23
「寝室に戻って、俺のスマホを充電しよう。」
亮介の提案に翔が頷いた。
2人は音を立てないように、一段一段慎重に階段を登った。
寝室の前まで行き、ドアをそっと開け、中を覗き込む。誰もいなかった。
安堵のため息をつくと、部屋の電気を点け2人はそれぞれのベッドに戻った。
翔はバッグに入っていたペットボトルのジュースを飲み、それからスマホを探した。だが、やはり見つからなかった。
亮介はプラグに充電器を差し込み、スマホの充電を始めた。
ガチャ。
「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」
同時に悲鳴をあげた。
うさぎ男に見つかってしまった。
男は斧を構えて翔に突進してきた。
両腕で頭と顔を隠し、強く目を瞑った時だった。
「やめろっ!!」
亮介がうさぎ男にタックルした。男は弾き飛ばされベッドに倒れ込んだが斧は握ったままだった。
亮介が翔の腕を引っ張り、2人は部屋の外に逃げ出した。
近くにあった部屋に入り、亮介はクローゼットの中へ、翔はベッドの下に隠れた。
すぐに足音が聞こえドアが開いた。
「どこだどこだどこだどこだどこだ・・・」
仮面越しのくぐもった声が、翔と亮介を執拗に探している。
翔はベッドの下から動き回るうさぎ男の足をじっと見つめ息を潜めた。
男がベッドに近づく度に、叫び声をあげそうになり必死で口を抑え目を瞑った。
やがてドアを開ける音がし、足音が聞こえなくなった。
早鐘のように鳴る心臓を落ち着かせるために、何度も深呼吸を繰り返した。
それからゆっくりとベッドから出ると、クローゼットを開けた。
顔を真っ青にしてクローゼットの中にもたれている亮介を見つけた。
「助かったな・・・なんなんだよ、あいつ。」
「異常者だろ、きっと。頭がおかしいんだよ。」
2人は部屋の中を見回した。無我夢中で入ったため気づかなかったが、広めの寝室だった。
翔がベッドのサイドテーブルに近づくと、文字の彫ってある器があり、中に鍵が入っていた。器には「ひなこ」と彫られている。翔はその文字を見て青ざめた。
「亮介、これ見ろよ・・・」
翔が呼ぶと、亮介がやって来た。器の文字を見せると、亮介の表情が固くなった。
「なんでこの名前がここに・・・」
「・・・亮介、もしかしたら、こうなったのって、俺達の運命なのかな?」
亮介が顔を上げて翔を見た。翔は真っ青な顔でボソボソと話を続けた。
「遊びに来た別荘にいきなりおかしな男が現れて、俺たちを狙ってるんだぞ。そこにひなこの名前が出てくるなんて・・・これが単なる偶然なのか?」
翔はそう話し終えると、鍵を取りポケットにしまった。
「どうするんだよ、その鍵。」
「俺たちが襲われた理由が、この鍵の先にあるかもしれないだろ。どこで使うのか確かめたい。」
亮介は眉間に皺を寄せ不機嫌そうに吐き捨てた。
「襲われた理由なんか無いだろ。お前考え過ぎだ。うさぎ男は頭のイカれた異常者だ。早くここを出よう。」
亮介の言う通りかもしれないが、翔は鍵の事が気になった。
俺は・・・
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