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 別荘に戻り、亮介の腕の止血をした。


「翔・・・俺たち、助かったのか?」

「多分。」


 2人は床を見つめたまま、しばらくの間黙っていた。


「俺が・・・あの時の事を正直にみんなに言ってたら、こんな事にはならなかったのか? 俺のせいなのか?」


 亮介は今になって、強い罪悪感に駆られ始めていた。ずっと目を背けて来たが、これだけの事があり、やっと向き合う気になったのだ。

 その様子を見て翔は首を振った。


「お前だけじゃない。俺たちがいけなかったんだ。ずっと間違ってると思ってた。俺は毎年、あの日が来るのが怖かった・・・まさか、『飛び降りろ』の一言で、本当にひなこが自殺するなんて思わなかったし、こんな事まで起きるなんて思わなかったんだ・・・・・・」



 翔はカレンダーを見た。




「明日があの日だ。」




 亮介も顔を上げてカレンダーを見た。



「過去は変えられないけど、だからこそ、俺達はひなこの事を忘れないようにしよう。もう、それしかできない・・・そうだよな、亮介。」

「・・・分かったよ。」


 外からサイレンの音が聞こえた。

 通報から随分時間が経っていた。


 2人は外に出ると、川の向こうから朝日が昇るのを見つめた。




 俺は忘れない。


 自分達のした事を。


 この一晩で起こった事を。


 これから先、あの日の事、この別荘で起きた事を思い出しては、ひどく後悔するだろう。


 それは死ぬまで続く。


 それでも生きていかなければいけない。


 後悔しながら生きる事が償いになるはずだ。


 俺は、そう自分に言い聞かせた。




 森の中からやって来た警察官が2人を見つけた。事情を説明すると、パトカーに乗った。


 翔は山を下りるまで、ずっと窓の外の朝日を眺めていた。



挿絵(By みてみん)










TRUE END





 暗い川の水面に、うさぎの仮面が浮いていた。その近くを泳いでいた水鳥が突然大きな鳴き声をあげて消えた。


 水面から伸びた手が、暴れる水鳥を冷たい水面下に引き摺り込んだのだ。


 後に残った水鳥の羽が、幾つも広がって行く波紋の間をゆらゆらと漂っていた。その中からもう一度手が伸びると・・・・・



 その手は、うさぎの仮面を掴んだ。



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