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最強の男の娘の異世界戦記~異世界にて近代軍隊創りませう~  作者: 永遠の42歳時雨上等兵
第1章 お貴族様に目にも見せてやろう
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契約

 「ふむ、なるほどのう」


 洞窟の前に焚かれた焚き火の横で小雪は少女の話を聞いていた。

 6人の男達から少女とゴブリンを助けてから既に数時間が経っている。

 あのあとゴブリンはエミリアの卓越した回復魔法でなんとか一命をとりとめた。だがかなりの量の血が流れていた為、さっき晩飯を食べ、今しがた眠り始めたところだ。


 「つまり、ゴブリンの村で慎ましく生活していたらあの騎士どもがやって来てお主を殺そうとしたと。んで、それを逃がすために多数のゴブリンが犠牲になったと。そう言うことかの?」


 「はい。そうなんです…。私のせいでっ」


 「…まあ、そう悲観するでない。彼らは自らの意思でやったのじゃろ?だったら死んでいった奴等の分まで前向いて生きていかないかん」


 小雪はそう言うと少女の頭を乱暴に撫でる。


 「そう言えば名前を聞いてなかったの。差し支えなければ教えてくれぬか?」


 「…アーデルハイトです」


 「アーデルハイトか。いい名前じゃのう」


 小雪はそう言うと焚き火に水をかけた。


 「さて、今日はもう遅い。お主はいろいろあったのじゃ。今日はもう寝なさい」


 「…」


 「おやすみなさい」


 「…おやすみなさい」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 「…さて」


 全員が寝静まった夜中。わしは後ろの洞窟を見る。


 「先程から何か気になるの。…ちと調べてみるかの」


 言いつつ立ち上がる。腰に下げたククリの柄をひと撫ですると洞窟の中に入っていく。

 しばらく進むと少し広い場所に出た。洞窟はそこで終わっている。


 「…いや、恐らく」


 小雪はそう言うと右側の壁に近づく。


 「…ああ、やはりの」


 拳を握り締め無造作に拳を叩き込む。粉塵が舞い上がったが風魔法で沈静化させる。


 「やはり続きがあったの。さて、鬼が出るか蛇が出るか」


 小雪はニヤリと獰猛な笑みを浮かべると自分が空けた穴の中に入っていった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 「なによ!何なのあいつ!何でバレたの!」


 少し洞窟を進んでいくと微かに甲高い声が聞こえた。幼い、子供の声だ。


 「童の声か?」


 慎重に、されども大胆に進んでいく。

 30メートル程進むと再び少し広い場所に出た。だが、明らかに先程とは違う点がある。


 「ほう。これは」


 部屋にいたのは10体弱のコボルトと20体は居るであろう武装したスケルトンだった。

 そして、それらの前に立つ幼女が1人。


 「う゛ー。まさかこんなことになるなんて…」


 「質問いいかの?お嬢さん」


 「侵入者が話しかけないで!ほんとになんでバレたのよ!バレないように通路に壁作ったのに!」


 その言葉に小雪は納得した。自分の予想は間違っていなかったのだと。


 「となると。お嬢さんやはりここは“ダンジョン”なのか?」


 「む。人の癖に察しがいいわね。そうよ。ここはダンジョン。そして私はここのダンジョンコア」


 「ほう。ダンジョンコアか。して、何故後ろにコボルトとスケルトンが居るのじゃ?」


 「決まってるでしょ。侵入者であるあなたを殺すの!」


 「はぁ」


 小雪は溜め息をついた。先程の獰猛な笑みはどこへやら。今は仕事終わりのOLのような顔をしていた。


 「うすうすダンジョンだとわかっとったが。まさかこんな童が相手とは」


 「なに言ってるのよ!全部聞こえてるわよ!」


 「はぁ」


 その態度が気に入らなかったのか自らをダンジョンコアと言う幼女はコボルトとスケルトンをけしかけてきた。


 「めんどくさいの」


 呟くと同時に3体のコボルトが同時に飛び掛かる。


 右から飛び掛かってきたコボルトを、ククリを抜きざまに柄で頭蓋骨を叩き割り、絶命を見届ける事なく左手で左から飛び掛かってきたコボルトの首を掴みながらククリで正面のコボルトを斬り殺す。


 ククリを軽く振り軽く血を飛ばすと握力に任せて首を掴んでいたコボルトの首の骨を握り潰した。


 辺りに骨と肉が潰れる生々しい音が響く。


 止めとばかりに掴んでいるコボルトの死体を幼女の横を掠める軌道で壁に叩きつける。軌道上にいたスケルトンを数体粉砕しながら壁に激突したコボルトはもはや原型を留めていなかった。


 「歯ごたえがないのう。無さすぎじゃ」


 1歩づつ、1歩づつ近づく。


 「なっなんで?」


 飛び掛かるコボルト達。

 しかし、それらはなすすべなく殺されていく。

 あるものは斬られ、あるものは潰され、あるものは食い千切られる。

 蹂躙されるコボルト達に加勢するようにスケルトン達が前に出た。

 武装したスケルトンは武器毎に班をくみ、連携しながら攻撃を始める。

 巧みとは言いがたいが、確かな連携で矢を放ち、剣や棍棒、槍を振るう。

 しかし。


 「ほう。武装スケルトンによる連携行動か。面白い」


 それらは小雪を傷つけることは出来なかった。

 剣や棍棒は砕け、槍や矢は皮膚に刺さることなく折れてしまう。

 コボルトやスケルトンの攻撃は全くの無意味、しかし、小雪の攻撃は全てが致死攻撃と化した。


 コボルトやスケルトンを片手間で惨殺しながら少しづつ近づく妙齢の女。


 そんな非常識な光景に幼女は完全に腰が引けていた。


 やがて、最後のスケルトンを殺し終え、手を伸ばせば幼女に触れることが出来る距離まで近づくと、小雪は幼女に向かって微笑んだ。


 「え、あ、あの」


 そして微笑みながらククリを振り上げた。


 「え、あっえ!え!」


 狼狽える幼女をよそに放り下ろされるククリ。

 小雪は頬に付いた返り血を手で拭うと人心地ついた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 翌日、バナード孤児院。


 変化とは往々にして突然現れるものである。たまに緩やかに変化する場合もあるがそれらは変化とは認識されない事も多い。

 故にバナードの孤児院に住む銀髪の少女、ミアは眉をひそめて小首を傾げる事になったのである。


 「…なに、この生き物」


 目の前には大きさ5㎝程の人を小さくしたような生き物がいた。


 「…なに、この生き物」


 もう一度呟くが答える声はない。

 同じような生き物が部屋の中に何人かいるが誰も気にしている様子はない。


 「…昨日は居なかったよね?」


 思い出してみる。…やはり居なかった気がする。

 …昨日居なかった生き物が突然現れたのなら、みんな気にするはずだよね?


 「…どうしよう」


 そしてはたと思いつく。


 「…リタ君に聞いてみよう」


 これ幸いとばかりに行動を開始するミア。そしてそれを、小さな生き物はじっと見ていた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 「金策金策っと」


 口ずさみながら筋トレをする。今日は珍しくミアが居ない。そんな訳で筋トレしながら考え事をしているのである。


 「非合法な仕事の方が手っ取り早いんだがなぁ。後々めんどいし。真面目に働いて金になる物。…運送か?いや、準備に金と時間がかかりすぎる」


 いくつか案を考えてみるがどれも欠点がある。多くは金と時間が問題だが。


 「はてさてどうしたもんか」


 「…やっぱりここにいた」


 ぶつくさ言っているとミアがやって来た。


 「おう。おはよう」


 「…おはよう」


 …なんかどことなくいつもと違う気がする。


 「どうかした?」


 「…ちょっと聞いてほしいことがあるの」


 「何?」


 聞くとミアは俺の右斜め前の地面を指差した。


 「…そこに、何か居ない?」


 見るが特に何か居る訳でもなくただの地面だ。


 「…いや。僕には見えないけど」


 「…そう」


 そう言うとミアは少し残念そうな顔をした。


 「ミアにはなんか見えるの?」


 「…うん」


 「どんなものか、話してくれる?」


 「…うん。このくらいの小さい人みたいな生き物」


 ミアが示したのは大体5㎝。ふむ。…確信が持てんな、小雪が早く戻って来てくれればいいんだが。


 「…何か知ってる?」


 「うーん残念だけどわからないな…」


 「…そう」


 そう言うとミアはまた残念そうな顔をした。


 「まあ、気にしないでいればいいんじゃない?」


 「…そうする」


 短い会話を終えるとトレーニングを再開する。

 ちなみにミアは横で軽く下半身強化してる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 昼


 昼食を食べ終え、庭で昼寝をしていると、ミアに起こされた。


 「…リタ君。エミリア先生帰ってきたから応接室に来てって」


 「はやいな…。何かあったのかな」


 ゆっくり起き上がり、伸びをしてから立ち上がる。

 軽く首を鳴らすと応接室に向かった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 応接室


 応接室に入ると小雪とエミリア先生の他にフード付きのケープを被った2人組がいた。

 「おおリタ、ただいまなのじゃ」


 「お帰り、はやかったな。なんかあったのか?」


 「ええ、少し問題が」


 答えたのはエミリア先生だ。


 「島を散策中に彼女達に会いまして。1度帰ってきました」


 「それで、連れてきたと」


 「そうじゃ、そしてこやつらが少し訳アリでの」


 「んで、その訳は?」


 「うむ、まあ、そう急がんでもいいじゃろ。とりあえずリタは椅子に座った方がよい」


 「てめぇがそう言うときは大概ろくでもない事だからな。まあ、椅子には座るが」


 小雪を睨みながら空いていた椅子に座る。


 「んで、その訳は?十中八九厄介事だろ?」


 「うむ、その通りじゃ。彼女達はどうやら国に追われているようでの」


 「んで、匿うために連れてきたと」


 「その通りじゃ」


 「人数は?」


 「47(しじゅしち)人じゃ」


 「赤穂浪士と同じ数か…」


 「リタ君?まさか見捨てるなんて…」


 「考えてませんよ。ただどう利用しようかは考えてますけど」


 「利用って…」


 「まあまあ、エミリア殿」


 「それから小雪。ちょっとこっち来て」


 ちょいちょいと指の動きをいれてこっちに呼ぶ。


 「ほいほいなんじゃ?」


 近くにしゃがんだ小雪に耳うちで話しかける。


 「(連れてきた中で男手は?)」


 「(18人じゃ。あと、彼女以外は全員がゴブリンじゃ)」


 小雪が少し背の高い方を顎でしゃくる。


 「(ゴブリンねぇ…)」


 「(あともう1つ報告じゃ)」


 「(なんだ?)」


 「(後で見てほしいものがある)」


 「(見てほしいものねぇ…)」


 「(どうじゃ?考えは纏まったか?)」


 「(まあいちよ)」


 「ではわしは向こうに戻る」


 最初の席に小雪が戻るのを見てから俺は口を開いた。


 「エミリア先生。最初に聞きます。全員の面倒を見きれるんですか?」


 「…全員、とは?」


 「彼女達47人全員のことです。貴女の事だから全員をまとめて面倒みようと思っているでしょう」


 「はい、そうですが?」


 「はっきり言います。恐らく今の状況では無理でしょう」


 「それは…」


 「そこで相談です。そこの彼女以外の全員の身柄、俺にくれませんか?」


 「は?」


 「ちょっと待ってください!」


 口を開いたのはずっと座っていた少女だった。


 「さっきから聞いてれば!あなたはいったいなんなの!目上の人に!失礼じゃない?あと、彼らは私の家族です!物みたいに言わないでください!それと、彼らと離れる気はありません!」


 「お嬢…」


 「「はぁ」」


 小雪と俺、同じタイミングでため息を吐く、これだから短絡的なバカは困る。


 「まあまあ、お嬢さん落ち着いて、別に別れさせるとか…」


 「うるさいわね!それに、私はあなたより年上です!もっと敬うべきじゃないの!」


 「はぁ」


 ため息を吐きながら指先で小雪に指示を出す。

 笑いを堪えながら少女を連れていく小雪を見ながら再びため息を吐く。てかあいつずっと文句垂れてたな。


 「…話を戻しましょう。あの少女以外の身柄、俺にください」


 改めて言うとエミリア先生は困った顔をしながら隣に座るゴブリンを見た。


 「…俺達は良いです。お嬢がエミリアさんの庇護下に置かれるなら安心です。どうぞ、売るなり何なりしてください」


 「あっ。別に売る気はありませんよ。ゴブリンいっぺんに団体で売っても店が困るだけで大して金にならないと思いますし。末長く商売してくなら従業員の確保は必須ですしね」


 そう言うと、ゴブリンはフードの奥で苦笑した気がした。


 「ずいぶん言いにくい事をずけずけと言えますね」


 「すいませんね。そう言う性分なんで」


 「…わかりました。俺達は貴方についていきます」


 「強引に誘っといて言いますが良いんですね?馬車馬の如くこき使いますが」


 「はい、それでお嬢が助かるなら」


 ちらっとエミリア先生を見る。


 「はぁ。…わかりました。本人がそう言っていますし、いいでしょう。ただ、これだけは約束してください」


 「なんですか?」


 「彼らに酷い事をしないでくださいね」


 「勿論。従業員の仕事効率を自分で下げる無能ではないので」


 そう啖呵を切ると、ゴブリンに向き合う。


 「自己紹介がまだだったな。リタだ。これからよろしく頼む」


 言いながら右手を差し出す。


 「ゴブタケです。よろしくお願いします」


 差し出した手を取り、握手をする。やっぱ握手は万国共通な訳な。たまに例外もあるけど。

 明けましておめでとうございますm(__)m

 いやー。年末年始は忙しくて1段と書くのが遅くなってしまいました。申し訳ありませんm(__)m。

 今年も私、朝時雨とその作品をお願いしますm(__)m。

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