波乱のバレンタインデー!?
今回は、高校生活最後の年のバレンタインデーのお話です。
時間軸としては、事件が1つ解決してから1年後のお話です。
はぁ、今年もやって来たバレンタインデー。今日は、彼女のいない男子にとったら気になる子から貰えるか貰えないかで、今後の人生を左右すると言っても過言ではない。しかし、俺たち3年生にとってみると既にある程度の覚悟が出来ている。
さて、今年のバレンタインデーは何が起きるのだろうか。
誰にも分からない。
「おはよう、涼子。」
「おはよう、健一。」
「しかし、一年か早いな。」
「何が?」
「一年前はあんな事が起きていただろう。」
「そう言えばそうね。」
「俺たちももうすぐ卒業だな。」
「うん。」
「涼子。」
「何健一?」
「愛してる。」
「…………っ」
「さて──」
「山森先輩!」
「ああ、鳩ヶ谷亜衣ちゃんだっけ。」
「はい。」
「で、どうしたの?」
「あの、これどうぞ。上手く作れてはいないですけどもし宜しければ受け取って下さい。」
彼女が差し出して来たのは可愛くラッピングされた箱だった。
「ありがとう。」
「し、失礼します。」
現在の時間は午前8時15分だ。まず俺がいる場所は自分の教室だ。そして、俺の鞄の中には三十個のラッピングされた箱が入れてある。俺が登校してから15分しか経っていない。因みに三十個全てが1年生から貰った物だ。
「今年も順当ね。」
「そうだな…………。」
隣にいる涼子からはまだ貰っていません。
休み時間毎に1年生から2年生はもちろん3年の女子が教室にやって来てはラッピングされた箱を貰う。昼休みに職員室に袋を貰いに行ったら男性教師陣からは『山森、貴様うらやま……けしからん!』と何故か怒られて女性教師陣からは一人ひとりに綺麗にラッピングされた箱を貰った。そのせいなのか貰った袋が重く感じる。
昼休みの終わりには更に増え貰った袋が既に入りきらなくなった。そして放課後は、生徒会室で矢鳥姉妹と如月春香と薺楓と朝霧優芽と前原麻優美から綺麗にラッピングされた箱を貰った。袋に入りきらず帰りに袋を貰いに行こうと思ったが手で持ち帰る事にした。
「さて、この量どうするか。」
「毎年のことだけど、す、凄い数よね。」
「圧巻です。」
「羨ましいですよ。山森先輩。」
「モテますね。」
「からかわないでくれ。本当にこれをどう持ち帰ればいいんだ?」
そして、下校する時には正門前で1年生から3年生までの生徒が渡しそびれないように待っていた。正門前で待っている1年生から3年生までの生徒から貰った物は鞄と袋に入らないので手で持ち帰る事になったが既に手で持ちきれない。
帰り道では涼子の機嫌が悪かった。
「どうした涼子。」
「知らない。」
「お、おい。言わなきゃ分からないだろ。」
「知らない。」
「知らないってホントに言わないと分からないだろ。」
「鈍感。」
「え?」
「鈍感!鈍感!鈍感!鈍感!鈍感!」
「り、涼子。いきなりどうしたんだよ?」
「鈍感すぎるよ。バカ。」
「ごめん。」
「謝らないでよ。」
「ごめん。」
「健一?」
「ん?」
「はい、コレ。」
「あ…………。」
涼子が俺に差し出したのは、俺が今日貰った物よりも綺麗にそして可愛くラッピングされて手紙付きの箱だった。
「遅くなっちゃった。」
「………………。」
「ホントは朝早くに渡せば良かったんだけど、タイミング逃して嫉妬して渡すの遅くなっちゃった。」
「………………。」
「どうしたの?」
「…………ありがとう。」
「ねぇ?」
「ん?」
「手紙読んでよ。」
「ああ。」
『健一へ
3年間生徒会会長お疲れ様でした。健一が転入して来た時は驚きました。あれからもう3年です。一年前は大変な事があったけど健一から素敵なプレゼントも貰えて嬉しかったです。後少しで卒業だけどこれから先も私の事を宜しくお願いします。健一、大好きです。愛してます。』
「ははは、涼子。」
「健一。」
「ありがとう。それから、3年間副会長として支えてくれてありがとう。こちらこそこれからもよろしく頼む。」
「うん。」
「涼子…………。」
「健一…………。」
夕日の下で二人の影が、唇が、重なる。
『ん…………ふ…………っ』
時間にして約2分程の長めのキスだった。
「涼子。」
「健一。」
「今夜はどうする?」
「泊まりたい。」
「良いよ。」
家に帰ると玄関で莉沙姉と妹の凛が出迎えてくれた。
「健一……今年も凄い量ね。」
「凄い量だね。お兄ちゃん。」
「ああ、所で結香は?」
「あれ、さっきまでここに居たのにどこ行っちゃたんだろ?」
「あ、結香お姉ちゃんそんな所で何してるの?」
「………………っ」
「結香、ほら来なさい。」
「いい。」
「お姉ちゃん来てよ。」
「いい。」
「お姉ちゃんお願い?」
「…………わ、分かったわよ。」
リビングの扉に隠れていた結香が出て来た。
「また、そんなに貰ったんだ。」
「うっ…………いや、そのこれはだな。」
「言い訳は聞きたくない。」
「うっ………………。」
「…………………る。」
「え?」
「コレ…………る。」
「え?」
「コレあげる。」
「はい、私たちからも。」
「お兄ちゃんどうぞ。」
「ありがと。」
「結香。」
「なに?」
「ありがとな。」
「………………っ」
結香は顔を真っ赤にしてリビングに引っ込んでしまった。
「アイツ、いきなりどうしたんだ?」
「はぁ、相変わらず鈍感ね。苦労するでしょ、涼子。」
「ええ、でももう慣れました。」
「そうね。」
「お兄ちゃんがどうかしたんですか?」
「人のために頑張る反面で人の想いに中々気づけないの。」
「ふーん、そうなんですか。」
「ええ。」
涼子と莉沙姉と凛が何か言っていたが何のことかさっぱり分からない。
その日の夜、涼子がお風呂に入っている時に春香から電話がかかってきて、事務所のプロデューサーにチョコを渡す時に自分の想いも伝えたようだ。無事に恋人同士になれたみたいだ。そのプロデューサーも最初の頃は、春香の事はドジっ娘すぎて心配していたが、次第にレッスンを頑張る姿や周りのみんなを気遣う姿に惹かれていたらしい。けど、この事はそのプロデューサーと春香と俺と涼子だけの秘密にしてくれと口止めされた。まぁ、他の人に言うつもりは全くなかった。
因みにそのプロデューサーとは知り合いだったりする。
涼子がお風呂から出てきて俺の部屋に来た時に春香の事を伝えた。涼子は笑顔で嬉しそうだった。
「涼子…………。」
「健一…………。」
俺の部屋で二人の影が、唇が、重なり俺は涼子をベッドに押し倒した。その後、再び唇を重ね合わせて、そして、その後の事は俺からはこれ以上言わない。勝手に想像してくれ。