断崖の被造物
細波のような広い砂地を抜けると、忽然と断崖が姿を現す。
切立った崖の尖端には、不等四面体の被造物が天を目指している。長さの知れない時間が経つごとに、被造物はその高さを増していく。その過程には計り知れない労苦が注がれている。そして時折、風化した一部は崖下へと、轟音とともに落下していく。じつにゆっくりと、長い時間をかけて。
落下した尖塔じみた部分は、再び崖下より天を目指して伸び始める。
そしてまた、伸び落ちる。
伸び落ちた部分は独立して、再び高く伸び始める。
こうして植物のような成長を続けた被造物は、幾つもの建築部分が絡まり合ったまま、自己組織化を図る。ある人はその光景を見て、それを森だと言う。ある人は銀河。台風。結晶。蜂の巣。
そして、ある人は、物語である、と。