君の声とキミの顔
机の上にコーヒーが2つ湯気を立てている。
「今日の服も似合ってる。」
「今日も制服だよ。」
「髪伸ばしてるの?
腰くらいの長さにしたいって言ってたもんな。」
「確かに言ったけど、前短くなった時から長さ変わってないよ。」
「そういえばネイルも変えた?」
「変えたけどもう取れたよ。
今じゃ爪もひび割れてるし。」
「今思えば大分年数経ったんだよな。
全然実感ねーわ。」
「確かに、あっという間に過ぎていったよね。」
「初めて会ったときから3年目か。」
「私はあれから2年経ったことのほうが信じられないよ。」
「俺、結構一途だろ?
ちゃんと覚えてるからな?」
「うん。それは本当にそう思う。ありがとう。」
「あーあー…何泣いてんだよ。」
「…」
「あのさ、慰めてくれるならもうちょっと大きな声でお願いしていい?」
「…ホントに図々しいなぁ。」
「なんか声が遠いな〜。難聴かな?」
「…さぁ?でも聴力検査問題なかったでしょ。」
「まさか身をもって体験するとは思ってなかった。」
「あぁ、恋愛小説でよくあるよね。こういう展開。
…ごめんね。」
「あっ、謝るの禁止。」
「……でも…。」
「俺が悪いんだから気にするなって。」
「違う…違うの。」
「ごめんな。」
「ごめんね。」
『助けられなくて/巻き込んで』
そう、彼は失明した。私のせいで。
いじめられっ子だった。先生も見て見ぬふりをした。
親にはバレたくなかった。だから抱え込んだ。
そんな私が生きてこれたのは、隣のクラスの彼が憧れだったから。
…なのに、見られてしまった。あの時、目が合ったのは一瞬だった。けれど、聡い彼が察してしまうのには十分だった。その後、なんとかその場は流され、学校から外に出れたものの私の心はズタズタで、帰り道、駅のホームで紅い花がさいた。問題は彼だった。いじめっ子はその日中に口止めとして彼に暴行を加えた。元から彼が予想していたのか、誰かが呼んだのかは分からないが、途中で警察が来てくれたから止まったものの、理科室から持ち出された塩酸を顔にかけられてしまったそうだ。その騒動が一段落した結果、彼は弱視、後失明してしまった。そして今に至る。
「気づいてたかな?俺、ずっとずーっと気になってたんだ。いつも視界の端で探してた。放課後とかも誘いたかったんだ。だけどいつもいないし…。」
私は何も言えず俯いていた。
「で、やっと見つけたと思ったら全部遅かった。何を見てたんだよって話だよ。こんなんじゃ、目がある意味なかったよな。あー…今のブラックジョークになっちゃう?ごめんな?…けどさ、良かったわ。」
「何言って…」
「君がいないなんて現実に目を向けなくて済む。」
「……っ…」
「だからもう少しだけ、この茶番に付き合ってよ。」
そこには砂糖と牛乳が入れられたコーヒーと冷めたコーヒーが残っていた。
…ちなみに余談ですが
赤い花といえばちょうど綺麗な線が細い花がありましたね。
理科室の塩酸は弱めているのでかけられた直後に目を洗えば失明は避けられるそうです。




