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真滅の光焔【第1巻:精神】  作者: 黒羽 スイ
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第1章

息をのみ、胸を押さえながら目を覚ました。

まるで窒息しかけていたかのように、肺が焼けるように痛む。

シーツは汗で湿っていて、呼吸するたびに喉がひりついた。


昨夜はほとんど眠れなかった。

あの奇妙な夢が、何度も頭の中をよぎっていたからだ。


やがて夜は明け、太陽が昇る。

新しい一日が始まった。

ぼんやりとしたまま階段を下りながら、

まだ夢の内容を思い返していた。


―そのせいで気づくのが遅れた。

階段の下、影が跳びかかってくるのを。


「つかまえた!」


床に倒れ込みながら、上から聞こえてくる笑い声だけが耳に残った。

目を開けると、そこには満足そうな顔をした妹がいた。

どうやら、兄を驚かせるために階段の下でずっと待ち構えていたらしい。


……いったいどれくらい待っていたんだ?

そんな疑問が、朝から頭の中をぐるぐる回る。

まったく、俺の朝を台無しにする天才だよ。


「今度はこっちの勝ちでしょ、お兄ちゃん!」

「まいったよ、アカリ。お前はほんとに足音が静かだな。いつか仕返ししてやるからな。」

「ふふっ、ハヤトの夢は自由だからね~!」


アカリは昔からとにかく元気だ。

じっとしていられなくて、いつも跳ね回ったり、町中を走り回ったりしている。

いったいその体力はどこから湧いてくるのか、何度も不思議に思ったものだ。


「なあ、アカリ。じいちゃんは? どこ行ったんだ?」

「釣り池に行ったよ。朝から釣りの気分だって。私も誘われたけど、釣りなんて退屈でイヤだもん。」

「だろうな。お前がじっと座ってる姿なんて想像できないし。

俺は様子見てくるよ。そのあと湯越ゆごしげさんのところに寄る。じゃあな!」


その日のアマハラ村の通りは、人であふれていた。

旅人たちが多く行き交い、もともとこの村は休憩や交易の中継地として知られている。


釣り池へ向かう途中、俺はふと空を見上げた。

鳥の群れが、まるで何かから逃げるようにこのあたりから飛び去っていく。

冬が近いわけでもないのに――なんだか妙だな、と胸の奥でつぶやいた。


池に着くと、じいちゃん――サブロウがいた。

釣り竿を手に、じっと魚が食いつくのを待っている。

俺はその隣に腰を下ろし、じいちゃんが気づくのを待っていたが……

すぐに気づいた。

―もう、とっくに寝てたんだ。


「うそだろ!? おい、

起きろよじいちゃん!」


じいちゃんはビクッと体をのけぞらせて目を覚まし、しかめっ面の俺を見上げた。


「まったくもう。

何度言ったらわかるんだよ。

朝ごはんも食べずに外に出ちゃダメだって!道場をたたんでから、あっちこっちで居眠りばっかしてるんだから。」


「すまんな、ハヤト! 

今日はどうしても釣りがしたくてな。

ここは静かで気持ちがいいんだ。

池と竿と、静けさ――それだけで十分さ。

アカリも誘ったんだが、退屈だって言ってな。

昔あれだけ道場に付き合ってくれたんだから、

釣りにもついてきてくれると思ったんだがなあ。」


「そりゃ無理だろ。

狩りに連れて行くなら、おにぎりって言い終わる前に準備してただろうけどな。

……ってことで、ほら。

ちゃんと食べなきゃダメだぞ。」


俺が取り出した包みを見て、じいちゃんの顔がぱっと明るくなった。迷わず手を伸ばし、うまそうにおにぎりをほおばる。


食べながら、じいちゃんはふと俺の顔を見た。食べようとしない俺の様子に気づいて、心配そうに聞いてきた。


「どうした、ハヤト。食欲でもないのか?」


「え? ああ、ごめん。気づかれたか。」


「そりゃ気づくさ。いつもは向日葵みたいに元気で、底なしの食欲なのにな。」


「最近さ……変な夢を見るんだ。

何度も同じ夢で、起きたあとも胸がざわざわする。

本当に見ているような、そんな感じでさ。

考えるだけで寒気がする。」


「ほう、悪い夢か。どんな夢だったんだ?」


「妙なんだ。どこかの神殿みたいな場所にいて、ひび割れた柱や、雷と炎が渦巻いてる。

眠りにつくたびにまたそこに戻されて、必ず誰かの声が聞こえるんだ。まるで、俺を呼んでるみたいに。」


じいちゃんは青い池の水面を見つめながら、しばらく黙っていた。やがて小さく笑い、少し寂しげな顔でつぶやいた。


「まるで、物語の中の話みたいだな。

今夜はわしの特製のお茶を飲んでから寝るといい。

きっとぐっすり眠れるぞ。」


「わかったよ。じゃあ早く食べちまおう。

もう村に戻らないと。

今日は天気もいいし、太陽のうちに動かないとな!」


じいちゃんと並んで朝飯を食べながら、ふと昔のことを思い出した。

夜になると、じいちゃんがよく“おやすみの物語”を聞かせてくれたっけ。

壁にかけてある折れた刀を小道具にしたり、

自分が空を飛べるふりをしたりして―とにかく想像力豊かだった。


アカリと俺は、そんなじいちゃんを「空飛ぶブタを探してる変なおじいちゃん」だなんて笑っていたけど、本当はその時間が大好きだった。食べ終わると、じいちゃんは釣りの成果ゼロにもかかわらず、


「どうせ帰るなら一緒に」と言って、俺と一緒に村へ戻ることにした。


村に着くと、じいちゃんは家へ、俺は湯越ゆごしげさんの店へ向かった。俺の仕事はラーメン屋の手伝い。バイトみたいなものだけど、湯越さんを手伝うのは嫌いじゃない。店に着くと、まだ開店準備をしていた湯越さんに声をかけた。


「おはようございます、湯越さん!」


「おはよう、ハヤト。今日はいい天気だな。」


「ええ。今日は村も人が多いですし、忙しくなりそうですよ!」


「そうだな。この村から帰る人には、必ず湯越特製ラーメンを食べてもらわんとな!一口食べたら天国に行った気分になるはずだ!」


その日はいつもより頑張って働いた。少しでも残業して、アカリに新しいリボンを買ってやりたかったからだ。今つけているリボンも、前に俺があげたものだ。もう古くなっているのに、


「お兄ちゃんからのプレゼントだから!」


といってずっと使い続けている。


一日はあっという間に過ぎ、みんな早めに帰っていった。湯越さんも店を閉めたあとすぐに帰ったが、俺は残って掃除と片づけをしていた。


気づけば外はすっかり暗くなっていた。


「やばい、急がなきゃ。またアカリに怒られる。」


家へ向かう道の途中、通りは静まり返っていた。人影もなく、冷たい風だけが吹き抜ける。おかしい……夜でもアマハラ村はいつも灯りに満ちているはずなのに。胸の奥で何かがざわついた。


その瞬間、右目に強い痛みが走った。続けざまに、大地が激しく揺れる。地面に亀裂が走り、通りに人々の悲鳴が響きわたった。


赤く染まる空―まるで天そのものが血を流しているかのようだった。地平線の向こうで、黒と橙の塊が爆ぜる。炎が村を飲み込み、煙の柱が爪のように空へと伸びていく。逃げ惑う人の波が俺の方へ押し寄せてきた。誰もが自分の命だけで精いっぱいで、他を気にする者はいない。


押しつぶされるように転び、踏みつけられ、左手に激痛が走った。かろうじて立ち上がったときには、全身傷だらけだった。冷たい衝撃が体を貫き、息が詰まる。―静かな夜は消えた。今、目の前にあるのは破壊の光景だけ。帰らなきゃ。家へ!


それは心の中の囁きではなく、叫びだった。体は勝手に動き、痛みなどどうでもよかった。燃え上がる通りを走る。建物が崩れ、炎が木を喰らっていく。


家が近づくにつれて、耳をつんざくような悲鳴が聞こえた。それは建物の崩れる音でも、獣の声でもない。知らない音―けれど、恐怖が喉を締めつけた。


「アカリ……じいちゃん……どこだ!? 無事でいてくれ!」


家は炎に包まれていた。息をするのも苦しい。それでも止まれなかった。


「アカリ! じいちゃん! 誰かいるのか!?」


返事はない。一階、誰もいない。二階、いない。煙が肺を焼き、咳が止まらない。裏庭にも、誰も―いない。


「始まったとき家にいなかったんだ……! よかった……逃げられたのかも。俺もここを出て、二人を探さなきゃ。」


出口に向かおうとした瞬間、壁が崩れ落ちた。道をふさぎながらも、家の隙間に新しい抜け道ができる。そこへ近づいたとき、床に見覚えのあるものが落ちていた。じいちゃんの古い折れた刀―いつも大事にしていたあれだ。


「……置いていけるかよ。」


それを拾い上げ、炎に包まれる家を飛び出した。かろうじて外に出たものの、左脚に鋭い木片が突き刺さっていた。歯を食いしばって引き抜き、裂いた布で強く縛る。そのとき―声が聞こえた。すぐにわかった。あの声を間違えるはずがない。


「ハヤト! ハヤト、どこにいるの!?」


アカリの声だ。近い!


「アカリ!? 俺はここだ!」


必死に走ると、角の向こうで二人の姿が見えた。アカリとじいちゃん。灰にまみれ、ところどころ火傷している。俺は思わず二人を強く抱きしめた。


「よかった……無事で。本当に心配したんだ。」


「ハヤトもだよ! どこにもいないから探してたんだ。それ、手に持ってるの……?」


「こんな無茶をするな、ハヤト。足を見ろ、ひどい傷じゃないか。ここを離れるぞ―急げ。」


その直後、あの耳をつんざくような悲鳴が再び響いた。今度は先ほどよりもずっと近く、そして怒りに満ちている。地面が再び震え出し、まるで世界そのものが壊れていくようだった。俺たちは狭い路地を縫うように走った。人の多い通りを避け、炎の届かない道を探して。だが―その努力も、突然終わりを迎える。


目の前に、炎に包まれた“何か”が立ちはだかったのだ。


「な、なんだよあれ……!?」


アカリの声が震える。あんな怯えた声、聞いたことがなかった。


空気が変わった。重く、熱く、息を吸うたびに肺が焼けるようだった。煙と火の粉の中から、それは一歩、また一歩と姿を現す。


最初は人間だと思った。だが違う―あれは人じゃない。その体は石の鎧に包まれた炉そのもので、ひび割れから炎があふれ出ていた。


歩くたびにその光が強くなり、石の腕がきしむ音が刃のように耳を刺す。顔が見えた。黒く焦げた岩の仮面に、溶岩のような光が脈を打つ。斜めに走る裂け目が、まるで瞳のようにぎらりと光った。そこには―人の感情など微塵もなかった。心臓が暴れ、鼓動の音が炎の轟音にかき消される。


そいつが、俺たちの方へ歩み寄ってくる。握りしめた刀が、手の中で冷たく感じた。抜く勇気なんてなかった。じいちゃんがちらりと俺を見て、叫ぶ。


「ハヤト! ダメだ! 走れ!」


その瞬間、炎の怪物が跳んだ。じいちゃんは俺とアカリを抱きかかえ、近くの建物に飛び込む。


屋根が砕け、激しい衝撃で粉塵が舞い上がった。視界が真っ白になり、咳が止まらない。アカリは……煙を吸いすぎて、気を失っていた。妹のぐったりした姿を見て、胸の奥がきゅっと締めつけられた。


「じいちゃん、逃げるんだ!」と俺は叫んだ。


じいちゃんはわずかに顔を向け、決意に満ちたいつもの穏やかな、腹立たしいほどの笑みを浮かべた。


「だめだ」と彼はきっぱり言った。


「お前が行け。アカリを連れて、ここから離れろ!」


「置いて行けるかよ!」と声を振り絞り、俺はじいちゃんの腕をつかんだ。声が震える。


じいちゃんは俺の手首をぎゅっと掴み、微動だにしない。


「息子よ、よく聞け。いつかお前も子や孫を持つ時が来る。愛する者たちのために命を投げ出すことが、自然にできるようになる日が来るんだ。今すぐここを出ろ!」


その怪物はこちらへ顔を近づけ、変形した仮面のような顔が燃える空の光で半分だけ照らされた。その瞳は溶けた琥珀のようで、憎しみではなく―むしろ愉悦を宿しているように見えた。


「祈りか?」と、低く、砂を噛むような声が響く。「その手の声はたくさん聞いたものだ。『お願いだ、我が子をお許しください』……『我が家を救ってくれ!』」怪物は首をかしげ、さらに不気味に笑った。


「願いは叶えてやる、ある意味でな。やつらは、俺の一部になるのだ。」


「ハヤト」と、じいちゃんは静かに言った。


「アカリを連れて逃げろ。止まるな。振り返るな。」


「置いて行けるかよ!」と俺は叫び返す。


じいちゃんは振り向かず、目を穏やかに据えた。


「これはお前の戦いではない、息子よ。」


怪物の声が耳元で滑るように囁いた。


「ああ……逃げろ、〈ハヤト〉。お前の英雄が我が清めの炎に消え去るその物語を、皆に伝えるのだ。」


巨大な腕が伸び、じいちゃんの全身を包み込んだ。じいちゃんはうめき声を上げ、体を引き裂かれるようにして我々の隠れ場所から引きずり出された。骨が折れる音、肺から空気が抜ける音が聞こえた。


「温かい……」と怪物は囁くように言った。

「弱き者どもの最後の抵抗だ。」


「やめてくれ!」と俺は叫んだ。


怪物の掴みが強くなる。腕から炎が噴き出し、じいちゃんは炎に包まれた。光は眩く、音は耐え難く一瞬で、じいちゃんは灰となって舞い上がった。まるで消えゆく星のように。


「見たか、子よ?」と怪物はこちらへ向き直る。

「これが慈悲だ。古き者にこの世界の居場所はない。残るは神のみだ。お前の老父の忠告を聞いて、逃げておけばよかったのだ。」


俺は凍り付いた―焦げる肉の匂い、じいちゃんの声の残響、手に残る刀の重み。何かが俺の中で壊れた。


胸から絞り出された咆哮は、もはや人の声ではなかった。怪物が首をかしげ、興味深そうにこちらを見た。


「おや……その表情。世界を作ったのと同じ憎しみだ。無垢な者にもそれは免れぬのだな。」


「黙れ……」と俺は呟くように言った。


空気が歪み、熱が曲がり、足元の地面が脈打ち始めた。


「てめえを――ぶち壊してやる!」


怪物の笑みがさらに深くなる。


「来い、小さき火よ。お前の世界の終わりを見せてやろう。」


俺は、建物に隠したままのアカリの無事を祈りつつ、外の通りへと出た。彼女が目を覚ましたときに無事でいて、兄がそばにいるように――と祈りながら。


折れた刀を抜く。壊れてはいるが、掴むものがあるだけで怒りの燃料になった。妹の傷ついた姿を目にし、この怪物がさらに彼女を痛めつけることを思えば、怒りが目に溢れた。


怒りをその身に宿し、俺は叫んだ。火の轟音を切り裂くような、荒々しい一声で。


「お前が炎と石から生まれた者だろうと、悪魔だろうと、地獄から来た化け物だろうと関係ない! 俺は逃げない……屈しない!家族が苦しむくらいなら、焼けて死んだ方がましだ。倒れて死ぬなら――てめえを地獄に道連れにしてやる!」


刀を握る手に力が入りすぎ、血が刃に滴り落ちた。その血と炎の反射が交わり、折れた刀は暗闇の中で赤く燃え上がる。


言葉では強く振る舞っていても、身体は震えていた。恐怖の匂いが、火と煙に混じって漂う。怪物は低く、不気味に響く音を発した。石が擦れ合うようなその音が――笑い声に変わる。


「哀れなものだな。強い心を持ちながら、怒りという鎖に縛られているとは。」


考える余裕もなかった。ただ感じるのは、燃えるような怒りと――失われたものへの痛み。


怪物は両手を組み、胸の前で印を結ぶようにして吼えた。


「呪焔術・蛍群《カースドフレイム・ファイアフライ・スウォーム》ッ!!」


瞬間、空気が爆ぜた。火の粉が無数の光となって舞い上がり、夜空に群れをなして飛ぶ。


それはまるで、燃え盛る蛍の群れ―触れたものすべてを焼き尽くす、呪われた炎だった。


「な、何だって!?」


俺は可能な限り素早く飛びのき、呆然と立ち尽くした。


「くそっ! 一体何だったんだ…!? こんな化け物がいつ現れたんだ!?」


勝ち目は薄いとわかっていたが、俺は再び立ち上がった。


怪物は再び両手を寄せて集中の構えを取り、轟音とともに咆哮を上げる。


その体が、何かを放出し始めた。――奴の狙いが何であれ、早く判断しなければ、俺は灰になるだけだ。


攻撃が放たれる前に、路地の方から石が飛んできて怪物のあごを直撃した。投げつけられた岩は強烈で、集中を乱したらしい。


「なんだ、誰だ? ここに誰も残ってないはずだが」


路地の煙が晴れると、そこに立っていたのはもう一人の少年だった。火にやられた痕はあるが、決意を抱いた顔つきでこちらを見ている。


「どけ! ここに居るのは危ない!」と俺は叫んだ。


「あんたにだって同じこと言えるだろ! 早く動け、さもないと焼け死ぬぞ!」と彼は返す。


助けようとしてくれている気持ちはありがたかったが、他人を危険にさらすわけにはいかない。


「手伝いたいなら、そこの建物に入って妹を連れ出せ! とにかく全力で逃げて、安全な場所へ行け!」と声を振り絞る。


息はほとんど残っていなかったが、伝えなければならなかった。もう少し耐えてアカリを安全な場所に連れて行ければ……それだけでいい。


怪物は再び炎を集め始めた。消えていた炎が吸い寄せられるようにして腕へ集中し、巨大な熱の塊を形成する。


やがてその視線は、路地にいるあの少年へ向けられた。


「呪焔術・紅鎖カースドフレイム・クリムゾンチェインッ!!」


「やばい! あいつ、完全に狙われてる……!

直撃したら、生き残れない!」


動こうとした。けれど、体が―動かない。


全身が痺れたように固まり、ただ目の前の危機を見つめるしかなかった。誰かが危険にさらされているのに、俺は――何もできない。


怪物が攻撃の構えを取ったその瞬間、

手の甲に何か湿ったものが当たった。


「……水?」


そのあと、すべてが一瞬で起きた。速すぎて、目で追えなかった。ただ、影が走ったのを見た。


「水術・蒼牙ウォーターアート・アズールファングッ!!」


水が弾け、蒼い刃が閃光のように走る。火と水がぶつかり合い、爆音が夜を裂いた。

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