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迫ってくる鉈を間一髪で避けた。
智也はもう一振り大きく振りかぶると、逃げる翔に鉈を振るった。
鋭い刃は翔の足を狙ったが、かすめただけで当たりはしなかった。そのまま空を切った鉈の刃は、斧を持ったもう一人のうさぎ男の足に刺さってしまった。
大きな悲鳴があがった。
智也はすぐに鉈を抜いたが、うさぎ男が斧を構えて智也に突進した。それを避け男の腕を智也が掴み抑え込もうとしたが、激高しており斧を振り下ろそうと暴れていた。
「よくもよくもよくも俺を刺したな!!!」
「わ、わざとじゃ・・・」
「刺した! 刺した刺した刺した刺した刺した!!!」
「だからわざとじゃないって言ってるだろ!? 聞こえないのか!?」
智也はどうにかうさぎ男を振り払い逃げたが、男は「刺した」と喚きながら足を引きずり智也を追いかけている。
翔はその隙に亮介の傍に駆け寄った。
「亮介、大丈夫か?」
「くっっそ痛い・・・死ぬかも。」
翔は亮介に肩を貸すと立ち上がらせた。
亮介の出血の多さに翔は眩暈がしたが、このままにしておく訳にはいかない。
止血しなければと、亮介を支えながら別荘に向かった。
途中、川のそばでうさぎ男と智也がまだ揉み合っているのを見かけた。
2人が足を止めると、智也達は川に転落してしまった。
「まじかよ・・・」
亮介が青ざめながら呟くと、暗い川から智也の顔が出て、一瞬目が合った。
「助けてくれ!!」
翔は辺りを見回すと、川の近くに放置されているロープがある事に気がついた。これを投げれば助けられるかもしれない・・・
翔は亮介を置いて走り出し、ロープを手に持つと智也のために川に向かって投げた。
しかし、もう智也の姿は見えなかった。
眼前には大きくて暗い川が広がるだけだった・・・・・・
翔が亮介の元に戻ると、2人は無言で別荘へ向かった。
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