表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】方舟の子 ~神代の遺産は今世を謳歌する~  作者: 篠見 雨
第4章 聖ペトログリフ王国とユーラビスタ帝国
96/270

第4章 第6話 迷宮都市群のクラン≪武器庫≫

エイル失踪当時のお話と、彼を待つクランの話です。

遡る事四年前。


 迷宮都市群を拠点に活動する探索者クラン≪武器庫アーセナル≫は特級難易度のダンジョン【百竜百魔の岩戸】の探索中に、クラン・リーダーのエイル・カンナギを失った。


 炎の老竜との戦闘直後に現れた魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)の襲撃により、戦線は崩れた。エイルは近場に解明済の転移トラップが在ったのを思い出し、そちらへ魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)を誘引して一緒に転移した。


 転移陣は強制力の高い物と低い物がある。

 強制力の弱い物だと、転移発動時点で魔法陣に入りかけていた者は丸々残される安全設計だ。

 一方、強制力の高い物だと、転移発動時点で魔法陣に入りかけていた者は、空間ごと切断されて魔法陣内に入っていた部分だけが強制的に飛ばされる。

 安全への配慮が足りないのは、それを仕込むだけの余力がない程、密度の濃い転移陣が書き込まれているためだ。より古代の物に見られる乱暴な仕掛けだった。


 この時、エイルが飛んだ魔法陣は強制力の弱い物で、魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)を転移陣内部に縛り付けるため、エイル自身も一緒に転移した。


 転移した先の迷宮内構造物での戦闘中、エイルが吹き飛ばされてぶつかった壁が崩れ、その向こう側に書き込みの細かい転移陣があった。強制力の強い転移魔法陣特有の情報量に、エイルは賭けた。

 魔法陣内部に飛び込んで魔法陣の中心に傷口から滴る血液を押し付ける。エイルを逃すまいとする魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)が魔法陣の境を跨いでエイルに迫る。エイルは魔法陣を強制起動しながら魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)を押さえに掛かったが、そう簡単な敵ではなかった。転移陣発動までの攻防で片腕を千切り取られ、転移陣の発動で片脚から脇腹にかけても欠損するダメージを受けた。対して魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)も片腕から頭に掛けての部位が強制転移に巻き込まれた。


 転移先で魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)の死を確認し、満足げに笑った。急速に明度の落ちていく視界と遠のく意識の中、自分の死を確信する。「魂の離散とはこういう感覚なのか」というのが、エイルの最後の思考だった。


武器庫アーセナル≫がエイルが利用した転移トラップを使って後を追うと、強制転移により切断された魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)の死骸と、エイルの肉体の一部が見付かった。


 未確認の強制転移陣は危険過ぎて普通は使用しない。エイルが使ったのはそれだけ追い込まれていたからだ。「転移先で生きているかも」とは皆が抱いた希望であり、同時に欠損した肉体で転移してその後が無事だとも思えなかった。


 ≪武器庫アーセナル≫は、探索者ギルドに新たに見付かった強制転移陣と、それを使用したリーダーの失踪を伝えた。

 後日、ギルドの調査が入った時には強制転移陣は稼働を停止していて、リーダーの転移先につながる情報は途絶えた。


 それから半年程経った頃に、探索者ギルドにエイル・カンナギの生存報告がされた。「とりあえず大丈夫、迷宮都市群に帰る」との伝言が伝えられた。


 生きていて、戻ってくるというのなら戻って来るのだろう。サブ・リーダーのトーコ・アマツハラはエイル不在の間のリーダー代行としてクランの皆に、活動は続けながらリーダーの帰りを待つ事を宣言した。


 それから三年半が経過した現在、未だにリーダーは帰ってこない。


 ≪武器庫アーセナル≫はエイルをはじめ古参幹部が長命種のクランだ。長命種かれらにとってはまだ三年半でしょ?くらいの感覚だが、汎人種ヒューマンの感覚では帰りが遅すぎて怒りが湧いてくる。「迎えに行くべき派」と「待っていれば良い派」に分かれ、意見が対立する。


 迷宮都市群の≪武器庫アーセナル≫のクラン・ハウスでは今日もエイルの不在を肴に宴会が行われていた。

評価、ブックマーク登録、いいね などの応援をお願いします。

モチベーションや継続力に直結しますので、何卒よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ