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創造の神の願いし世界


 空の海は割れたまま、そこに神代の学府エーベラストアンゼッタが浮かんでいる。


 月は見えぬ。

 にもかかわらず、白銀の月明かりが、芽宮神都を優しく照らしていた。


「ふむ。この日――というのは、エンネスオーネが生まれる日のことか?」


 俺の言葉に、こくりとミーシャはうなずく。


「わたしが世界を創ってから、七億年が経った」


 静謐な声で彼女は言う。


「ずっと、この世界を見守ってきた。アベルニユーと二人で。破壊し、創造され、世界の命は循環する。争いの絶えない日々の中、根源はめくるめく輪廻した。悲劇の星の下に生まれた命も、いつかは幸せをつかめるしれない。最初はそんな風に思った」


「間違っているとは思えぬ。俺の父も、今はそばで平和に暮らしている」


 ミーシャは悲しげな顔で微笑む。


「それは一つの事実。けれど、すべてにおいてそうではなかった」


 淡々とした声は、静かに、そして重たく響き渡る。


「根源は輪廻し、命は循環する。だけど、それが永久ではないことに、わたしは気がついた。滅びに近づく毎に、強く輝くはずの根源。たとえ今世が悲しみに満ちていても、来世がより喜びに輝くなら、幸せと不幸せの整合はとれている」


 まっすぐ俺の目を見つめ、ミーシャは語った。


「悲しみで終わらないなら……。幾度となく繰り返し、来世に希望をつないでいくなら、まだこの世界に救いはあった」


 一旦、口を噤み、ミーシャは俯く。

 そうして、身を切るような声を彼女は発したのだ。


「この世界の潜在的な魔力総量は、常に減り続けている」


 ふむ。総量、か。


「魔族や人間、魔法具や魔剣、聖剣など、魔力を有するすべてのものの力を合算した値がか?」


 ミーシャは静かにうなずいた。


「魔力は完全には循環しない。輪廻を続ける命のうち、いくつかはこぼれ落ち、やがて消えてなくなる」


 世界の魔力総量が減り続けているのなら、輪廻や転生ができぬ命があると考えるのは妥当だ。


 俺の父、セリス・ヴォルディゴードのように魔力を失うこともあろう。

 そうして、失う魔力すらなくなれば、いずれ根源そのものが消えることになる。


「アノス」


 悲しげに、彼女は俺の名を呼んだ。


「世界は、優しくなんかない。この世界は少しずつ人々の幸せを奪っている」


 それが自身の罪だとでもいうように、彼女は告白した。


「それが秩序」


「覆してやればいい」


 そう口にすれば、彼女は僅かに微笑む。


「アノスらしい」


 その言葉はミリティアのものではなく、ミーシャが言っているようだった。


「世界が平和になるように、世界から悲しみが減るように、あなたは破壊神の秩序を奪った。魔王城デルゾゲードがミッドヘイズに建ち、あらゆるものは滅びから遠ざかった。だけど、いくつかの問題が残された」


「その一つが、選定審判か?」


「そう。破壊神の秩序が消え去り、世界は創造に傾いた。秩序の整合を保つため、選定審判が開かれ、神と人を巻き込んだ争いが繰り返される」


 ミリティアはアルカナの選定神となり、地底で起きた選定審判を戦った。


「その他には?」


「あなたが忘れてしまった記憶にあること。創造神と破壊神は秩序の表と裏、背表背裏の姉妹神。わたしたちの根源は二つで一つ、一つで二つ。二神一体の秩序」


 確か、サーシャが思い出した記憶で、なんらかの問題を先送りにしたと言っていたのだったな。

 それが、これか?


「つまり、こういうことか。破壊神の秩序を失えば、創造神であるお前も長くは生きられなかった」


 ミーシャはうなずく。


 破壊神をデルゾゲードとしたことで、背表背裏の姉妹神であるミリティアは、裏の秩序を失い、その寿命が限られてしまったのだ。


「アベルニユーも同じ。その根源は神族のもの。魔族に転生しても、秩序のつながりが完全に切れたわけじゃない」


「破壊神をデルゾゲードにしたままでは、創造神が滅ぶ。創造神が滅べば、やがて、サーシャも消えるということか?」


「……そう」


「無策だったわけではあるまい?」


 うなずき、ミーシャは答えた。


「わたしは選定審判を止めるため、創造神の秩序を手放した。あなたが使った魔法と同じように、その神体を神代の学府エーベラストアンゼッタに変えた。整合神エルロラリエロムの秩序ごと」


 そうすれば、創造神と整合神、二つの秩序が同時に消える。


 創造と破壊のバランスは保たれ、整合の秩序が著しく弱くなることから、選定審判やそれに類する秩序は、働かなくなるだろう。


「わたしの根源は、アベルニユーの根源の裏であり表。彼女が転生途中だったから、わたしは一緒に転生することができた」


「いつか見た夢では、妹に自らのぜんぶを譲ったと言っていたな?」


 ミーシャはうなずく。


「秩序と切り離された神は、長く生きられない。だけど、破壊神と創造神のつながりを断ち、完全に魔族に転生できれば、アベルニユーは生きていける。二つの秩序はデルゾゲードとエーベラストアンゼッタになった。微かに残ったつながりは、わたしたちが一人で二人だということ」


「完全に一人になれば、破壊神とのつながりを断ち、サーシャを普通の魔族として転生させることが可能だったわけだ」


「それで彼女はこの世に残り、わたしの最後の願いが叶うはずだった」


 叶わなかった理由は、明白だ。

 ミリティアの邪魔をした者がいる。


「グラハムか」


「そう。彼はアルカナと万雷剣ガウドゲィモン、そして狂乱神アガンゾンの力にて、わたしを貶めようとした。この願いは叶わず、わたしは望まない形で転生した」


「お前の根源はサーシャと一つになったが、消える予定の意識が残った」


 ミーシャがうなずく。


「一つの根源に、二つの意識という歪な形でわたしたちは生まれるはずだった」


 簡単に言えば、カイヒラムとジステのような状態になっていたのだろう。


「それが偶然<分離融合転生ディノ・ジクセス>にて、二人に分けられた、か」


 しかし、グラハムがなにをしたかったのかわからぬな。

 あの男のことだ。ただの嫌がらせとも取れるが、本当にそれだけか?


「偶然。けれども、運命だったのかもしれない」


「……ふむ。というと、レイがなにか?」


「彼は霊神人剣に選ばれた勇者。宿命を断ちきるその聖剣が、知らずとも彼の想いに応えていたのかもしれない」


 <分離融合転生ディノ・ジクセス>にて存在しないはずのミーシャを生み、不幸を作りだしてしまった勇者カノン――しかし、その実、彼女たちを救っていたか。


 エヴァンスマナは、その当時、レイの手元になかったはずだがな。

 それでも、俺がミーシャとサーシャを救うお膳立てをしていたのであれば、なんとも凄まじい力を持っている。


 とはいえ、そもそも、俺を滅ぼせる聖剣だ。

 人の名工が鍛え、精霊が宿り、神が祝福したというが、その三名とも、何者か知れぬ。


 得体の知れぬ力を有していても、不思議はないか。


 もしも、転生後に俺が出会ったサーシャとミーシャが、一つの根源に二つの意識という状態だったならば、少なくとも過去を変えて救う必要はないと判断したはずだ。


「二人に分けられたわたしたちは、破壊神と創造神のつながりが弱くなっていた。<創造の月>と<破滅の太陽>は、同時に空には昇らないものだから」


 彼女たちは、限りなく魔族に近い神だった。


「二人で一人のままだったならば、破壊神と創造神のつながりは強いまま、秩序から切り離されたお前たちは滅んでいたと?」


「そう。偶然というにはとても運がよすぎた。わたしたちは、勇者の力で、一五年の猶予を得た」


 確かに、なんらかの力が働いたと考えた方が自然だろう。

 なんとも数奇な巡り合わせだ。


「そうして、一五年後、あなたがやってきた」


 <分離融合転生ディノ・ジクセス>が完了し、一人に戻っていれば、やはり二人には死の運命が待ち受けるはずだった。


 それを、知らぬまま俺が救った。


「わたしは、またちょっとだけ生きられることになった」


 穏やかな表情でミーシャは言った。

 

「アノスがいて、サーシャがいて、わたしがいる」


 まるで、これから滅ぶと言わんばかりに。


「それは、わたしたちが見た泡沫うたかたの夢だった」


 白銀の光がミーシャの体に降り注ぎ、彼女はふわりと浮き上がる。


「転生して、魔族になって、二人になっても、神は神で、秩序は秩序。秩序を失った神は、長く生きられない。けれど」


 ミーシャは優しく微笑んだ。


「あなたはわたしにいくつもの奇跡をくれた。世界を壁で隔て、平和を見せてくれた。<破滅の太陽>を落とし、神の恋を見せてくれた。アベルニユーが魔族へ転生するところを見せてくれた」


 高く、高く、神代の学府に引き寄せられるように、ミーシャは空へ上っていく。


「ずっと世界を見守り続けてきたわたしが、見たことがないものばかり」


 彼女はエーベラストアンゼッタを背にした。


「世界は信じられないほど平和になった。アノス。最後の奇跡はわたしが。この世界を優しく創り変える」


 彼女を見上げ、俺は問うた。


「どうするつもりだ?」


「世界とわたし、どちらが先に生まれたかわかる?」


 わからぬ、と視線を送れば、ミーシャは言った。


「世界が先。わたしの前にも創造神がいた。古い世界が限界に達すると、創造神は滅ぶ。そのとき、滅びに近づいた根源が最後の創造を行う。次の創造神を生み出し、その新しい秩序が新たな世界を創る」


 エーベラストアンゼッタが白銀の光に包まれ、輝いていた。


「なるほど。魔力の総量が減り続けた果てに、その代の創造神が世界を創り変えるわけか」


「けれど、創造神はわたしで最後。繰り返すだけの世界の秩序に、わたしは抗うから」


 瞬きを一度、神代の学府の光が奪われ、ミーシャの瞳が白銀に染まった。

 創造神たる彼女本来の力が、そこに注ぎ込まれているのだ。


「戦い方は、あなたが教えてくれた」


 二度目の瞬きで、ミーシャの瞳が<創造の月>アーティエルトノアと化す。

 その視線が、神代の学府エーベラストアンゼッタに向けられると、城の立体魔法陣が起動した。


 雪月花を舞い散らせながら、エーベラストアンゼッタは<創造の月>に変化する。


 だが、平素とは違う。

 その月には僅かに影が射していた。


 月蝕だ。


「滅びのとき、わたしの月は欠けていく。アーティエルトノアの皆既月蝕。それが、<源創げんそうの月蝕>と呼ばれる、最後の創造。創世の光が、この世界を創り変える」


 決意を込めて、彼女は言った。


「神様のいない、優しい世界に」


「この世界から、すべての秩序を奪うか?」


 ミーシャはうなずく。


「なにもかもが定められた冷たい秩序は消えて、世界はあやふやで曖昧なものに変わる。先の見えない時代が訪れ、未知と不安が蔓延る。けれども、その熱い混沌を、きっと人は希望と呼ぶのだろう。それに――」


 まっすぐミーシャは俺に言葉を投げた。


「その世界にはあなたがいる。世界が創り変えられた後、新たな世界の人々をあなたの魔法で生んであげて。<根源降誕エンネスオーネ>によって生まれた人々は、神の秩序に囚われない。魔力の総量が減り続けることはなくなり、どんなに絶望の淵に突き落とされても、いつもどこかに希望が残る」


 神によって支えられたこの世界の秩序は、絶えず命を削り続ける。


 ゆえに、ミリティアはエンネスオーネを創造しようとした。

 消えゆく神の代わりに、秩序の枠から外れた不適合者、俺の魔法が生命を生み出す、新たな世界を創るために。


「秩序が消えれば、神は資格を剥奪され、彼女らも一個の新たな命として生きる。秩序のお仕着せに悲しむ神はもういなくなる。アベルニユーのように」


「ふむ。なかなかどうして、今の世界よりは良さそうだ」


「えっと……ちょっと待って……急展開すぎて頭がついていかないぞ……」


 エレオノールが言い、うーんと深く考え込む。


「……新しい世界は、良さそうな気がするんだけど……今の話からすると、世界を創り変えるために、ミーシャちゃんは滅んじゃうんじゃない……?」


「なに、滅びなら克服すればよい。手を貸してやろう」


 微笑み、ミーシャは静かに首を振った。


「わたしが滅ぶことはない。わたしは、この世界に生まれ変わるから」


「え……?」


 エレオノールの顔が驚きに染まる。


「ミーシャ……世界に……変わりますか……?」


 ゼシアが心配そうな表情でそう質問した。


「そう」


「また……会えますか……?」


 ほんの少し悲しげに、けれども彼女は笑った。


「いつでも会える。わたしは、みんなを見守り続ける。この世界になって、みんなを優しく守り続ける。ただわたしという意識が消えて、話ができないだけ」


「だめだよ、ミリティアッ!」


 エンネスオーネが声を上げる。


「だめだよ……そんなの……だって、それじゃ、みんなの中に、ミリティアが入ってない……」


 困ったように微笑み、ミーシャは首を左右に振った。


「あなたは神とは違う、新しい世界のための魔王の秩序。だから、優しい。あなたの人のような優しさが、わたしはとても嬉しい」


 幼子を説得するように、柔らかくミーシャは言った。


「役割が違うだけ」


 エンネスオーネは泣き出しそうな顔をした。

 彼女はミリティアを止めたかったのだろう。


 それゆえ、朧気な記憶、微かな想いが、こうしてここに俺を呼んだのだ。 


「わたしは、ずっと見てきた。世界が生まれて七億年、ずっと見守り続けてきた。ずっと、ずっと、これがわたしの願いだった。世界を創るのではなく、この世界になれたら、そうしたら、もっと近くで、みんなを優しく見守り続けることができる」


 彼女が両手を掲げると、<創造の月>アーティエルトノアが欠けていく。

 月蝕が進んでいるのだ。


「アノス、エレオノール、ゼシア、エンネスオーネ、ウェンゼル」


 にっこりと笑い、少女は言った。


「ごめんなさい。ありがとう。楽しかった」


 <創造の月>の皆既月蝕がみるみる進み、その白銀の光は赤みを帯びる。


「アベルニユーによろしく」


「別れの挨拶ぐらい、自分で言えばいい」


 ほんの少し困った顔をして、ミーシャはゆっくりと首を左右に振った。


「きっと怒られる」


 アーティエルトノアが完全に欠け、皆既月蝕が訪れる。

 芽宮神都を、その月が仄かな赤銀しゃくぎんの光で照らし出した。


「さようなら」


 瞬きを二回、ミーシャの瞳の月が、赤銀に変わる――


「――さようなら、じゃ」


 <創造の月>が揺れ、赤銀の光が僅かに弱まる。

 強烈な視線の魔力が、アーティエルトノアに叩きつけられていた。


「ないでしょうがっ! 馬鹿なのっ!!」


 地上から瞳に魔法陣を浮かべ、ミーシャに向かって突撃する人影があった。

 誰かなどと見なくともとっくに承知している。


 その少女は、さっきまでそこで倒れていたサーシャだ。


「くははっ。残念だったな、ミリティア。怒られてしまったぞ」


「くはは、じゃなくて、なに黙って聞いてるのよ。さっさと止めなさいっ。エレオノールも、ゼシアも、こんな馬鹿な話、ありえないでしょうがっ!!」


 犬歯を剥き出しにして、<創造の月>を睨みながら、サーシャは俺たちに言葉を叩きつける。


「やれやれ。すまぬな、ミリティア。ともに平和を目指した同志の願い、無碍にはできぬが、いやいや、俺の配下がうるさくてかなわぬ」


 俺は空へ飛び上がると、上空へ巨大な魔法陣を描く。


「<魔王城召喚デルゾゲード>」


 巨大な城の影が揺らめき、それが反転するように魔王城デルゾゲードへと変わる。

 

 創造神ミリティアのアーティエルトノアは生半可な力では止められぬ。

 ゆえに、同等の力をぶつける。


「まあ、そう結論を急くな。まだまだ積もる話もあるだろう」


 デルゾゲードを<創造の月>に突っ込ませる。

 魔王城から立ち上る黒き粒子と赤銀の光が鬩ぎ合い、火花が激しく渦を巻いた。


 ド、ド、ド、ガ、ガガガァァンッと魔王城は外壁を半壊させながらも、<創造の月>へめり込んだ。

 すると、月蝕が止まり、その月が神代の学府エーベラストアンゼッタへと戻っていく。


 そのまま勢いよく魔王城にて押し込み、<創造の月>の力を封じた。


 その隙にサーシャは更に上昇する。

 自らを引き止めようと向かってくる妹を、ミーシャは優しく見つめた。


「ごめんなさい、アベルニユー。わたしは、優しい世界を残してあげたかった」


「おあいにくさま。いい、ミリティア。あなたのいない世界が、どんなに優しくても、どれだけ平和でも」


 上昇するサーシャは、空に佇むミーシャに手を伸ばす。


「絶対、笑ってなんかいないっ! そんな世界、わたしはこれっぽっちも欲しくないわっ!」



優しい世界になりたかったミリティア、三人で笑いたかったアベルニユー。

すれ違う姉妹の運命は――



【祝! 本日(7月10日)発売! カウントダウン寸劇】



ゼシア    「<魔王学院の不適合者アンヴィ・リ・ヴァーヴォ>二巻……発売……です……!」


エレオノール 「…………」


ゼシア    「どうして……目を……逸らしますか?」


エレオノール 「べ、別になんでもないぞっ。

        さあ、今日はゼシアの好物のアップルパイだっ!」


ゼシア    「怪しい……です……」


エレオノール 「ほら、ジュースもあるぞっ。おいしいぞー」


ゼシア    「ゼシアは一巻で活躍できなかった分……二巻は大活躍……します……!」


エレオノール 「あー……ねえ、サーシャちゃん。どうなのかな?」


サーシャ   「やっとエミリア先生を慰めて連れて帰ってきたのに、また無茶ぶりっ!?」


ゼシア    「サーシャはいつも……絵が……あります……表紙……です。

        ゼシアはまだ……ゼロです……」


サーシャ   「えっとね、それは……」


アルカナ   「問題ないと思う。ゼシアは少なくとも三巻から登場するのだろう。

        わたしは出ない。当分出ない」


サーシャ   「アルカナ……なんか、久しぶりだわ……」


アルカナ   「本編でも最近、一話も出ていないと言いたいのだろう。

        それは事実」


サーシャ   「……もしかして、落ち込んでる?」


アルカナ   「わたしは代行者。神に近く、感情に乏しい。

        けれども、一章丸々登場しないことにより出来たこの胸の空洞を、

        もしかしたら、落ち込んでいるというのかもしれない」


ミーシャ   「よしよし」


アルカナ   「仲間を連れてきた」


ナフタ    「ナフタの予言を授けます。

        ゼシアにはこの先、大活躍の未来が訪れるでしょう」


ゼシア    「本当……ですか……?」


ナフタ    「ナフタの予言は外れません」


サーシャ   「……あれ? 今のナフタって、あんまり未来が見えないんじゃ……」


エレオノール 「しー、しーだぞ、サーシャちゃんっ」


ディードリッヒ「はー、しかし、魔王の応援歌か。まだこんな隠し球があったとはな。

        こいつはたまらんぜ。なあ、魔王や」


アノス    「くはは。気に入ったか?」


ディードリッヒ「おうよ。ここは一つ、買い占めてアガハへ持って帰らねばなるまいて」


アノス    「ふむ。ならば、皆で書店へ繰り出すとするか」


ディードリッヒ「おうとも。あー、しかし、魔王や。

        ちいとばかし、気になるんだがな」


アノス    「どうした?」


ディードリッヒ「この絵。お前さん、なんで脱いでるんだ?」


アノス    「なに、俺の配下が褒美をねだるものでな」


サーシャ   「な、なに言ってるのよっ! ちがっ、これは、違うんだからっ! 誤解だわっ!」


エミリア   「サーシャさん、いいじゃありませんか。楽になってしまいましょうよ。

        わたしと一緒に」


サーシャ   「ちっ、違うんだからあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」


ミーシャ   「速い……」


アノス    「くはは。そう急がずとも、本は逃げぬぞ、サーシャ」



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― 新着の感想 ―
[良い点] とても複雑でよく考えられてると思いました。もう何度も読み返してしまいました。 [気になる点] ミリティアの計画がいまいちわからないんですけど、結局目的はなんだったんですかね?世界を創り変え…
[気になる点] いつかは幸せをつかめるしれない        ↓ いつかは幸せをつかめるかもしれない じゃないですか?
感想一覧
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