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第一頁 赤ずきんさんとオオカミ〜火薬の煙に遠吠えを添えて〜②

赤ずきんは、思考をどこかに飛ばしてしまっていました。

無理もありません。

彼女は守護者ガーディアン。国民や城の兵士とは違って、血生臭い仕事をしているのです。舞踏会のお誘いなんて、受けたこともありませんでした。

この国の舞踏会は儀式の一種。月に一度の満月の夜に城へ集い、ダンスで多数の円を描く事により、森と街の間に結界を張る魔法なのです。国に敵意が無い者なら誰でも参加可能でした。

赤ずきんは女の子としての魅力は十分にありましたが、ある意味汚れ仕事を請け負っている彼女を誘う勇気のある人は、誰一人としていませんでした。

ようやく我にかえった彼女は、少し困惑しながら、目の前の魔王に話しかけました。


「なぜ、なぜ私なんだ?いや、お誘いは嬉しい。しかし…貴方は賢く、強い。私なんかより、ずっと魅力的な女性はたくさんいるのではないか?」


その問いに、ラーヴァははっきりと答えます。


「私は、貴女がいいのです。誰よりも強い意志を持ち、誰よりも美しいその心に、その生き様に私は惹かれたのです。以前この森の近くを通りかかった時、偶然魔獣と戦う貴女の姿が見えました。その時の貴女の美しさに、一目で心を奪われてしまったのです。赤ずきんさん、どうか、私と舞踏会で踊っていただけませんか?」


そのまっすぐな瞳に、とうとう赤ずきんは折れました。

仕方がありません。だって彼女は、今まで尊敬の眼差しは受けども、そんなキラキラした目で見られたことはなかったのですから。


そのかわり。と、彼女は魔王に条件をつけました。


「そ、そのふわふわの毛並みを、触らせてもらっても、構わないだろうか」


顔を赤くしてそっぽを向きつつそう言う赤ずきんに、笑いつつ、お安い御用と受け入れる魔王なのでした。


かくして、森の守護者ガーディアンに、期間限定で仲間が増えました。

魔王ラーヴァ。

変わり者のオオカミさんは、もふりを堪能する赤ずきんをその肉球でぽふぽふしつつ、満ち始めようとする月を眺めたのでした。

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