第4章 第5話 魔力の削ぎ合い削り合い
迷宮五十八階層の透明になる魔物は、エイルを餌に釣って他で倒すパターンが確立すると、安定して潰せた。タネが分かってしまえば奇襲もそう受けなかった。最初に目星を付けておいた塔状の構造物に着くと、五十九階層への下り階段の部屋だった。
そこで一旦休憩を挟み、食事と休息をしっかり摂った上で五十九階層へと潜る。
迷宮五十九階層。
再び迷路フロアに戻り、現れたのは複合形成獣だった。今回の複合形成獣は猿の顔に虎の四肢、尻尾が蛇だった。胴は特に特徴的な模様もなく、何なのかは分からなかった。
「鵺だな。東方諸島群でよくいる複合形成獣の種類だ」
エイルが複合形成獣の構造からそう判断する。
「へ~、特徴は?」
マツリがエイルに詳細を確認する。
「ひょーひょー、と鳴く」
「で?」
「え?えーと……。後は空中を駆ける、かな?尻尾の蛇に毒があるとか……」
情報は雑で少なかった。
鵺はその情報通り、ひょーひょーと鳴き声を上げながら宙を駆けて来る。四人は鵺を十分に引きつけ、先頭に居たエイルに飛び掛かってきた所に四人が長槍を取り出して構え、鵺を迎撃する。
鵺は突然現れた槍衾に自ら突っ込み、痙攣を一つ残して動かなくなった。
眉を寄せたマツリが異空間収納を使ってみるとあっさり回収できたため、今ので終わったらしい。
その後に出て来た鵺も接近する時に必ず「ひょーひょー」と鳴くのでタイミングが合わせやすく、実に手応えのない複合形成獣であった。
迷宮六十階層。
頭部が鴉で背中に翼を持ち、東方諸島群の山伏の衣装を纏った鴉天狗が現れた。二~三体で行動を共にしており単体を釣り出すのは難しかったが、三体同時で襲って来たのをエイルとマツリが一体ずつ受け、ラクスレーヴェとアーシェスがもう一体を二人掛かりで受ける。
鴉天狗が風魔法を使おうとすると、金行の魔力を纏わせた攻撃で風魔法の構築を乱す。風魔法が不発になってきょとんとする鴉天狗を長槍で刺し殺すだけの簡単な相手だった。
迷宮六十階層、ボス戦。
両開きの大扉を開けると、巨大な人骨が一体居た。尾骨から頭骨までの高さが二十メル程あり、背骨から尾骨まではあるが、腸骨など骨盤を構成する他の部位はなく、上半身だけが宙に浮いているような姿をしている。生命感知に反応はなく、魔力反応だけが感じ取れる。
「餓者髑髏だな。これも東方諸島群の魔物だ」
エイルが見覚えのある相手らしく、名前と来歴を告げる。
「ここ東方諸島群の魔物が多いね?」
「そうね」
餓者髑髏は俯いた状態で宙に静止している。ボス部屋の入口周辺は感知範囲外なのだろう。
「餓者髑髏はゴーレム系と違って核がないんだよ」
エイルが特徴を述べる。
「核がないの?全身砕いて動かなくするの?」
マツリが面倒臭そうに言う。
「魔力を込めた攻撃で餓者髑髏の魔力を散らせていけば動かなくなる」
「魔法で直接攻撃か、魔力を込めて武器で殴る、か?」
「そういうこと」
核持ちであれば核さえ破壊すればいいが、魔力を消費させるのは骨が折れそうだった。
「私とアーシェは魔法で攻撃しましょうか」
ラクスレーヴェがアーシェスに提案し、アーシェスもその提案にのった。
「接近戦は先生達にお任せしますね」
アーシェスに頷くと、エイルとマツリが駆け出した。
エイルとマツリは餓者髑髏の尾骨から仙骨、脊柱などの届く範囲に大戦鎚に魔力を込めて打ちつける。
餓者髑髏が迎撃に拳を振るってくると、それをフルスイングの殴打で相殺する。
魔力を魔力で削ぎ合い、潰し合う。
一方、ラクスレーヴェとアーシェスは木行から火行、土行、金行、水行、また木行に
戻る五行相性の流れで魔法を撃ち続ける。
胸骨から頭骨の辺りに掛けて魔法が繰り返し炸裂している。【樹縛】で縛り、【火葬】で焼き、【岩槍】で貫き、【岩槍】から【金杭】を生じさせ、【水牢】で動きを阻害し、【樹根】が根を張って魔力を吸い上げる。五行属性を強化する循環が上手く回り、エイル達と遜色ない速度で餓者髑髏の魔力を削り取っていく。
戦闘中、フルスイング直後のマツリが殴打を喰らったが、自ら飛んで錬気を瞬時に高めてそのダメージを削ぎ落していた。見た目だけは派手に転がった程度で、すぐに戦線に復帰していた。
半時間程の戦闘の末、餓者髑髏が魔力切れで崩れ落ちた。
それを見てエイルも倒れ込み、マナ・ポーションとマナ・スモークで魔力の緊急回復を図る。
「最近薬物に頼り過ぎな気がする」
「魔力枯渇になったら復帰に時間掛かるんだから我慢しなさいな」
全然平気そうなマツリが肩を竦めてマナ・スモークに火を点してやる。
マナ回復薬が染み渡るのを感じて漸くエイルが立ち上がると、下り階段部屋へと移動していった。
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