冒険者登録とランクアップ
約1ヶ月ぶりでございます!申し訳ありません。色々あって更新が滞っておりました。m(__)m
連続投稿いたしますので後書きはご容赦願います(;・ω・)
「あ、あああ…」
「いやー実にチョロい奴らだったな」
「どいつもひどく弱いのじゃ」
「まあ仕方ねぇだろ。全員ブートキャンプ行きだな」
「了解じゃ」
「すまんな時間がかかっ…。何があったんだ?」
訓練所に転がるゴブリン達、死屍累々とはこの事かな?
「ああ、すみませんベルントさん。ちょっと色々ありまして」
「見りゃわかるよ。はぁ。それじゃあそいつらは後回しだな。先に坊っちゃんと嬢ちゃんからか?」
「その方向でお願いします」
「んじゃこれに必要事項書いて。代筆は必要か?」
ベルントはそう言うと2枚の紙を出した。
羊皮紙か…。これ登録料で足りるのか?羊皮紙ってそこそこ高いだろ。
「いや、必要ない、と。なになに?」
氏名と年齢、得意属性と戦い方及び得意武器、それだけか、簡単だな。
一通り読み、訓練所の隅の机に向かう。
記入事項を書き終え、もう一度読んでからベルントに渡す。
「…記入漏れなし。んじゃ少し待ってろ」
ベルントは紙を持って訓練所を出る、少し待っていると2枚の小さい金属性の板と、2本の革の紐を持ってきた。
「こいつが“ドックタグ”。冒険者の証だ。後はこいつに自分の血を付ければ終わりだ」
「ドックタグ?」
「冒険者ギルドの創設者がそう言ってたそうだ。で、正式名称が無いから皆そう呼んでる」
確かに見た目はあっちの世界のドックタグだ。…いや、似せたのか?
「これに血を付ければいいんだな?」
「そうだ。ほい、ナイフ」
ベルントが細身のナイフを差し出してくる。見た目はまるっきりペーパーナイフだ。
「…リタ君、やって」
「わかった」
人差し指を軽く傷付ける。いいナイフだな。スパッと切れる。
「出来たよ」
「…ありがとう」
人差し指の血をタグに付ける。タグは血を付けたところからみるみる色が変わっていった。
「ふむ。艶消しの黒か」
「なんだ?なんか意味あるのか?これ」
「いや、特に意味は無い」
「無いのかよ」
ちなみにミアは白銀だった。
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気絶していたゴブリン達が徐々に目を覚まし、登録していく。
しかし全員が代筆か。こりゃ教育もいるな。
「ところでベルントさん。一気にランクアップする方法とかない?」
「あー。ねーこたねーがな…」
「おっ。どんなの?」
ベルントは少し考えるように頭を掻いた後、言いにくそうに口を開いた。
「…ランクアップの試験でこんなのがある。普通は功労を重ねてから対モンスター戦の試験を受けるんだが…。特別処置ってのがあってな」
「ほう、どんな?」
「1種の抜け道だ。ギルド職員の立ち会いのなかであるクラスの冒険者と戦って勝つとそいつと同じランクになる」
「あるクラスの冒険者って?」
「誰でもいい。それこそそこの美人さんとでもいい」
「あー。なるほど…。お貴族様用の抜け道か」
「そうだ。どうする?やるのか」
「やってやろうじゃないの。誰かいい冒険者居ない?」
「あー。まあ居ないわけじゃないんだが…。ちょっと問題があってな」
「ほう、どんな?」
「Aランクで腕は一流なんだが。なにぶん素行が悪くてな」
「Aクラス?なんでそんなやつがこの街に?」
「なんでも物にしたい女が居たとか。んで、ここまで追ってきたんだと」
「はー。でもそれだけならそこまで素行悪い訳でも無いんじゃないか?」
「女癖が悪すぎるんだ。それに自己中心的な考えで周り事を考えない。それに腕が立つ上に顔立ちが整ってるから余計始末が悪いんだ」
「なるほどねぇ…」
つ、ま、り、ランクをAまで一気に上げられる上にイケメンをぶちのめせるチャンスと言うわけですねぇ。
自然に口角が上がる。
「今からやれるが…。どうする?やるか?」
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しぐを刀型にし、軽く素振りをする。しばらくすると豪奢な胸当てを着けた長身の男が現れた。
「全く、この僕を呼びつけるだなんて…。いったいどう言う了見だい?ベルントさん」
「おお。すまんな。アルフレートさん。どうしてもあんたと戦いたいって奴が居たからな」
年頃は20代後半程、長身で鉄製の胸当てをしている。要所を鉄製のプレートで保護しつつ他は革製か。得物は腰から提げた片手直剣と手に持っている盾。バランス型かな?
「それで?僕と戦いたいっていう人は誰かな?」
「俺だよ」
男の声に答え、名乗りをあげる。すると言葉に反応して男がこっちを向いた。
「!!貴女は…」
「むっ?」
あり?なんか様子がおかしいような?
そう思っていたが男は大股でこちらに歩いてくる。
まるで他の者は眼中にないかのような態度で小雪に近づく。
「ついに追い付いた…。どれだけ貴女を探したことか…!」
「…ええっと。どっかでお会いしたことありましたっけ?」
「ははっ。冗談が上手いですね、この僕を忘れるなんて…。そんなことあるわけないじゃないですか」
うわっ。俺こう言うタイプ嫌い。すごく嫌い。どれくらいかって言うと中世の独が仏に抱いてたくらい嫌悪感が。
と、そんなことを考えている間も男のお喋りは続く。いい加減イラついてきたので小雪とアイコンタクトで会話をする。
「(コイツ知り合い?)」
「(いやー。だいぶ嫌な奴でな?どこ行ってもついてきてのう。しつこいんじゃ。しかもウザいしのう)」
「(ふーん。んじゃ…。小雪、今からそっち行くから足元まで行ったら俺を抱えて)」
「(それはよいが…。何を企んでおるのじゃ?)」
「(ちょっとねー)」
アイコンタクトを終え、小雪に近づいていく。
小雪の足元まで近づくと、抱っこをせがむ子供のように両手を伸ばす。
「はいはいお嬢ちゃん、お姉さんは僕と大事な話があるから、どっか行っててくれないかい?」
丁寧な言葉を使っているようだが嫌悪感が隠しきれてないぞ。
抱き抱えられながら小僧を見やり、ニヤリと笑う。
「小ー雪ー」
「なんじゃっんふっ!」
「なっ!」
不意討ちのディープキス。辺りは静まり返り、舌を絡ませ、唾液を貪り啜る音が鳴り響く。
「んっ……じゅる…んっんふっ………じゅるっ」
舌で口内を蹂躙しつつ、横目で男を見る。あーあー。顔真っ赤にして震えておるわ。
「ぷふぁっ。すいませんねぇ。彼女と俺はこう言う関係なんですわ。はるばる遠いところからいらっしゃったようですけど、残念でしたねぇ」
小雪の顎に指を這わせ、ニヤニヤしながら言う。4歳のガキが吠えるんだから傍目から見れば違和感しかないが…。
「ガキがぁ。僕の物に手を出した罪、償ってもらおうか」
柄に手を当て、今にも抜刀しそうな形相で静かに言う。
おーおー。怒ってる怒ってる。怒りで我を忘れておりますな。
「ちょっと!アルフレート!抑えて抑えて!」
「…すいません。少し冷静さを欠いてました。そう言えば何するんでしたっけ?」
目から怒りが消えてないよ~。アルフレート君。
「あんたと戦いたいって奴が居るからそいつと戦ってくれって事だ。相手はそこの子供」
「そこの子供でぇす」
「…子供には手を上げない主義なのですが…。本人が戦いたいと言っているならば仕方ないですね」
はい嘘~。嫌々やりますよ感出してるけどニヤケてるから。
「そんじゃ同意って事でいいな?言っとくがこれはあの子供のランク上げだ。ランク上げる為にお前さんと戦いたいんだと」
「なるほど。僕のような強者と戦えたとあれば箔がつきますからね。いいでしょう。やりましょう」
言うが早いか、アルフレートは訓練所の中心に歩きだす。
「しぐ。刀になれるけどサイズって変えれたっけ?」
「ある程度は変えれるで」
「それじゃ合口にはなれるのか?」
「なれるなれる」
「んじゃ合口使いたいから変化しといて」
「了ー解」
刀の形で壁に立て掛け放置していたしぐを拾い上げる。しばらくすると大太刀が発光し、白鞘の合口に変化した。
「これでええか?」
「あー。うんOK。それでいい」
視線を上げ、小雪を見る。
「出来れば一言欲しかったのじゃ」
「すまん。んじゃ、言ってくるわ」
横を見るとナターシャがミアの目を両手で覆っていた。
気遣いは出来るんだな。心のメモ帳にメモっておくか。
そんなことを考えながら訓練所の中心に歩いていく。見るとアルフレートがこちらを睨んでいた。
中心付近に立ち、自然体で立つ。
俺とアルフレートとの間にベルントが立った。審判でも務めるらしい。
「勝負は1本勝負。気絶、降服、またはこちらが続戦不可能と判断したらそいつの敗けだ。殺しは無し、得物は何でもありで魔法もありだ。何か質問は?」
「ありません」
言いつつ腰に提げた片手直剣を抜き、盾を構えるアルフレート。
「俺もないかな~」
左手に合口を持ち、自然体で立つ。
ベルントは俺とアルフレートを交互に見ると少し下がった。
「始め!」
掛け声と共に前方に走り出す。
合口を右手で逆手に抜きつつ相手の左側を走り抜け、アキレス腱を切り裂く。
右足でブレーキ。相手の上腕を切り裂き、背中を蹴り飛ばす。
「ぐあっ!き、貴様ぁ!」
「子供相手に貴様はないんじゃないかにゃ~」
合口を手の上で玩ぶ。
「“火炎よ、全てを焼き尽くす炎をもって壁をなせ”“火炎の壁”!!」
詠唱が終わり、アルフレートの前に火炎の壁が形成される。
「魔法かぁ。どうしようかねぇ」
「おいおいおい!やべぇんじゃねぇか!流石に!」
「魔法は習ってないからね~。よっと」
斜め上前方に跳躍。天井を三角の要領で蹴り、壁を越える。
見るとアルフレートは回復魔法をかけている様だ。
そのままアルフレートの後ろに着地。勢いを殺し、音を立てないように静かに着地するのがテイクダウンのコツだ。
「はいどーん」
「くばっ!」
背中を蹴り飛ばし、飛んでいくアルフレートを追いかける。術者が攻撃を受けると魔法が消えるのはナターシャ戦で学習済みだ。
追い付いたアルフレートの胸に肘鉄を食らわせる。
「ぐはっ!」
「おっとすまん。チェストプレートがひしゃげちまったな」
詫びをいれたあと四肢の筋を血管を傷つけないよう丁寧に切り裂く。
「あぐっ!ぐあぁぁぁ!」
「ベルント?もういいんじゃね?四肢切ったんだけど。あっ、喋れなくしないと魔法発動可能で続戦出来るか」
「待て待て待て!もういい!あんたの勝ちだよ!えげつねぇな…」
小雪達を見る。小雪は少し呆れたと言うような顔をしており、ミアはナターシャに両目を手で覆われていた。ゴブリン達は顔が若干青ざめている。
「全く、やり過ぎじゃよ」
「いやー。ちょっとムカついたから」
「態度にかの?」
「それもあるがお前を僕の物って言った所かな」
「ふふっ」
「おい!誰か!シャルロッテ呼んでこい!呼ぶの忘れてた」
少し喋っている間にアルフレートが壁際に運ばれる。
シャルロッテと呼ばれた女性がアルフレートの元に来るとベルントがこっちにやって来た。
「はぁ、まさかこれほどとわな。それにしても、少しやり過ぎだな」
「おっとすまぬ。ついな、やり過ぎちまった。俺もまだまだだな」
「はぁ、んじゃドックタグ出してくれ。ランク上げる手続きするからよ」