魔術士になった訳
異世界生命体の陣地に向かってみると、やはり障壁が2つも破壊されたことにより、敵が前線側に押し寄せて来ていた。
改造銃でも魔術加工の物でないので、『BJ』に対して撃ってもあまり威力はない。
僕達は三人で行動しているのに対し、敵の『BJ』はこちらの数十倍もいる。
今日中に人間側の攻撃が通るようにするべく、異世界生命体側の障壁をある程度破壊しておきたかったのだが、敵の多さによって最初に破壊した障壁二枚と敵の本陣の右側にあった障壁だけしか破壊できず、あえなく退散してしまった。
この事は防衛軍の方々に報告をすると、
「ご苦労さまです。やはり障壁破壊は難しいですか……」
と言われた。
少々悔しいが、事実、敵の数に押されてしまい退散せざる負えなかった。
この日は前線基地にて夜を迎えた。
「あの生命体、なんであんなに数が多いんでしょうかね」
清水さんと同じ事を考えていたので、僕は
「そうですね。あの生命体の繁殖力は凄いですから……」
そう答えた。
「『BJ』の繁殖力ってそんなに凄いんですか?」
沙智さんが不思議そうに聞いてきた。
「はい。地球上で確認されてきた異世界生命体の中で一番繁殖力の高い生命体と聞いてます」
「確か、一体でも放置すると一日で数千もの数に膨れ上がるらしいですよ」
僕と清水さんの説明を聞き、
「はぁ~……そんなに高いんですね」
沙智さんは言葉に出ないくらい驚いたようだった。
「とりあえず、生きて戻って来れてよかったです」
清水さんが安堵する。
さっきの驚き様に僕はひとつの疑問が浮かんだ。
「沙智さんはこの戦場に来るのは初めてなんですか?」
「ええ。今回が初めてですよ」
「そうなんですか。今までは何をしていたんですか」
「魔法の研究らしいことです」
彼女はそう答えた。
「ここに来たのは、こちらのお偉いさんから魔法が使えると目を付けられて呼ばれたからです」
「それまでは、もしかして一般市民でしたか?」
清水さんが聞くと、
「ええ。普通の市民でした」
沙智さんは何事もなかったように答えた。
「ところで、どうして魔法を覚えようとしたんですか?」
僕は沙智さんと出会ってから一番疑問視していた事を聞いてみた。
すると、彼女は少し下を向き、声のトーンを低くして、こう聞いてきた。
「御二人は、人間が魔法を使える人が限られていると知ってますか……?」
「はい。ある程度は」
「僕も知ってます」
僕らがそう言うと、少しの間の後に彼女は話し始めた。
「人間は元々魔法を使うことが困難な生物と、異世界の文献に書いてあります。しかし、実際は多くの人間が使用可能とわかりました。でも、魔法使用者には個々それぞれの使用できる限界が存在するのですが、一般的に私が使える魔法はほとんど使用出来ません。」
確かに、沙智さんの言っていることは正しい。
僕ら秘密機関のほとんどのメンバーも僕も、沙智さんほど魔法を使用出来ない。
せいぜい訓練しても初級の自己防衛魔術程度が限界。
「他の人にできない魔法を出来てしまう。そんな人間は地球上生命体の魔法適合者と言われます。その中に私も含まれます。しかし一方で、魔法適合者を偏見の目で見る人もいます。『異界魔術士』と呼ばれ、偏見に会うのです」
『異界魔術士』……
人間にして、魔法を扱う事の出来る人を異端として見られる……
「私、元々魔法を覚える気は一切なかったんです。でも……守りたい人が……」
言葉が詰まる。
静かな夜が刻々と過ぎていく。
「三之沢さん。僕は魔法が使えていいな、と今も思ってますよ」
清水さんが静かに言った。
「世界を、いや、誰かを守るために得られる物なら誰に何と言われようと僕はそんな力を持っていたいです」
清水さんにもやっぱり守りたい人がいる。
「僕も、守りたいもののためなら、人の言うことなんて気にしないです」
僕だって、守りたい人はたくさんいる。
他の人にあれこれ言われて、守れるものもろくに守れないなんて……
そんな事はもう、したくない。
「…………御二人の言葉を聞いて、ほんの少し気が楽になった気がします」
ちょっとだけ、話す声のトーンが今までのものに戻ってきた気がする。
「いえ、我々も守りたいもののためにここまでやってきた身ですからね」
「そうです。僕らだって、端から見れば異人のような者です」
「そのことで、何か言われたことあります?」
「ええ。もう色々と言われて来ました。でも、僕らはこれでいいんです」
慰めにもなるかわからないが、彼女に声をかけた。
「……そうなんですね。御二人にお話して、良かったです」
彼女は僕らの方を向き、微笑んだ。
「私、守りたい人がいたので、どうすれば守れるかあらゆる所で探したんです。結果、魔法を覚えることを見つけ、自分から決断しました」
僕の聞いた問いに対しての答えを聞いた。
「そうだったんですね」
「こんな話だったですが、聞いてもらいありがとうございます」
「いえいえ。いいんですよ」
「明日も頑張りましょうね!」
「「はい!」」
夜は刻々と過ぎていった……




