性癖書き換え転生☆ ~40歳以下はロリだと思います~
いやもう出オチっていうか、なんていうか、その……許して?_:(´ཀ`」 ∠):_
多田野路利は転生者だ。
碌な人生を送ってこなかったので詳しくは割愛するが、真っ白な空間で肉感的な美女と交渉した結果、エロゲの世界に転生することになったのだ。いわゆる神という存在なのかも知れない。目の前で後光を放つ美女に視線を向けながらそう思うが、路利としては自分を転生させてくれるのであれば神だろうと悪魔だろうと何でもよかった。
目の前の肉感美女は路利のストライクゾーンから外れているので興味がない。
BBAはお呼びではないのだ。
「んー……エロゲ転生は希望者が多いんですよねぇ」
「そ、そこをなんとか! 何でも良いです! どんなエロゲでも良いですから!」
「……何でも良い? ほんとに?」
「はい! ホントに何でもいいです!」
そういうことができるのであれば最悪、触手やらSAN値削れる系のクリーチャーになっても良い。童貞のまま死んだ路利はそう意気込んだ。相手がちょっとボーイッシュで快活そうな美少女なら文句なしだが、控えめな娘だろうがクールな娘だろうが文句はなかった。
ただし年上はノーセンキューだが、と心の中で付け加えたけれど、そのルートを選ばなければいいだけである。童貞だけあって、路利はギャルゲーやエロゲには詳しかった。
ロリコ……もとい、路利はちょっとだけ年下が好きなのである。
目の前にいる美女も路利にとってはババ……ちょっとだけ年上でストライクゾーンから外れていた。
「分かりました。まぁ業が深そうなので、その矯正も兼ねて相応しい世界へと送りましょう」
「……ゑ?」
「私、心読めますので。――では、よい次生を」
そうして降り立った世界は流行りのVRゲームよろしく、視界の端に日付やら好感度メーターやらがUIとして並ぶ、いわゆるゲーム画面だった。
流石に出会ってもいないヒロインの好感度が分かるはずもなく、黒塗りのワイプにハテナが並んでいるだけだったが。
他にもヘルプやらオープニングやらよくわからない項目が並んでいたが、エロゲマスターの路利は特に確認するまでもなかった。
だいたいエロゲなんてストーリーは添え物なのだ。
割と多くの人間を敵に回す思想だが、少なくとも路利にとってはそういうものだった。
「よし、よし、よぉし!!!」
路利は快哉を叫ぶと自分の身のまわりを確認した。
どうやら路利の魂は大学生になっていたらしかった。それも、日本でNo.1の学力を誇る国立大学の二年生である。
季節は春。今日から二年生になるということで出会いには丁度いい季節だ。
「ハイスペックイケメン……そりゃエロゲの主人公になれるわけだ……クソ。俺ももっと勉強しておけば……!」
湧き上がった後悔だが、すぐさま未来への希望によって塗りつぶされる。
なんといってもここは楽園。やりたい放題の食べたい放題なのだ。
大学に通うために家を出れば、外は快晴。
「……世界がおれを祝福しているようだ」
今日び、中二病患者でも言わないようなイタ……もとい、純真な発言をして空へと視線を向けたところで、腿に軽い感触。
「ん?」
「はわっ!? ご、ごめんなさい!」
視線を落とせば、国民的アイドルグループみたいな衣服にピカピカのランドセルといったいでたちの幼女がいた。
二つ結びにくくったツインテールをぴょこんと揺らしながら幼女は頭をさげていたので、優しく撫でてあげる。
ロリコーーもとい、こどもには優しいのが路利の良さである。
危なさでもあるが。
「別に大丈夫だよ。前見てね」
「はいっ!」
「ちょっと、まお! 走っちゃ駄目だって! ……すみません」
母親らしきスーツで着飾った女性が慌てて駆けてくるあたりで路利は幼女から視線を切った。
ぴょこんと画面にビックリマークがついたからだ。
つまりこれは、そういうことだ。
(おおっ!? さ、さすがに小学校一年生は……いやでも、良いんだよな……? 『※この物語に出てくるのは18歳以上なのになぜかランドセルを背負っていたり小学校に通っているつもりでいます。おかしいね!』ってやつだよな!?)
でへへ、とかなり控えめに言って気持ち悪い笑みを浮かべて視界端のUIを見ればそこには、
『橋本美奈子(41) 事故で夫を亡くした未亡人。女手一つで娘のまおを育てる気丈な女性。年下ながら頼れる貴方に夫の影をみる……』
幼女の面影がある女性が映されていた。
「……は?」
「すみませんでした。……あの?」
「ああ、いえ」
それはまごうことなく、幼女の母親であった。
(いやまて。第一攻略対象が子持ちの未亡人ってどういうことだよ!?)
おにいちゃんまたね、と手を振る幼女に力なく手を振り返しながら、路利はオープニングーーというかバックボーンになる説明を開く。
『オープニングムービーを再生しますか? (途中で止めることはできません)』と尋ねられたが、兎にも角にも情報が必要なのでイエスを押す。
途端に、打ち込みらしいぴこぴこした音楽が流れ始める。
どうやらアニメーションムービーらしい。フルボイスらしく、音楽に合わせて歌が始まった。
『♪甘えて 甘えて 甘やかす (なでなで)』
同時にアニメーション調の登場人物紹介が出てくる。
『♪年上好きなの? いけないボウヤ
♪イケない子なのね? 私をオンナとしてみるなんて』
「……き、気が狂いそうだ……!」
残念ながら目を閉じても耳をふさいでも効果はない。瞼の裏でムービーとともにヒロインが紹介されていく。
――夫を失いながらも孤独に負けず娘を育てる強き母、橋本美奈子(41)
――冷めきった夫との関係に、新しい刺激を求めてしまう購買の店員 吉本恵美(44)
――離婚後、男日照りが続く同級生のお母さん 近堂静香(50)
――大学の準教授が夜になると開く、イケない個別授業……! 南かずえ(48)
――「あら、私の息子と同い年なのね?」空の巣症候群 遠藤かず実(53)
――主人公の秘密を知る謎の美魔女 アンナ・フェリペ(51)
「ちょっと待て!? なんだこのラインナップは!?」
路利がツッコミを入れても、答える声はない。代わりに、サビに差し掛かったテーマソングがひときわ強烈な歌詞を耳朶に叩き込む。
『♪安心してネ 経験済みよ (バブバブ)
♪おむつも授乳も お手の物 (バブバブ)
♪だって だってだって 私は ママだもん☆』
そして、眼前に転生した世界であるエロゲのタイトルが大写しにされた。
『ママ♡はぁれむ!2』
「ちょっと待てェ!?」
ママ♡ってなんだ!? しかも2ってどういうことだ!?!?
混乱する路利に答える者などいるはずもない。
「い、いやだ……! もうロリとか言わないから、せめて同い年くらいのヒロインを出してくれぇぇぇぇ!!!」
「あら、路利くん? おっきくなったわねぇ……うちの子、他県にいっちゃったからいないけど、久々におばさんの家でお茶でもしていかない?」
絶叫してる間に第二ヒロインと邂逅した。
しかも出会った瞬間に特大のフラグまで立っていた。
捕食者というのは隙を見逃さないものなのだ。
なお、路利は再婚とともにループするこの世界を繰り返すうちに思考を染められてしまい、隠しキャラの女性(66)とトゥルーエンドを迎えたことを記しておく。
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