12
翔は音のした方へゆっくりと近づいた。
音は一階の廊下の奥から聞こえたが、今は雨の音しか聞こえない。時折雷が鳴っている。
暗闇に目が慣れてきて、何となくだが廊下の先が見えてきた。
ドアが向かい合わせに2つ並んでいた。
その左側のドアの前に人が立っている。人影は翔の方を向くと、ビクッと震えた。
その様子を見てうさぎ男ではないと判断した翔は、ゆっくりと人影に近づいた。
「・・・亮介?」
「なんだ。翔か。」
亮介は安堵の溜め息をつくと、翔の顔を見て少しだけ笑った。
「ガチャガチャ音がするから見に来たんだ。音が響いてたから、静かにやらないとうさぎ男に見つかるぞ。」
「まじか・・・ここのドアを開けようとしただけなんだけど。」
亮介は左端のドアには鍵が掛かっていることを翔に説明すると、不安そうな顔で問いかけた。
「ところで、海斗は?」
「分からない。うさぎ男に襲われた後、俺は外に隠れてたから。」
「俺はそこの部屋に今まで隠れてたんだ。」
指差した先のドアが、少し開いていた。中を覗くと物置きになっていた。
うさぎ男に見つからないよう、2人は物置部屋に入りドアを閉めた。
「あのうさぎ男の足下にいたの、智也だったよな・・・お前、見たか?」
亮介に聞かれ、翔は首を縦に振った。
落雷の一瞬しか見えなかったが、斧を持つうさぎ男の足下には血が広がっており、そこにはたしかに智也が倒れていたのを思い出した。
翔は気分が悪くなり、口を押さえた。
「俺、スマホの電池が切れてて・・・翔のは?」
「失くしたかも。」
「まじか・・・2階まで戻って充電しないと、誰とも連絡が取れないじゃん。」
翔は固定電話で通報しようとしたのを思い出し、亮介に話した。
「その電話で通報して、それから海斗を探そう。」
「分かった。」
2人は静かに部屋を出た。廊下に人が居ないのを確認し慎重に進んだ。
階段の前を通り過ぎ、裏手に回る。
固定電話があった。
亮介が受話器を耳に当て通話ボタンを押そうとした所で眉間に皺を寄せた。
「これ、音がしないぞ。」
ボタンを幾つか押してみるが、やはり反応がない。
亮介は電話線を目で追っていき、ため息をついた。
「だめだ。切られてる・・・」
「嘘だろ・・・」
翔も電話線を確認すると肩を落とした。
「寝室に行って、それから海斗を探すか?」
亮介が返事をしようとした時だった。
ピーッ、ピーッ・・・
2人は無言で見つめ合い、翔が先に尋ねた。
「何の音だろう。」
「さぁ。でも、風呂場の方から音がしたぞ。行ってみるか?」
翔は顎に手を当て、口を開いた。
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