高校生に戻った俺、元妻を幸せにするために避けていたのに元妻がぐいぐい来る
タイムリープものが流行りな気がして。
俺はくそ野郎だ。
だから彼女になるべく関わらないようにしよう。
そう思っていたのに。
俺には秘密がある。
それは俺が二度目の人生を歩んでいることだ。
しかも、違う人としての人生ではなく同じ人物としての人生、つまり俺はいつのまにか16歳から人生をリトライしているということだ。
俺の前回の人生には妻がいた。
学生の時から付き合っていた人だ。
だが妻にはたくさん迷惑を掛けたし何もしてやれなかった。
切っ掛けは覚えてない。
けどいつからか仕事に邁進し過ぎて妻を疎かにするようになった。
家にもあまり帰らず連絡もせずとにかく仕事に全てを捧げていた。妻を省みることもせず仕事ばかりしていた。
それは妻が事故に巻き込まれた時もそうだった。
電話が来ていても気付かなかったのだ。
後から聞けば事故後しばらくは意識がないまでもまだ生きていたそうだ。最期を看取ることはできたのだ。
俺が妻が亡くなったことに気付いたのは事故から数日たった後だった。
その事実を知った時俺は泣き崩れた。
皮肉なことに俺は妻が亡くなってから妻の大切さを再び理解したのだ。
家に帰った時妻が暖かく迎えてくれたから俺は頑張れたのだと。
妻がいてくれたから仕事ができたのだと。
俺は妻に対して何かやれたのだろうか。いや、何もしてやれてない。
結婚するまではよくしていたデートも一緒に寝ることも感謝を伝えることも愛を伝えることも全て仕事が忙しくなってからできていない。いや、忙しさを免罪符にしておざなりにしていたのだ。俺は最低な男だ。
妻は俺に尽くしてくれたのに俺は妻に尽くせてやれてないという後悔が頭の中に埋め尽くされる。
俺は何も手につかなくなった。
しばらくすると会社をやめた。
何も考えられなかったから会社から止められても仕事をやめたのだ。
それからというもの俺には景色が灰色に見えた。
何をやっても実が入らなかった。
そして事故から1年がたった日のこと。
突然意識を失い目を覚ますと学生服を着て部屋にいた。
最初は混乱した。でも、もう一度同じ状況で人生をやり直せるなら人のために働きたい。そういう気持ちが強くなっていた。
それと元妻――優花には幸せになって欲しい。今度は陰から幸せになる手助けしたい。俺は彼女を幸せにできないから…。まぁ、この世界の彼女はそんなことは知らないから適度に距離取りながら困っていたら助けよう。
学校の時は彼女とは接触しないよう行動していた。この時の俺はまだ彼女と出会っていないから大丈夫なはずだ。
実際それからしばらくの間、忙しくも懐かしい平和な日々を過ごしていた。だがある日の帰り道、彼女と久しぶりの再会を果たしてしまったのだ。
「あっ!」
後ろから驚く声がしたので振り向くと優花がこちらを見ていた。
「えっ?」
突然の再会に俺の心拍数は急速に上昇する。
「俺になにか用ですか?」
声が震えないように何とか話を振る。
「えっと!私の知ってる人に似ていたので…お名前を聞いてもいいですか?」
「……」
どうしようかな?確かに陰で手助けはしたい。でも、関わったら彼女が優しいから甘えてしまう可能性があるのだ。
「その…知らない人なのにいきなり名前を聞くなんて失礼でしたよね…それじゃあ」
彼女が落ち込んだ様子で離れようとするので腕を掴んでしまう。
「待った!…俺の名前は滝川賢人…だ…よろしく」
「はいっ!私の名前は中野優花です!よろしくお願いします!」
彼女とはなるべく接触しないようにしてたのにまさか偶然会ってしまうなんて…。
チクショーやっぱり可愛いな優花は…!
そのはにかむ笑顔もショートボブの髪もくりっとした瞳もぷっくらとした唇もそして鈴のような声も全てが魅力的で………!
でも俺には彼女と一緒にいれる資格はない。分かっていたつもりだったけど優花本人に会うと気持ちに整理がつかない。
「…じゃあ、俺は用があるので…」
彼女が何かを言いかけていたが俺は逃げるようにその場を立ち去った。
結局俺は彼女のことを諦められていない。頭では理解していると思っても心の底では認めることを拒否してるんだ。
「賢人、どうした?そんなに暗い顔して」
話し掛けてきた彼は金城佑真。前世でも友達だった彼は相変わらずバカだが良い奴だった。
「あぁ、昨日勉強しててあまり寝れてないんだ」
「はーすんげぇな?首席さんは。俺なんて本開いたら5秒で寝れるわ!」
「あはは…」
そんなやり取りしたが実は昨日勉強してて寝れてないというのは嘘だ。確かに軽く予習と復習はしたが昨日寝れなかったのは優花のことを考えていたからだ。正直一日考えた結論は接触しなければ自然に気持ちが収まるかも?というものだった。今の頭が混乱している俺にはこれで限界だった。
時は昼休み。
俺はすぐに弁当を食べ睡眠体勢に入っている。
さすがに徹夜したから睡眠を取らないと体がもたない。
睡眠をしようと机に突っ伏して目を閉じていると周囲がザワザワとし出す。
何かあったんだろう。無視して眠りに入ろうとすると今度は突然静寂が訪れる。
そして――。
「おい、賢人!中野さんが呼んでるぞ!」
想定外の言葉に脳は理解できなかったが反射で顔をバッと上げる。
「やっほー賢人くん!一緒にご飯たべない?」
俺はフリーズした。
「おーい、賢人くん?」
俺がフリーズしてる間に優花がいつまに目の前まで来ていた。
「ご、ごめん!もう昼飯は食べたんだ…」
あえて申し訳なさそうに事実を述べると。
「んー、じゃあ話だけでもいいから付いてきてくれない?」
「いいよ…」
俺は結局彼女から逃れなれなかった。
俺は今彼女に連れられ廊下を歩いていた。
うぅ、視線が痛い。
彼女は一年生にしてミス精華なので学園内でとても有名なのだ。
だから彼女と一緒に歩くと妬みの視線が突き刺さる。
だけどその様子で昔を思い出す。昔は彼女と並んで歩けるように自分を磨いてたな。なのに大人になった俺は彼女を疎かにしてしまった。またしても思考はネガティブな方に傾いていく。
考え事しながら歩いていると目的の場所に付いたようだ。
ここは屋上へ上がる階段の前の踊り場だ。
「よしっ、ここなら二人で話せるね?」
何か話したいことでもあるのだろうか?昨日出会ったばっかりだぞ?
「俺なにかしちゃいました?」
「なんで?」
「いや、だって昨日あったばかりで話すこと…ないと思うけど」
「あーそっか!そうだよね…」
彼女は何やら悩み始める。
「うーんとじゃあ…連絡先交換しない?」
「え!」
「嫌?」
「嫌じゃないけど…」
ヤバイなぁ。ここで連絡先を交換すると否応なく関わりは増えるだろう…よく考えたらそこまで避ける必要ないかも。だって恋人にならなきゃいいんだから普通に友達過ごしていくのはアリじゃないのか…?
「けど?」
「ミス精華の中野さんと連絡先を交換していいのかなと」
「つまり、賢人くんは有名人と交換できるのはいいけど気後れするってこと?そんなの気にしなくていいよ!私とあなたの仲だとね?」
「私とあなたの仲って…?昨日初めて会いましたよね?」
謎の発言に疑問を感じていると。
「ごめん、あなたと似ている人と混同してしちゃった…。でも、あなたとは仲良くしたいよ!一目見てビビット来ちゃったんだ!」
それから俺と彼女は他愛ない会話を続け、最後に連絡先を交換してそれぞれの教室に戻った。
それしても優花は可愛かったなぁ。
帰り道の最中に昼の出来事を思い出す。
でも、おかしな発言をたくさんしてたな~。優花ってこの時はこんな感じだったのかな?それともこの優花は俺の知ってる優花ではないのとか?いや、有り得るな。そもそも自分で勝手に人生をリトライできてると思っていても実は別の世界線の自分に憑依または転生したのかもしれない。実態は分からない。ってことは優花は俺の知ってる優花じゃないかもな。そう考えると少し寂しい気持ちになった。俺と愛し合った優花はもういないだと突き付けられたようでやるせない気持ちが沸き上がってくる。
はぁ、またネガティブな思考になる。まさに負の連鎖だ。思考が坩堝に嵌まる。それでもせっかく貰った二度目の人生は人のために生きたい。
彼女からのLeinがたくさん来ている。
しかも、遊びのお誘いの。
行ってもいいのか…?友達ならこれくらい普通……だよな…?
俺の気持ちは行く方向へ傾きつつあった。
だが、頭の中の天使が待ったをかけた。
お前このままだとずるずる関係を続けてまた優花に迷惑をかけるようになるぞと。
ハッとした気持ちになった。前世もそうやって甘え続けて後悔することになったじゃないか。俺はまた過ちを繰り返すところだった!
《ごめん!その日は家で試験勉強する予定があって…違う日ならいいけど…》
彼女を既読無視するのは俺の心が許せなかったので苦し紛れの言い訳をする。
《えー勉強くらい後でも良いと思うけど?でも仕方ないか……あっ!なら私の家で一緒に勉強しない?その後遊びに行こうよ!》
それはもはや家デートでは?嬉しい反面苦しい状況になってる。果たしてどうするべきか…。
《あー、そのそこまで仲良くない男を家に入れたらだめだと思うよ?お誘いは嬉しいけど今回は断らせてもらいます》
《なんで?なんで!そんなに私のことを避けるの…?昔のあなただったら断ることはなかったのに!!》
ここで俺はある可能性が頭に浮かんだ。でも、流石にそれはないだろうし、あっても俺とは関係ないかもしれない。だからその可能性は考えないことにした。
どう返すべきか分からなくて返信はできなかった。
翌日俺はこの世界に来て初めて学校を休んだ。
優花と会う確率をできるだけ低くしたくて学校を休んだ。頭が痛いというのもあるけどね。
そのままを勉強していると外は橙色に染まり始めていた。
ピンポーン!
誰かが配達でも頼んだのだろうか?ガチャッと扉を開くと。
「どちら様で…あ」
「むぅぅ」
優花が頬を膨らまさせ仁王立ちをしていた。
何も見なかったことにして扉を閉じようするが足が挟まれ閉められない。
「何をしようしてるのかな…?賢人くんは…。とりあえず家に入れてくれない?」
周囲の目もあるため渋々優花を家に入れることにした。
「それで、どうして私を避けるの?」
「いや、避けてなんか――」
「嘘つき!勉強するとか言い訳して私のこと避けてたじゃない!Leinも既読無視するし学校にもいないし…」
「いや、学校を休んだのは本当に頭が痛くて――」
「…そっちがそのつもりなら私にも策があるよ!私は賢人くんが理由を話してくれるまでこの部屋から動かないもんね…フンッ!」
マズイなどうするば…優花のこと以外ならどうとでもできるんだが優花相手だと何もできない。それに優花は昔から変なとこは頑固だから本当にここから動くつもりはないんだろうな。
もういいんじゃないか?
自分の気持ちを偽らなくて。
優花を好きだという気持ちはいつまで立っても消せなるようなものなのか?
それに彼女が寂しがるような行為を続けていいのか?
滝川賢人!お前は男だろ?いつまでくじくじしてるんだ!結局自信がないだけだろ?本当に好きなら罪悪感があっても彼女を幸せにするべきだろ?
そうだ!一番優先すべきことは彼女の幸せだ。
自分の心の整理がついたところで優花に話をする覚悟決める。
「優花、実は――」
俺は全てのことを優花に話した。二度目の人生であることを他人に言っていいものなのか分からない。でも、死んだらそこまでだ。偶然チャンスを貰っただけで俺の人生は最愛の妻を喪ったという言い方は悪いが詰んだ状態だったのだ。優花とまた話せただけで俺は幸せだった。
「――という訳で優花を避けていたんだ。優花は気持ち悪いと思うかもしれない。だから俺のことを蔑んでもいい。だけど俺の、俺の『好きだ』という気持ちは受け取って欲しい」
優花は話を聞いた後黙りこくっていた。
緊迫感が俺の体を蝕む。
「賢人くんあのね――」
優花が語った内容は驚きではあったが納得できるものだった。やはり俺の頭に浮かんだものは当たっていたらしい。
それは優花も二度目の人生であるということだ。
そして、一番驚いたことは不思議な少女が優花の人生をやり直させてくれたそうだ。はっきりとした顔は分からなかったが優花が事故にあった時に助けた少女に似ていたらしい。
「賢人くん。私も賢人くんのことが大好き。賢人くんは仕事に邁進し過ぎて私を疎かにしていたのは自分のせいだと思っているようだけど元は言えば私が家族皆で住める家が欲しいと言ったからだもん。もちろん寂しかったけどお金が貯まれば元の生活に戻れると信じていたから…。家を買っても私のことをかまってくれなかったらシバキ倒してたよたぶん。とにかく私のパートナーは賢人くんしかありえないものなの分かった?」
「でも、君の知ってる賢人は俺じゃないかもしれないけど…」
「いや、正真正銘今私と話している賢人だよ?」
「その根拠は?」
「女の勘ってやつ?それでも信じられないなら一日中出会い~結婚生活まで色々話してみる?」
「好きな女にそこまで言われて反論するような奴は男じゃないさ!それにたとえ君が知ってる賢人じゃなくても結局はどの世界でも俺たちは愛し合ってるってことだろ?それってなんだかロマンチックじゃん!」
しばらく見つめ合うと俺たちは手を繋いだ。そして――。
「私と一生一緒にいてください賢人くん!」
「あぁ、次は絶対幸せにして見せる!だから俺の彼女になってくれ優花!」
「ふふっ、なんだか恥ずかしいですね?」
「あぁそうだな!でも優花を二回も恋人にできて俺は幸せな気持ちでいっぱいだ」
「私も賢人くんの彼女になれて幸せです!」
《おしまい》
ヒロインもタイムリープするのはあまり見たことがないので下手なりに書いてみました。
構想から制作まで約一日なので誤字脱字あれば報告よろしくお願いします。
(追伸)
9月16日 日間現実恋愛85位 ありがとうございます。
9月16日 日間現実恋愛39位 ありがとうございます!
9月17日 朝、起きたら19位 まじですか?ありがとうございます!! 皆様のおかげです!
ふぇ?え?は? まさかの14位 読んでくださった皆様のおかげです。ありがとうごさいます!!!
9月17日 日間現実恋愛9位 !!!
9月18日 日間現実恋愛6位 ???
自分が想像していたよりもたくさん評価を頂き震えています。
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