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プロローグ
戦乱の時代は、終わりを告げた。
何十年ものあいだ、人類は平和の中で生きてきた――
いや、正確に言えば「そう信じたかった」のかもしれない。
世界は灰の中から再び立ち上がり、
文明は再び命の鼓動を取り戻した。
かつて悲しみを歌った声は、
今では笑い声の下に静かに埋もれている。
だが――平和とは、あまりにも脆いものだ。
人が互いに争うことをやめたとき、
静寂の奥で“何か”が目を覚ました。
それは古く、そして忍耐強い存在。
歴史がまだ記憶を持たなかった時代――
この世界の均衡を見守る者たちがいた。
大地の意志から生まれた、光と炎の化身。
彼らは人間の運命を影から導き、
世界の秩序を守っていた。
だが、守護者が生まれるたび、
その影もまた現れた。
それは悪意によるものではなく、
均衡がわずかに崩れた結果として生じた存在。
やがて人々はそれを「鬼」「霊」「呪い」と呼ぶようになった。
名が変わっても、脅威は変わらなかった。
――戦乱の時代は終わった。
しかし、世界の魂をめぐる戦いは、
今まさに始まったばかりだ。




