒なの。全部、同じリズム」

「ソレが…どーかした?」

「あのね。普通は、供述ってバラツキがあるの。ソレが皆無なのは、全員が口裏を合わせてるから」


ブレドが唾を飲み込む。ヤタラと大きな音がスルw


「俺が兄貴を傷つけるなんて!愛してたのに!」

「ならホントのコトを歌うのょ。芝居はやめて、事実を歌うの」

「…酔っ払っての事故だったんだ」


ブレド・コモロは"落ちる"。


「秋葉原に出て来て初めて役をもらって…バーで飲んだ後、ブラブラしてた。小道具気分で銃を取り出して、役を演じてたら…弾みで弾が出た」←

「神田明神ょ。照覧あれ」


ムーンライトセレナーダーがつぶやく。


「ああ、スッキリしたっ!コレで連中から自由になれる!」

「連中って?」

「あの、自称"親友"だょ。何で俺が奴等に好き放題させてたと思う?手を切れば、即タブロイド紙に駆け込むからさ」

「ソレでロガンは"終わり"だと言ったのね」


ブレドは、肩の荷が降りたように淡々と語り出す。


「ミトモも事情を知ってるのさ。だって、あの夜、俺は…」


そこまで話したブレドは、突然、顔色を変える。


「待って。ブレド、止まりなさい!」

「ミトモ?ミトモなのか?君がロガンを?」

「音波銃!」


ブレドがプールサイドに飛び出し、下り坂と談笑してたミトモに掴みかかる!秒で全てを悟ったミトモが音波銃を抜くw


「やめろ!死ぬぞ!」


階下のバルコニーに飛び降りるミトモ。

ビニールプールで遊んでた子供を人質w


「来ないで!下がりなさい!」

「ダメょ!ミトモ、その子を離すの!」

「もう終わり!私は終わりなの!」


階下に降りたマリレがバルコニーに飛び出す。動揺したミトモの音波銃の銃口が動いた瞬間、青い光線がミトモを貫く!


ムーンライトセレナーダーの"雷キネシス"だw


「あぅ!」


全身を痙攣させビニールプールに倒れるミトモ。

人質になっていた幼女を無事に救出するエアリ。


「気をつけて。プールだと感電しちゃう」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の捜査本部。


「ありがとう、マリレ。ありがとう、ヲタッキーズ」

「ラギィ、謹慎中の私が現場に出たのを知って、SATO司令部が怒ってるの。取り成して」

「お安い御用ょ。SATOには感謝状を出しちゃう。いずれコレで、音波銃からはロガン殺害の証拠が出るでしょ。検察は、レイシ・ミードの件も立件出来るって大喜びしてるわ」


その背後をブレド・コモロが連行されて逝く。


「ブレドは、兄殺しで逮捕されたわ」

「でも、脅迫の件はブレド自身は無関係でした。アレは、あくまでロガンとミトモがやったコト」

「全て、自分のビジネス(カネヅル)を守るためにね」


1人オカンムリなのはエアリだw


「マリレのコト、ホントの親友だと思ってた。でも、3重スパイの件で裏切られたと感じたの。姉様、私は間違ってる?」

「エアリが感じてるのは罪悪感?」

「罪悪感?私が?」


本部のギャレーで薄いコーヒーを飲むミユリさんとエアリ。


「マリレと私が親友だったなんて、錯覚だったのかな」

「そうは思ってないくせに。あ、マリレ!エアリが御機嫌斜めょ。貴女は嫌われてる。どーする?」

「あ。姉様…エアリ」


申し訳なさげにギャレーに入って来るマリレ。


「ミユリ姉様は、私がどーあるべきだと?」

「貴女じゃないわ。この街がょ」

「と言うと?」

「結局、ヲタクは秋葉原に帰って来るの。それぞれの秋葉原が、それぞれのヲタクを幸せにしてくれる。誰の秋葉原が正しいとか、どのヲタクが1番かなんて、どうでも良いコトだわ」

「…その言葉で救われたカモ」

「アキバにいれば、ヲタクは1人じゃないの。マリレ、コレからどうする?」

「私、生きて逝くわ。この秋葉原で」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ヲタクに時間はいくらでもある

いくらでも

未知の未来が開けてゆく時間が

ヲタクがもたらす愛を楽しむ時が


ヲタクには尽きぬ愛がある

尽きぬ愛が

それさえあれば

他に何も欲しいものはない


アキバで手をたずさえて歩めば

未来は開ける

今まで抱いて来た不安は

全て過去のリアル


ヲタクに時間はいくらでもある

いくらでも

ヲタクの時間がある

過ぎ去る全てのひとときが


アキバで手をたずさえて歩めば

未来は開ける

今まで抱いてきた不安は

全て過去のもの


ヲタクに時間はいくらでもある

いくらでも

ヲタクの時間がある

過ぎ去る全てのひとときが

ヲタクの時間


ヲタクは全てを超えて



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"セレブ"をテーマに、過去の栄光に溺れるイケメンプロデューサー、そのボディガード、トラブルメーカー、ユーチューバー、総勢148人のアイドルグループのオーナー、センター、マネージャー、双子プレイ専門の嬢、フライングゲットした新作RPGを横流しする組織を仕切る姉妹、彼女達を追うヲタッキーズ、超天才や敏腕警部などが登場しました。


さらに、ヲタッキーズに入った亀裂と再生などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、外国人観光客の受入間近な秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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