デストピアの先兵 後編
あらすじ:
アカルは生きてきた証を残すために最後のプレゼンを行う。
プロジェクトの報告を行う予定でしたが内容を変更させて頂きます
というのも私がこれまでの自分の仕事を省みた時に、人としてその罪深さに耐えられなくなったからです
私はこれから私自身の考えをこの命をかけて告白する事でその謝罪に代えさせてもらうつもりでいます
お付合い頂ければ幸いです
我々の仕事は一般に言う広告の仕事とは違います
それは我々の意思で売れるものを決定出来る点にあります
大多数に受ける広告が良い広告である世の中でも、依然として広告が奉仕するのは人間であり消費単位ではないと言う点に変わりはありません
広告の受け手を消費単位と見る時、広告会社は大量生産大量消費主義の先兵となって社会の破滅を促すことになるからです
今回のプロジェクトで関わった多くの少女たちはそういった人間的な暖かさのかけた大量生産大量消費主義の犠牲者といえます
彼女たちの産み出す欲望はすぐにまた新たな欲望を産み出します、それが同じ場所で機械的に繰り返されるのです
資本主義は主人なき奴隷制と言いますが彼女たちが被害者であることも事実です
そうであるならば彼女たちを奴隷にしてしまったものは加害者なのではないでしょうか?
私は今日ここでもう一度、皆さんに我々が文化の官僚であるということを強く意識して頂きたいのです
今日の広告は昨日の広告と違います、同じように明日の広告は今日の広告とは違うでしょう
我々の仕事は明日の広告を作ると言う名誉ある仕事であることを強く意識して頂きたいのです
私たちは自分で創造することが出来るのです、その意味で私たちは無限の自由を手にしているのです、私たちは運命を握っているのです、それは私たちの手の中にあるのです
これは―――っと、ここで回線切られたか、まあ言いたいことは計算通りあらかた伝えることが出来たからな、OKだ。
ネットでの中継はぶった切られたが聴衆である目の前の本社の全社員に語りかけることは可能だ、しかしもう俺の気持ちが切れてしまっていたし、通報を受けた公安が到着したのが見えるしここまでにしよう。
俺は壇上で取り押さえられた訳だが、無抵抗であるにも関わらず乱暴に組み伏せられ、その拍子に俺の心臓に本能的に危険を感じるレベルの激痛が走った、どうやらその時が来てしまったようだ。
後悔ばかりの人生かもしれないがそれが俺だ、そこに俺がいるのであればそれは幸せだ、俺は幸せな人生を歩んだのだ。
おっと、おお、死ぬときってあっけないものなんだな。
走馬灯なんて見れやしない、あれってやっぱり死んだ人が生き返る時の個人情報ロード動作なんだろうな。
地獄ってどんなとこなんだろ、またナオに会えるかな、それともダブルピース女がいたりしてな。
さて、そろそろみたいだな、グッバイ俺。
暗転
なんだ今の!過去の記憶?未来の予感?そんな観念?地獄ってこれが?ああ、考えを追いかけたいのにどんどん頭から思考が抜けていく!なんだか大切なこと、たくさん知ってたはずなのに!
俺は…って俺?俺ってなんだ?手に持ってるのは?これはリンゴじゃないか、かじったのは俺?俺は誰だ?ここはどこだ?なんだこの木は?広がる草原の景色、綺麗だな、って綺麗ってなんだ?これ大切なことじゃなかったか?
なんで裸なんだ?裸?って、おお!目の前のキミ!前に会ったこと…あったよね?このリンゴはキミが?いや、恥ずかしがらずに聞いてくれよ、何か知ってる?いや俺も恥ずかし、あれ?恥ずかしい?ってなんだっけ?
ああ、もうだめだ、なにもかんがえられなくなってく、けれどおれは、けどおれは、こんどこそうつくしいらせんをえがく、びはきのうのぶっしょうか、ひとのこうどうはえんではない、それはらせんである、だぶるぴーす、あ、うけてくれた