第二頁 過保護な黒の奮闘記 〜2種の氷菓は幸福を歌う〜
暗いとある森の中。
そこを領地とする黒の女王は、きまぐれに散歩をしていました。
彼女は美しさにはかなり自信がありました。毎日のように魔法の鏡に世界で1番美しいのは誰かと聞き、答えられるのが楽しみなほどにです。
彼女は魔女ヘイル。禁忌とされる闇の魔法の使い手でした。
普段散歩などしない彼女がなぜ出かけているのか。それは先日の昼のことでした。
いつも通り鏡の返答を聞いてご機嫌になっていると、こんこん、と門を叩く音が城に響きました。
滅多にこない訪ね人に少し驚きつつ戸を開けると、そこには森に住む小人の一人が立っていました。
「ちゃーす、女王!元気ー?」
随分と軽い態度の小人です。
彼はこう見えて予知夢の能力を持っているため侮れません。初対面からこの態度が変わらないので、女王は諦めていました。もしかしたらその諦めも予知していたのかもしれませんが。
「何の用かしらミドリ。相変わらず軽いノリね」
緑の服を着ているからミドリ。安直な名前ですが、本人が気にしていないのでよしとしましょう。
ミドリはにいーっと笑いながら言いました。
「夢みたんだよねー!森の中にさー!真っ白な赤ちゃん捨てられてんの!真っ白なのに赤ちゃんとかマジ面白いわー!」
これだけなら魔女は動かなかったでしょう。
しかし、彼の次の言葉が彼女を動かしたのでした。
「その子さ、超カワイイわけ!大きくなったら、それこそ女王より美人になんじゃね?」
こうして魔女ヘイルは、森の中をうろうろすることになったのでした。
今のうちに、白い赤ん坊を始末しておくために。