月見酒と魔法
唐突なテンションの変化にご注意くださいm(__)m
小雪がやって来た。その日の夜。
「あの子とは随分いい雰囲気だったみたいじゃのう。どこまでいったんじゃ?のうのう、どこまでいったんじゃ?」
廊下での一部始終を見ていた小雪が茶化しながら根掘り葉掘り聞いてきて、ウザイ。
「だーかーら。どこまでもどころかこれっぽっちもいっとらんわい!いい加減、やめろ!」
ここは物置小屋。今夜は満月だったので月見酒をやろうと言う事になり、俺が抜け出してきたのだ。
ちなみに酒はまだ飲めないので、俺は小雪が買ってきた果実を使って果実水作り、ちまちま舐めている。
「つれないのう。しかし、これが日本酒だったら最高なんじゃが」
「無い物ねだりはしてもしょうがねぇだろ。この辺はワインとビールぐらいしか無いみたいだし」
「いっそのこと、作るのはどうじゃ?」
「米がねぇよ」
「東の方にはあると聞いたんじゃがのう」
項垂れる小雪。これ以上廊下での事を聞かれるのが嫌で、俺は話題を変えた。
「そう言や、ここはやっぱり異世界なんだよなー」
「そうじゃのう…、お主から見ればそうじゃのう。ワシは元居た世界に戻って来たと言う感覚が少しはあるんじゃが」
「ふーん」
コップに注いだ果実水が無くなったので、小雪に魔法で水を出してもらい、果実を搾って再度果実水を作る。
「…魔法って便利だな」
「確かにのう、しかし、誰もがほいほい使える物でも無いんじゃぞ」
「そうなのか?」
小雪はワインをボトルで一気に煽りながら話す。
「初級術式程度なら一部例外を除いて誰でも出来る。だがそれ以上、中級術式以上は得意属性と魔力が関係してくるのじゃ」
「この際だから座学だけでも教えて」
「わかったのじゃ」
そして小雪先生による星空教室が始まった。
この世界には魔法と言うものが存在する。種類は主に2つ。属性魔法と精霊魔法だ。
属性魔法はさらに通常属性魔法と特殊属性魔法の2つに部類出来る。
魔力を身体に宿す種族は、皆一様に1つは得意属性を持っているとか。稀に得意属性を複数持つ者もいるらしい。
魔法には難易度に応じてランクがつけられており、これは属性魔法、精霊魔法共に共通。
ランクは下から初級、中級、上級、最上級、伝説級、神級の6ランク。
初級レベルは得意属性関係なく魔力を持つ者なら誰でも使えるが、それ以上は得意属性と魔力、センスが重要とのこと。
得意属性はそのほとんどが通常属性で、稀に特殊属性が得意属性の者がいるとのこと。
通常属性は無、火、水、氷、風、土、雷の7属性があり、これら属性はお互いに相性がある。相性がいいと相乗効果をもたらすが、相性が悪いとお互いに打ち消し合う為、うまいこと組み合わせるのが重要。
特殊属性はその名の通り特殊な属性で光、闇、重力、生命、精神の5属性がある。
通常属性が得意属性の者が特殊属性の魔法を使おうとすると膨大な魔力が必要とされ、普通は使わない。
しかし、特殊属性が得意属性の場合は、逆に通常属性の魔法を使おうとすると膨大な魔力を必要とするらしい。
精霊魔法は精霊を通して行使される魔法で、かなり強力。しかし、精霊が見えないといけないと言う制約があり、精霊魔法を使える者は少ない。
精霊は産まれてから大体5歳までの間に見えるかどうかが決まる。そのメカニズムは判明しておらず、ある日突然見えるようになる者や、段々と見えてくるものなど様々だそうだ。
精霊魔法もいちおう属性があり、火、水、風土、雷の5属性がある。
魔力は魔法を使う際の燃料のような物で、幾ら優れた術式を組んでも、それ相応の魔力が注がれなければ魔法は発動しない。
逆に言えば術式と魔力があれば魔法は発動出来るのだ。
ちなみに魔力量は測定器のような物で測れるらしいが特にランクなどはない。
「ところで小雪の得意属性は何なんだ?」
「ワシか?ワシは光と闇、火と雷じゃな」
「…それってかなりチートじゃね?」
「ワシの場合出生が特殊じゃからな。通常属性も特殊属性も、同じぐらいの魔力で使えるのう」
ワインのボトルが空いたので新しく封を切りながら小雪は喋る。
「ワシの場合、おとうがおかあと酒に酔った勢いでヤってしまって出来たからのう、朝起きてかなり驚いたそうじゃ」
「…本当、酒って怖いね」
「ちなみにおとうの方はおじいもひいおじいもそうじゃ」
「お前の家族は揃いも揃ってだらしなさ過ぎだろ!じゃあお前が深酒して酔った時にすごいしつこく迫ってくるのは遺伝なの!?」
「そう言う事になるかの」
「マジかよ…。子供が親と同じ事をしてるのか…」
小雪の家族に呆れながら果実水を飲む。酒は飲んでも呑まれるなってのは本当なんだな。
「まあ、家族仲は良好じゃし、本人達はそれでいいんじゃろう」
ワインを一気に煽る小雪。
さっきの話を聞いてからだと飲んでる量が気になる。
「まあ、ワシら龍人族は早々子供はできないんじゃが、その時は危険日どんぴしゃだったらしく、子供が出来たそうじゃ。本人達はさらにそれで驚いたそうじゃが」
「そりゃあ驚くだろうね…」
ちなみに龍人族は龍の中でも高等クラス以上のドラゴンが人化している者を指す。
小雪はその中でも最高等にあたるエンシェントドラゴンの一族の1人らしい。魔法だけじゃなく種族もチートでした。お疲れさまでした。
「それよりこれからどうするのじゃ?」
「なにが?」
「7日後の返済はなんとかするにしてもそのあとじゃよ、残りの大金貨9枚と小金貨7枚。なにかあてでもあるのかの?」
「特にないんだよなー。これが」
俺は果実水を飲みながら、小雪はワインを煽りながら話し合う。
「あの世界での知識を使って物を売るのがいいと思うが、そうなるとそれなりの元手が必要だからなー」
「確かなのう…」
なかなか思い通りにはいかない。
「月が綺麗だな」
「ずっと綺麗じゃよ」
「…別に漱石的なあれじゃないぞ」
「わかってるのじゃよ」
夜も更けてきた。
ふと、横を見ると小雪が俺を手招きしている。
俺は小雪の膝の上に座ると、果実水を一気に飲み干した。
こんな駄文を続けて読んでいただき誠に、伏して、ありがとうございます。m(__)m
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