破壊の空
神話の時代――
それはある日の尊き戦い。
魔族の兵たちが、支配されていたディルヘイドの空を取り戻そうと、犠牲を省みず、決死の覚悟で太陽を目指したときのこと。
青き空は、破壊の暗雲に覆われていた。
「<獄炎殲滅砲>掃射準備」
魔族の兵の声が響く。
「了解。魔法陣展開。第一門から第一〇門展開完了」
「第一一門から第二〇門展開完了」
「第二一門から第三〇門、並びに第一〇〇門までの砲門展開完了!」
地上より遙か彼方、大空を駆けるのは、<創造建築>の魔法にて創られた飛空城艦ゼリドヘヴヌス――
希代の創造魔法の使い手、創術家ファリス・ノインが一〇〇年の歳月をかけて完成させた巨大要塞である。
その城の前に、次々と魔法陣の砲門が展開されていた。
「第二陣、来ますっ!」
警告の声に数瞬遅れ、ぬっと闇色の影が姿を現す。
飛空城艦ゼリドヘヴヌスを取り囲むように、翼を持つ天使の影が無数に浮かび上がった。
破壊の番神エグズ・ド・ラファン。
破壊の秩序を守護する神だが、これほど多くの個体が同時に地上へ現れることは珍しい。
理由は二つ。
この空は、神界の入り口に最も近いこと。
もう一つは、ファリスが駆る飛空城艦ゼリドヘヴヌスには、暴虐の魔王が乗っている。
その船は、この世で最も大きな滅びの秩序、破壊神アベルニユーへと近づいていた。
「秩序ヲ乱ス事ハ、許サヌ」
影の天使たちが、翼を広げる。
「<神破爆砕>」
ゆらゆらと影の陽炎が立ちこめる。
けたたましい音が鳴り響き、飛空城艦ゼリドヘヴヌスの上部が砕け散った。
備えられた自動修復魔法にてすぐさま復元されるも、破壊の番神による<神破爆砕>は次々と牙を剥き、ゼリドヘヴヌスを砕いていく。
激しい爆音が空に響き渡り、地上までも揺るがすほどであった。
「ぐ、ぐおおおおぉぉぉっ……!」
「た、隊長、これ以上の被弾はっ……!」
<神破爆砕>の集中砲火により、魔族の精鋭たちもたまらず、悲鳴を上げる。
しかし、操舵室にて舵を握る男は、どこ吹く風で言った。
「美しい。さすがは破壊の神々といったところでしょうか。我が魂を込めた傑作、飛空城艦ゼリドヘヴヌスをこうまで美麗に砕くとは」
魔眼を光らせ、ファリスは言う。
「洗練されたものはかくも美しい。秩序の番神ともなれば、最早、そこに存在するだけで鮮やかかな。しかし――」
希代の創術家は、上品な笑みを見せた。
「その美麗なる秩序、あえて破壊してこそ描ける絵があるというもの。ゼリドヘヴヌスは、我が生涯最高の作品。神秘に満ちた自然の美――神にさえ引けを取るものではありません」
<神破爆砕>の被弾を続け、魔法による修復が追いつかなくなり、ボロボロと飛空城艦は崩れ落ちていく。
だが、それでも力強く、ゼリドヘヴヌスは飛ぶ。
装甲という重りを捨て去ることで、ぐんぐん加速していった。
「さあ、舞い上がりなさい、ゼリドヘヴヌス。この空の彼方へと」
「りょ、了解。おめえらっ、隊長のお墨付きだ。飛ばせぇぇっ」
「「「おうりゃああああああああああぁぁぁぁっ!!」」」
ファリスの<魔王軍>により、集団魔法を行使する魔族たちは、神々への反撃は行わず、<飛行>にてゼリドヘヴヌスの速力を更に上げる。
あたかも光の矢の如く、飛空城艦は空を駆け、包囲していた影の天使たちを瞬く間に置き去りにした。
「第三陣、第四陣を突破っ!」
「も、目標補足っ! 視認可能空域に入りますっ!」
魔族の一人が声を上げる。
ゼリドヘヴヌスの進行方向に、禍々しくも巨大な太陽の影が見えた。
「前方、距離八〇〇〇。<破滅の太陽>サージエルドナーヴェですっ!」
「……美しい……」
ファリスが感嘆したように呟く。
途端に真っ黒だったその太陽の影が、一段と濃く、禍々しい闇にて空を彩り始めた。
「サージエルドナーヴェの変異を確認。完全顕現まで、およそ三分と予想されます」
「さあ、いよいよフィナーレです。黒陽照射までに零距離へ接近。美しく飛べ、ゼリドヘヴヌス」
「了解っ!!」
強大な魔力を発する<破滅の太陽>へ向かい、ゼリドヘヴヌスは突撃した。
「第五陣、来ますっ!」
前方に立ち塞がったのは、またしても影の天使、破壊の番神エグズ・ド・ラファンたちだ。
「「「行カサヌ」」」
不気味な声とともに、その空域に影の陽炎が揺らめいた。
一斉に展開された<神破爆砕>が<破滅の太陽>への行く手を遮るように壁を作る。
それは、破壊に満ちた結界だ。
「描きなさい。我らが炎の美、神々へと見せて差し上げましょう」
「了解っ! <獄炎殲滅砲>一斉掃射っ!」
描かれた一〇〇門の砲門から、ぬっと漆黒の太陽が姿を現す。
「美しき炎の調べを」
「放てぇぇぇぇーっっっ!!!」
<神破爆砕>の結界へ向け、<獄炎殲滅砲>が一斉に掃射される。
漆黒の太陽が、陽炎の結界に衝突し、次々と爆砕していく。
空は黒き炎に染まった。
「そうら、道ができましたよ。苛烈に燃ゆる、あの太陽への掛け橋が」
「まさか、隊長、あそこへ?」
部下の一人がごくりと息を飲む。
ファリスは美麗な笑みを覗かせた。
「美しくあれ」
「りょ、了解っ! 聞いたか、野郎共っ! <獄炎殲滅砲>が爆砕している場所は、<神破爆砕>の影響は最小限。掃射を続け、突っ込めぇぇぇっ!!」
ぐんとゼリドヘヴヌスが加速し、同時に<獄炎殲滅砲>を掃射する。
<神破爆砕>の結界の中で、次々と爆砕していく<獄炎殲滅砲>は彼らに一本の道を作る。それは、ファリスの言う通り、さながら炎の掛け橋だった。
その黒く燃え上がる炎の真っ直中へ、飛空城艦ゼリドヘヴヌスは突っ込んでいく。
<神破爆砕>は、<獄炎殲滅砲>に阻まれるといえども、黒き炎はゼリドヘヴヌスを直接焼く。
すでに半壊していた飛空城艦が炎に包まれ、ますます崩壊の一途を辿った。
「渡れ。破壊の空にかけられた、険しき炎の道を。いと美しく!」
炎に身を焼かれながらも、飛空城艦は空を駆ける。
黒く輝く影の太陽へとみるみる押し迫り、あと僅かで艦体が届く――
しかし、その直後、ゼリドヘヴヌスは突如減速した。
「これは……!? まさか……!?」
「さ、サージエルドナーヴェの黒陽ですっ!」
「馬鹿なっ! まだ完全顕現前だぞっ!」
ファリスは、その魔眼にて、影の太陽を見つめる。
「……どうやら、サージエルドナーヴェに近づけば、完全顕現前とて、破滅の光の影響を受けるようですね……」
ドゴゴゴォォンッとけたたましい音が響き渡り、飛空城艦が激しく揺れた。
いつのまにか、黒陽を纏った破壊の番神エグズ・ド・ラファンが、飛空城艦を包囲している。
影の天使たちは、神弓に矢をつがえた。
黒陽を鏃としたその矢が一斉に放たれると、飛空城艦ゼリドヘヴヌスの堅固な反魔法を容易く突破し、艦体に無数の穴を穿つ。
「しゅ、修復が効きませんっ!」
「なんと鮮やかかな。サージエルドナーヴェの黒陽の下、破壊の番神はその美しさを増すといったところでしょうか。これこそ、自然の美」
ファリスがそう状況を分析する。
飛空城艦に雨あられとばかりに、黒陽の矢が降り注いでは突き刺さり、これ以上は進むどころか、今にも墜落しそうだった。
「「「ぐ、ぐあああああああああああああぁぁぁぁっ……!!」」」
「じょ、城艦下部大破っ! 落とされましたっ!」
「たっ、隊長っ! さすがにこれ以上は……!!」
「このままでは、無駄死にですっ! 一度、退却を……!!」
集団魔法により<飛行>で魔力を叩き込んでも、最早、ゼリドヘヴヌスの墜落をかろうじて防ぐのが精一杯だった。
その艦体は今にも跡形もなく破壊され、空に散ろうとしている。
「ふむ。ご苦労だったな、ファリス」
飛空城艦ゼリドヘヴヌスの操舵室に、声が響く。
神へと挑む精強な魔族たちすら畏怖を覚えるその言葉は、混乱していた操舵室に静寂すらもたらした。
彼らの後方、玉座に座っているその男は、暴虐の魔王アノス・ヴォルディゴード。
傍らには、その右腕シン・レグリアが跪いていた。
「誇るがよい。お前たちは十分に役目を果たした」
アノスが立ち上がれば、その後ろにシンが付き従う。
だが、彼の歩みを阻むように、ファリスが立ちはだかった。
「魔王陛下ともあろう御方が、我に筆を途中で止めろと仰せで?」
その進言に、シンが視線を険しくする。
「陛下は、あの<破滅の太陽>まで御身を運ぶように仰せられました。サージエルドナーヴェの中心にいる破壊神を堕とすため、その魔力を温存する必要がありましょう」
「口が過ぎますよ、ファリス。我が君の恩情、受けられぬというのなら、その首をここで落とすまで」
鋭い殺気を放つシンを、アノスは手で制する。
魔王の視線を、ファリスは真っ向から受け止めた。
「死ぬつもりか?」
「お言葉ながら、陛下。元よりこの戦乱の世に、私のような創術家に生きる道などありません。空に描く炎ではなく、海に浮かべた氷像ではなく、戦争のための城艦ではなく、一枚のキャンパスにただ絵の具を走らせたかった」
ファリスは手に一本の筆を持ち、魔力を込めた。
「陛下の目指す美しい平和こそが、私の唯一生きる道」
黒陽の矢を受けて、ゼリドヘヴヌスが激しく揺れる。
「動力部に被弾っ! 固定魔法陣損壊率六八パーセントっ! もうもちませんっ!」
絶叫が上がった。
「ゼリドヘヴヌスをこの空域へ上げるために、多くの魔族の兵が、あの黒陽に焼かれていきました。すべては陛下を、万全の御姿で破壊神のもとへ辿り着かせるため」
ファリスは、柔らかい表情で言った。
「争いは終わるのでしょう? 破壊神を堕とした後に、平和な世が訪れるのでしょう?」
「二言はない」
創術家は笑った。
「お座りください。そして、どうか命じてくださいますよう。この破壊の空に、平和の絵を描くように」
シンは踵を返し、背中を見せる。
魔王は再び玉座に座った。
「連れていけ、ファリス。お前の船は、ディルヘイド一美しく空を駆ける」
「とくとご覧に入れましょう」
魔筆を振るい、ファリスは魔法陣を描く。
「美しき、魔王の兵よ。我らの目的はなにか?」
ファリスの問いに、一人の魔族が答えた。
「我が君を……あの<破滅の太陽>までお連れすること……!」
「我らが同胞は、この戦乱の最中、人間や精霊、神々の手によって、死に絶え、滅び、消滅した。すべての元凶、滅びの秩序は、あの空に輝く不吉な太陽、サージエルドナーヴェにある」
部下を鼓舞するように、ファリスは言った。
「ならば、なにを恐れる必要がありましょうか。あれを堕とせば、あのとき救えなかった者たちの命を、今度は救うことができる。あの悲惨な別れを、我らが愛する子孫たちが、繰り返すことはないのです」
その声に、操舵室にいた全員が腹をくくる。
「美しき魔王陛下が命ぜられた。御身をあそこまで運べと。ならば、その絵が我らに描けぬわけがないでしょうっ!」
「然りっ!」
「我らが魔族の悲願のためにっ!」
「美しき平和のためにっ!」
「行くぞぉぉぉぉぉぉっ、振り絞れぇぇぇぇっ!!!」
飛空城艦ゼリドヘヴヌスが巨大な魔法陣に包まれる。
「<創造芸術建築>」
ゼリドヘヴヌスが、巨大な翼を広げた。
集団魔法による<創造芸術建築>により、その城艦の姿を新しく創造したのである。
変わらず、影の天使たちから、黒陽の矢が放たれる。
それは悉く飛空城艦に直撃し、滅ぼしていくが、みるみる内にゼリドヘヴヌスは修復する。
否、新しく創っているのだ。
黒陽の矢で滅ぼされた城艦は直すことができない。
ゆえに、攻撃を受ける度に、ファリスは新たな城艦の形を創りだし、そこに生み出している。
戦乱の世に、それでも芸術家を夢見たファリス・ノインならでのは創造魔法であった。
「さっ、サージエルドナーヴェ、まもなく完全顕現しますっ!」
「番神どもが、前方の進路を塞ぎっ……! 迂回が間に合いませんっ!」
ファリスは言った。
「美しくあれ」
「りょ、了解っ! 突撃ぃぃぃぃぃっっっ!!!」
前方を塞ぐ影の天使たちに、構わずゼリドヘヴヌスは突っ込んだ。
破壊の番神エグズ・ド・ラファンを蹴散らすとともに、その秩序の影響をもろに受け、<創造芸術建築>の術式自体が破壊されていく。
「「「ぐ、うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」
艦体がボロボロになりながらも、それでもゼリドヘヴヌスは船首を刃と化し、影の壁をこじ開けていく。
「「「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!」」」
残った砲門から<獄炎殲滅砲>が一斉に撃ち込まれ、僅かに隙間が空いた。
その先には、<破滅の太陽>が見える。
「今っ――」
ドゴオォォォンッと飛空城艦が大きく揺れ、失速した。
エグズ・ド・ラファンどもに取りつかれ、<創造芸術建築>の術式が完全に破壊されたのだ。
最早、城艦を新しく創ることもできない。
翼すら失い、ゼリドヘヴヌスは破壊の陽炎に飲まれ、落ちていく。
声が響いた。
「陛下。後は――」
「よくやった」
魔王アノスが、空に浮かんでいた。
彼は、破壊の番神たちの壁を超え、すでにサージエルドナーヴェのそばにいる。
ゼリドヘヴヌスがこじ開けた僅かな隙間から、その刹那、なによりも速く飛び抜けたのだ。
「ファリス、お前の願いは叶えてやる」
墜落するゼリドヘヴヌスに背を向けて、アノスはまっすぐ<破滅の太陽>を目指した。
後ろにはシンがついてきている。
「我が君」
シンが鋭く声を発する。
巨大な影が反転し、闇色の日輪がそこに姿を現す。
万物万象に、等しく死と滅びを突きつける、<破滅の太陽>サージエルドナーヴェが、冷たい輝きを放ち始める。
「<身体変異>」
「御意」
シンの体に魔法陣が描かれ、その身体が変異していく。
闇の光が彼の体を覆えば、その輪郭がぐにゃりと歪んだ。
みるみる凝縮されていく闇は、ある姿を象り始める。
片側だけにきらりと光る刃、まっすぐ伸びた剣身、鍔はなく、無骨な柄。
それは、一振りの魔剣だった。
「神殺凶剣シンレグリア」
<破滅の太陽>サージエルドナーヴェが、滅びの光、黒陽を放つ。
空が闇に包まれ、地上を滅びの気配が覆った。
それを斬り裂くが如く、神殺凶剣が閃く。
一呼吸にてアノスの剣閃が闇に刻んだのは、魔法陣の跡である。
「<凶刃狂斬神殺三昧>」
一閃――
剣閃の魔法陣に向かって振り下ろされた神殺凶剣は、迫りくる黒陽を真っ二つに両断してのけ、闇を払った。
サージエルドナーヴェが身を隠すように、再び影に戻り始める。
「逃がさぬ」
空を飛び、<破滅の太陽>に突っ込んでいくアノスは、その巨大な日輪の影へ手にした魔剣を突き刺した。
ギギギギギギギギッと滅びの秩序が荒れ狂う。
アノスは刃を放すと、僅かに出来たその傷口をつかみ、ぐっとこじ開けた。
中は深い闇である。
アノスの魔眼を持ってすら、一寸先も見えなかった。
滅びの充満したその場所へ身を投げれば、あらゆるものが瞬く間に滅びるだろう。
ゆえに、万全の姿でここまで昇る必要があった。
迷いなく、彼はその中へ飛び込んでいく。
滅しようと襲いかかる破滅の秩序を、滅紫に染まった魔眼にて封殺しながら、アノスはひたすら深奥を目指す。
進めば進むほど、上下の感覚がなくなり、闇はひたすら深くなる。
だが、中心にある強大な魔力だけは隠しようがなく、アノスはそこへ向かっていた。
ふと、なにかが聞こえた。
幽かな声。
それは、誰かの泣き声のように思えた。
深奥に迫るごとに、その声は大きく、はっきりと輪郭を帯びる。
そうして、アノスはそこに辿り着いた。
暗闇の深奥に座すのは、恐ろしいほど強大な魔力。
この世の破滅を凝縮したかのような力が、そこから発せられていた。
その馬鹿げた破壊の力とは裏腹に、闇の中心にぽつんと浮かんでいたのは、小さな人影だ。闇よりも更に暗く、真っ黒な影である。
魔王が更に近づけば、影が反転していき、それは一人の少女と化した。
長い髪は金に染まり、闇の中をふわふわと漂っている。
再び泣き声が聞こえたような気がした。
少女は、抱えた膝に、顔を埋め、震えながら、じっとうずくまっている。
アノスが近づいても、彼を見ようともしなかった。
「名乗るがいい」
聞こえていないのか、やはり、少女は俯いたままだ。
アノスは手を伸ばし、彼女の顎に触れる。
そして、ゆるりと持ち上げた。
少女の神眼と魔王の魔眼が交錯する。
「……あ……」
その神眼から滅びの力が溢れ出す。
凶悪な魔力が、荒れ狂うように猛然とアノスに襲いかかった。
「睨めっこでもしたいのか?」
牙を剥いた破滅の視線を、彼は真っ向から受け止め、睨み滅ぼしてみせた。
少女は、目を丸くする。
「問おう。名はなんという?」
一瞬の静寂。
その後に、声が響いた。
「アベルニユー」
淡々と彼女は口にした。
アノスの予想通りの答えを。
「破壊を司る秩序。わたしは、破壊神アベルニユーよ」
まるで泣き腫らしたような赤い目に、魔法陣を浮かべながら、アベルニユーはアノスに問う。
「あなたは、誰なの?」
そうして、魔王と破壊神は出会った。