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第2話 寝取られないヒロインが欲しい!

 希愛も霜野さんも寝取られた。

 ショックすぎて……なにも喉を通らない、はずだった。


 妙な感じだ。


 めちゃくちゃ嫌なのに。嫌なはずなのに半分興奮している俺がいた。

 寝取られ願望が奥底にあるのだ。

 でもやっぱり嫌だ。


 そう思いたいはずなのに!



「聖くん、やっぱり体調悪そうだね」



 一応、まだ彼女である希愛は、俺を気遣ってくれる。顔を見るだけで幸せ、好き。別れたくなくなる。

 だけど希愛は隠れて知らん男とヤっちまっているんだよな。悔しい……でも。



「なあ、希愛は俺のこと好きなんだよな?」

「当然でしょ。君とわたしは将来結婚するんだから」

「…………!!」



 マジか。マジで言っているのか!

 俺は脳が破壊を通り越してバグりそうになった。

 じゃあ、なんで俺の部屋で北村先輩とやらと寝ていたんだ!? どういうことだよ。希愛のことが分からなくなってきた。



「え、嫌なの?」

「嫌っていうか……。希愛のことは好きだけど、今は距離を取りたい」

「え! なんでそんなこと言うの!」

「あー…、いや。少しの間だけだ。様子を見させてくれ」

「別れるとかじゃないんだよね?」

「そのつもりだ。でも、ひとつだけ確認させてくれ」



 そう、希愛と付き合う前に話し合ったことを、もう一度だけ確認する。



「なに?」

「浮気、いいんだよな」

「そ、それは……うん。だって、聖くんって人気配信者だもん。女の子が寄ってきちゃうし」



 俺は、いわゆる暴露系インフルエンサーをしている。一週間に一回か二回だけの配信だが、視聴者数は10万人を超える。

 知名度も高くて、今や俺は若い女の子から主婦層にもモテモテだった。

 陰キャぼっちの俺がいつの間にか人気者になってしまっていた。



「じゃ、悪いんだが……そういうことで」

「……分かった」



 約束を守ってくれるのか、希愛は俺から離れた。今はこれでいい。……どのみち、希愛は北村先輩とヨロシクやるのだろう。


 もちろん、放っておくほど俺も馬鹿ではないッ!


 他の女子に浮気して嫉妬させてやる。

 俺が必要だったと認識を改めさてやれば、希愛はきっと自ら戻ってくるはずだ。


 それくらいの自信が俺にはあった……!



 なので同じ学年の女子をあさることにした。

 いや、違うな。

 待つことにした。待てば勝手に向こうからやってくる。俺という“有名人”を求めてな。

 みんな有名人という言葉に弱い。

 知名度は最強の武器だ。

 なにもしなくても常に入れ食い状態。終わらぬ確変! 永久ボーナスタイム! 圧倒的感謝!


 席でふんぞり返っていると、霜野さんが現れた。



「えっと、今いいかな」

「どうしたんだい、霜野さん」

「今日一緒に帰らない? ていうか、家に来ない?」

「マジで」



 もちろん気持ちは嬉しかった。だけど、霜野さんは寝取られている。……嫌いではないが、気持ちの面では希愛よりは劣る。



「えっちなこと……しよ」

「な、に…………!?」


「聖くんに何されてもいいよ」


 刹那、俺の心臓がバックンバックン鼓動を加速させ、大興奮に包まれた。……やべえ、今の耳元でささやかれてヤバかったぞ!!


 霜野さんは魔性の女だ!

 けど……悪くない。

 てか、もしかして霜野さんはヤりたいだけなんじゃ……。変態なのか!? そうなのか!?


 悪くない提案だが、俺は断ることにした。



「すまない、霜野さん。君は笑顔が可愛いし、運動神経抜群ですごく魅力的。だけど友達かなって思ってる」

「それでもいい。聖くんの性奴隷でもいいから!」



 なに言ってんだ、この人ー!

 けど稀にいるんだよなぁ、こういうタイプの女子。そういうDMが送られてくるので慣れていた。

 女の子も探せば一人や二人、股の緩い子がいるものだ。


 ……あ、いや。それを言ったら希愛も……うぅ。


 思い出しただけで辛い!!(絶望)



「悪い。今はそういう気分じゃないんだ。じゃあね」



 俺は胸が苦しくなって教室を出た。

 もう帰ろうっと。

 トボトボ歩いていると、廊下の向こうから誰か来た。……ん?



「見つけたわ、聖くん。いえ、ニューくん!」

「おいヤメロ。その名で呼ぶな」



 ニューとは、俺の配信者としての活動名だ。

 新しいのニューや、ニュースのニューなどいろんな意味を込めてそういうネームにしていた。



「私は生徒会長の一ノ瀬(いちのせ) 千夜(ちよ)よ」



 先輩だからね、と付け足す生徒会長さん。女子だったとは知らなかった。普段、関心がないからなー。

 しかし、こんな真面目系の美人だったとは。背高いな。スタイルもめちゃくちゃ良い。


「生徒会長が俺になんの用ですか?」

「あなたの配信のファンってところね」

「それは意外です。視聴に感謝ですよ」


「それでね……お願いが」



 そう言いながらも握手を求めてくる生徒会長。

 こ、これは……まさか。



「もしや、俺と付き合いたいと?」

「そういうこと。私と付き合ってくださいっ!」



 なんだってー!!

 美人生徒会長が俺に告白だと……!


 ……ありっちゃありだな。生徒会長なら真面目できっと他の男になびくなんてしない。寝取られないはずだ!


 よし、経験もかねて付き合ってみるか。


 真面目な交際を目指す。

 寝取られないヒロインが俺は欲しい……!(超切実)


 もし、生徒会長が俺の理想の彼女なってくれたら、それはそれでハッピーエンド。でも、まだ知り合ったばかり。未知数な部分が多い。

 だからこそ、付き合うしかない。


 俺は生徒会長と握手した。



「よろしく」

「わー! やった! ニューくんを彼氏にできて嬉しい」

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