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色褪せない感謝の気持ち 〜愛あふれる病棟で〜

作者: 菜須よつ葉

「あふれる笑顔のために」の依元看護師長の物語。

 看護師国家試験を無事に突破して憧れの看護師になれた。第一希望であったなろう大学附属病院で看護師デビューを果たす。2週間の新人研修も終わり、それぞれの配属先が発表された。


 なろう大学附属病院に併設されている周産期医療センターNICU病棟に配属された。


「依元実希です。よろしくお願いします」


 緊張しながら挨拶をした事を、思い出した。それから夢中で指導看護師に着いて色々学んだこと、初めてひとりで患者を受け持ったこと。看護師としてひとり立ちしたことを思い出し懐かしく思っていた。その時ナースステーションから私を呼ぶ声に現実に引き戻された。


「依元師長、センター長が呼んでますよ。手が空いた時に来て欲しいそうですよ」


 笹井看護師から伝言を受け取った。


「わかりました。すぐに行ってきます。ありがとう笹井君」


「はーい。師長いってらっしゃ〜い」


 伝言をしてくれた看護師にお礼を伝え、仕事に戻る。ふと、懐かしく思い出した記憶の欠片たちに笑みが溢れる。



 今ではNICU病棟で看護師長を任されているが、わたし一人でここまで来た訳ではない。この病棟の人達に育ててもらったからだ。それを引き継いでいかなくてはいけないと心に誓っている。この病棟のナース達は、本当に良い子たちの集まりであると自負している。私の後任にと密かに思っているのが坂倉看護師だ。彼女なら立派に引き継いでいってくれると思っている。


 と言っても、まだまだこの座は渡さないけど。師長会で、いつも羨ましがられる。それは、前任の岡部看護師長が作り上げてきたもの。私だけの力ではない。でも、ふとした瞬間に思い出すのが、私を育ててくれた先輩看護師の言葉たちだった。





「実希ちゃん、ひとりで悩まないのよ。ここにいる人はみんな同じチームで働く仲間なんだからね。私はそういうチーム作りをしてきたつもりだから、誰ひとり欠けることなくみんなでこの病棟で笑顔で働きましょう」


 この病棟に来て、数十年……。私も、岡部師長みたいにこの子達をまとめていけているのだろうか。そんな事を思っていると



「依元師長、鴻上先生からの差し入れです。休憩室に置いておきますね。後から召し上がってくださいね。師長の好きなマドレーヌですよ」


「陽菜先輩、師長はマドレーヌだけじゃないですよ。好きなの! 大福とか、みたらし団子とかも大好きですよ。この前、口の周り粉つけながら食べてたんですから」


「悟、後ろ見てみたら?」


「何です?陽菜先輩」


 凄い勢いで後ろを振り向く笹井君。


「ほえ、依元師長ぉぉ、いらっしゃい」


「さっきから居たわよ」


「依元師長、一緒にマドレーヌ食べましょうねぇ。僕、美味しいコーヒー淹れますね」


 美味しいコーヒーって、お湯入れるだけのインスタントじゃない。でも、笹井君らしくほっこり癒してくれるのよね。今となってはこの病棟に必要な子なのよね。ふふっ。


「笹井君、本当に美味しく淹れられるの?」


「任せてください! バッチリです。好きなスティック選んでくださいね」


 ほんとにこの子の、こういうところ憎めないわよね。はじめはどうなるとかかと思ったけど。心配要らなかったわね。



 岡部看護師長、私なりの病棟を作ってますよ。自慢の私のNICU病棟をみてくださいね。


この病棟の普段の模様は「あふれる笑顔のために」をご覧ください。

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― 新着の感想 ―
ここのNICU病棟のみなさんは、本当に良い人ばかりで、仲の良い雰囲気も和みますし、楽しく拝読しています。 いつも素敵なエピソードをありがとうございます。
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