第4章 第3話 牛頭鬼と馬頭鬼
迷宮五十五階層、ボス戦。
両開きの大扉を開けると、二体の人型の魔物がいた。二体とも身長は三メル近く、一体が頭部が馬の形状をしており、もう一体は頭部が牛の形状をしている。二体とも黒光りする長い戦棍の様な武器を手にしている。
「ミノタウロスと……馬タウロス?」
マツリが首を傾げる。
「あれは牛頭鬼と馬頭鬼だな。東方諸島群で見かける鬼系の魔物だ」
エイルが訂正をしておく。
「後はそうだな……。怪力で残忍、獲物を長くいたぶる趣味がある」
「複合形成獣みたいな性格してるね?他の情報は?」
「他?他かー。殴れば死ぬ?」
「おっけー!」
マツリが馬頭気に向かって突貫していくのをみて、エイルが慌てて牛頭鬼に向かう。
「ラクスとアーシェも牛の方手伝って!マツリは馬の方しばらく頼む!」
「りょ」とマツリ、「「はい!」」とアーシェとラクスの返事が続く。
エイルが大身槍の長槍を手に駆ける。後ろから続くラクスレーヴェとアーシェスも同じように長槍を手にしている。牛頭鬼のリーチは広く、一歩踏み込んでの戦棍の振り下ろしがエイルに迫るが、重心移動の歩法で一瞬停止するような間が生まれ、戦棍はエイルを捉えられず地を叩いた。
牛頭鬼の振り下ろしを誘ったエイルは、大身槍を石突側で長く持ち突貫する。その穂先は牛頭鬼の下がっていた頭部を狙うが、牛頭鬼は首を捻る事で躱してみせ、大身槍の穂先は牛頭鬼の右の鎖骨下を穿つ。ラクスレーヴェとアーシェスはエイルと逆側、左側面へと回り、それぞれ左脇腹に大身槍を刺し込み捩じり込んだ。捩じり込んだ槍はそのまま手放し、新たに取り出した戦斧を左大腿部の外側と内側にそれぞれが叩き込む。
エイルも大身槍を刺し込んだまま手放していて、左半身へ意識が持って行かれた牛頭鬼の顎を大戦鎚でカチ上げた。牛頭鬼は倒れ込みつつも戦棍を振り回し、それがエイルの右脇腹を薙いで吹き飛ばした。
エイルは肝臓側を強打されたことで肺が圧迫され呼吸困難に陥り、折れた肋骨も内臓を傷付けている気がする。派手に転がると壁にぶつかり、崩れ落ちた。
「ッ!!」
ラクスレーヴェとアーシェスはエイルが吹き飛ばされたのを見つつも、自分の仕事に掛かる。脳震盪を起こして立ち上がれず藻掻いている牛頭鬼の太い首へ、二人で大戦斧で交互に打ち下ろし、息の根を止めた。
吹き飛ばされたエイルの方も気になるが、二人はマツリの増援に動く。マツリが引きつけていた馬頭鬼の背後から、体重の乗っている左脚の膝裏の腱へと、大戦斧を交互に叩き込む。
刃の埋まった大戦斧は手放し、ラクスレーヴェが両手剣を、アーシェスが大戦鎚を手に追撃する。アーシェスは大戦鎚を刃が埋まった大戦斧に叩き込み、更に食い込ませる。ラクスレーヴェは脚を潰され下がった上半身に背後から袈裟斬りに斬り掛かる。
背後からの増援に注意が散った馬頭鬼にマツリが大太刀を振り抜き、その首を斬り落とした。
エイルはよろよろと立ち上がり掛けていたが戦闘が終わったのを確認すると腰を落とし、治癒魔法とナノ・ユニットによる修復に集中した。
死骸を収容したマツリがマナ・ポーションとマナ・スモークを渡すと、ポーションを煽りマナ・スモークを咥える。右脇腹を押さえつつ目線で火を要求すると、マツリが灯してくれた。
「久しぶりに強打貰ったみたいだね」
マツリが物珍しそうにそういうと、心配そうにしていたラクスレーヴェとアーシェスは「あれ?この傷その程度の反応でいいの?」という不安感を顔に出してマツリを振り返る。
「大丈夫大丈夫、エイルなら即死しなければなんとかなる」
ナノ・ユニットのお陰で確かにその通りなのだが、痛い物は痛い。試したことはないが切断された四肢くらいはくっつきそうだと自分でも思う。
「あー、ゴリゴリ魔力喰われてるわ……魔力枯渇になったらすまん」
エイルは片手でごめんねのジェスチャーをマツリに返しておく。エイルが散らかした武器はラクスレーヴェとアーシェスが拾ってきてくれたので、異空間収納に回収しておく。下半身に力の入らないエイルは、マツリが襟元を掴んで引き摺るような手荒い感じで運ばれ、下り階段の部屋へと移動した。
「今日はここまでだな」
エイルの宣言で野営準備に入る。近場に別の探索者パーティがいたため【コンテナ・ハウス】は設置せず、不寝番を四交代しながら休息をとるのであった。
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