29
翔は男に謝罪し、再び森を彷徨った。
歩き疲れてしまい、地面に腰を下ろした。
ズズズ・・・ズズズ・・・ズズズ・・・
何かを引きずる音がする。
翔は音の方に顔を向けると、鉈を引きずったうさぎ男を見つけてしまった。
「うわっ!!!!」
思わず叫んでしまった。
逃げ出そうとしたが、足がもつれて派手に転んでしまった。
男は鉈を引きずりながら、どんどん翔の元へ近づいてくる。後退りしながら翔が叫んだ。
「来るな!! 助けてくれ!! 頼むから、もうやめてくれ・・・!!!」
泣きながら命乞いをすると、うさぎ男が低い声で笑い始めた。その声は次第に大きくなり・・・・・・遂には大笑いし始めた。翔は泣きながら「あれ?」と思った。
「ごめんごめん、そんなに怖かった?」
「へ・・・?」
うさぎ男が仮面を取ると、笑い過ぎて泣いている智也の顔が現れた。
「お前怖がりすぎ! 本気で泣いてやんの!」
「おかげで良い絵が撮れたぜ。」
「・・・はぁ?」
木の影から亮介と海斗が出て来た。
訳が分からず翔が急いで立ち上がり、3人の顔を順番に見比べていると北原さんもやって来た。
「なんでみんな元気なんだ? どうなってるんだ??」
海斗が大笑いしながら翔に話しかけた。
「まだ気づかないのか? どっきりだよ! みんなでお前を騙したんだよ。本気でビビってくれるから面白い映像が撮れた。これ編集してネットにあげようぜ。」
「初めから翔くんを驚かそうって話を持ち掛けられていて・・・私もあなたを騙す事になってしまって、ごめんなさいね。」
北原さんは申し訳なさそうに翔に謝罪した。
「な、なんだよ・・・」
翔はへなへなとその場に崩れ落ちた。
「手が込みすぎなんだよ!!!!!」
翔が叫ぶと、その場にいる全員が大笑いした。
その声を聞いて、翔もつられて笑ってしまった。
FUNNY END