十. ロリゆくカラダ
「あ~あ、そんな……あのバカヤロぉ……」
道行は膝から崩れ落ちた。
お馬鹿なぼんくら幼馴染のせいで緊急事態に緊急事態の上塗りである。
赤色灯をうならせるパトカーがスクランブル出動して来かねない。
人生終了の大真面目な大ピンチ。
首を横にめぐらして、ベンチに横たわってしまっている絶賛ロリ化進行中のコオリさんを、ジッと見つめる。
いっそのこと彼女を白昼のもとに放り出してしまうのはどうだろう。太陽の光で完全燃焼させてしまえば、溶け切らせてしまえば、悩みの種は文字通り消え失せてしまうのではなかろうか、と、悪魔の一案が鎌首をもたげた。
だが、頭を振り、拳をアスファルトに叩きつけて、排除する。
「……とっとと助けて……ヘンタイ……」
だんだんと口が悪くなってきて余計な言葉まで含まれているけれど、コオリさんはベンチにうつ伏せで横たわった、死にていの様相。小さな女の子の容姿で、白い息をハアハアさせながら切実に助けを求められているのだ。
放り出したくても、良心がめちゃくちゃ咎め、無理というもの。
いまさら見捨てるなんてできっこない。
坂道ですでに、助ける、と約束してあるのだ。
道行は立ち上がりざま待合小屋に飛び込むと、床に溜まっている水をバシャバシャと踏みつけて、ベンチの前に身をかがめた。
「どうすればいいか僕に教えて下さい!」
「氷が必要って、さっきからずっと言ってる」
「……言ってたっけ?、そんなこと」
「お願いだから、はやく……ミチユキ」
そう口にしたのを最後に、ベンチの座板から細い腕がだらりと垂れ下がった。
まったなしかよ!
「とにかく氷ですね!? 氷があれば助かるんですね!?」
「…………」無言ながらも、わずかに顎が引かれる。
ただちにすべきことは氷の確保。
ということは冷蔵庫や冷凍庫が必要だ。
坂道の途中で引き返して川渡商店に向かっていれば、と悔やまれる。ジュースを買ったときに、となりに陳列されていたブロックアイスで、どうにかできていたかもしれなかった。しかし今となっては、たらればのことを想起していてもしかたない。
「このバス停から二百メートル先に、僕の家があります。冷蔵庫に氷が入ってますから! 今からそこまで担いで運ぶんで、我慢してください!」
と、ベンチに突っ伏しているコオリさんを起こそうとしてさわった瞬間、道行は「冷たっ!?」と手を引っ込めた。
彼女の体は人肌のようにやわらかいものの、体温は正真正銘の氷の冷たさになっていて、もはや手でじかにふれることができないのである。そもそも、熱に弱いのだから、素手でさわっていれば、溶ける速度を早めてしまうことにもなるだろう。
上気している道行の頭から、次から次へと大粒の汗が流れ落ちてくる。それをワイシャツの袖口で拭きとったときに、ハッとして、自分が着用している高校の制服を見下ろした。
「これを使うしかないか……」
後方を見返り、人が居ないのを確認したあと、意を決して、服を脱ぎだす……。