第1話
見知らぬ景色が広がる。
目の前には広大な平原。その後方には森林。後ろを振り向くと、中世のヨーロッパを思わせる街並み。
街の中心には、これまた中世のヨーロッパ風のお城が見える。
日本では見覚えのない景観だ。
少なくても俺は知らない。
俺が立っている場所は、巨大な石が立ち並ぶ、どこかの遺跡のようだ。俺は、いつの間にかヨーロッパに連れてこられたようだ。
それにしては、俺を連れてきたヤツらはどこにいるのだろう?こんなところに一人で放置される覚えはない。
色々と疑問は浮かんでくるが、どうでも良くなった。
毎日、つまらない会社勤めに飽き飽きしていた。
平凡な日常から脱したいと望んでいた。そんな俺の欲望が、どんな形であれ、叶ったようだ。
暫くは、何も考えずに、この異国の地で過ごしてみよう。
なんてことを思い、石畳の地面に背を付け、大空を仰いだ。
そよ風が気持ち良い。
少し眠くなってきたが、それよりも強く空腹を感じる。
この国で使えるお金は持っていないが、もしかしたらカードが使えるかもしれないと、財布を探したが、、、ない!
財布が入っているはずの、右後ろのお尻のポケット自体がない。それどころか、俺が履いているズボンも着ているTシャツも見覚えがない。足に付けているのは靴ではなく、草履に近い履き物だ。
改めて自分の置かれている状況を整理してみる。
見知らぬ異国に連れてこられ、身ぐるみ剥がされ、見覚えのない服に着替えさせられている。
そして腹が減ったが、食料を調達する手段がない。
「マジかよ・・・」
誰に言うでもなく、自然と口から漏れた。腹が減ってはなんとやら。
「とりあえず、街に行くか」
石畳の遺跡の出口を探し、街の方角を目指す。見たところ、街から遺跡までは、それほど距離はないだろう。歩いて数十分程度だ。
遺跡の出口を見つけ、近寄ると、出口の片側に人が立っている。
白髪の割合が多く、歳は60歳前後。黒いスーツというかタキシード?っぽい服を着て微動だにしない。
怪しいが、警戒させるような雰囲気はない。マネキンなのではないか、と錯覚してしまう。いや、錯覚ではなく、本当にマネキンかもしれない。
更に近付くと、顔が判別出来るようになる。西洋風の顔立ちだが、日本人にも見える。
微動だにしないが、おそらくは生きた人間だろう。
不気味さは残るが、知り合いも頼れる人もいない以上、話しかけてみる価値はある。
「あの・・・日本語わかりますか?」
「Infinityの世界にようこそ。初めてのようですので、説明しましょう。私は『導きの執事』と申します。まず仕組みから説明します・・・」
とりあえず、日本語が通じることは分かった。
良かった、良かった。
だけど、言ってる意味が分からない。
困った、困った。
───で、
俺はこれからどうすれば───