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【完結】方舟の子 ~神代の遺産は今世を謳歌する~  作者: 篠見 雨
第1章 遺失技術と再起動
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第1章 第9話 ナハートの街と探索者ギルド(1)

 最初に助けた四名、探索者のカナリエとレーヴィア、貴族の子女らしきサイアリスとその侍女レフィと合流予定となっていたナハートの街にようやく辿り着いた。ナハートはエイルが想像していたよりも大きな街で、外壁も高さが六メルはある立派な物だった。


 西門からの入門時に衛兵に賊の壊滅と捕虜三人のこと、捕まっていた虜囚五人を救出して来た旨を伝え、賊を除く七名分の入市税をエイルが支払った。


「入市税は確かに受け取りました。ようこそナハートの街へ。賊の捕虜三名と救出された五名については、衛兵隊で一旦お預かりします。馬の方もこちらで買取しますので、代金の方もその際にご連絡いたします。連絡先については予定されていますか?探索者ギルド宛にします?」


「探索者ギルド宛でお願いします。これから挨拶に行きますので、場所を教えてもらえますか?あと、処理した賊の死体も一応あるんですが、引き渡しで良いですか?」


 衛兵に賊の背後関係の調査、虜囚達の保護などの引継ぎを依頼し、探索者ギルドの所在地についての情報を得ると、救出した五名と挨拶を交わした。


「それでは皆さん、ここでお別れです。衛兵さん後はお願いします」


「助けていただき、ありがとうございました」

「お兄さんお姉さん、ありがとうございました!」

「夫の無念も晴れたとおもいます。ありがとうございました」


それぞれに礼を述べると、手を振り返して門を潜るのだった。


 ナハートの街は森が近いため木造建築が多く、白い壁に柱を焦げ茶色に塗って使う様式で統一されていた。屋根も柱と同じく焦げ茶色で統一されており、風光明媚な光景に頬が緩む。探索者ギルドは南門の広場に面しているとのことで、特に迷うこともなく景色を楽しみながら散歩感覚で歩くことができた。探索者ギルドの建物は建て直したばかりなのか、新しい建屋だった。扉を潜ると騒がしい食堂エリアが右手側、左手側に依頼掲示板、奥に受付カウンターがあった。


「すごい、想像通りの探索者ギルドだっ」

 マツリが興奮気味に目を輝かせた。エイルは慣れているため「どこも似たような作りだよ」とだけ返す。キョロキョロしているマツリの手を曳いてカウンターまで進む。待ち列の短いところを選んで並ぶ。列は順調に進んで行き、数分程度でエイル達の番となった。


「ようこそ探索者ギルドへ。本日のご用件は?」

「こちらの女の子の探索者登録と、俺が訳アリの再発行をお願いしたい」

「訳アリですか?伺います」

「本当に訳アリなんで、静かにお願いしますね」


職員が聞く姿勢を見せてくれたので、エイルは懐から自分の探索者プレートを取り出した。緋色の金属の板だった。


「これは……」


 職員はそのプレートをみて息を飲む。赤い金属プレートは特級探索者”日緋色金級”の身分証である。エイルは口の前に人差し指を立てて「静かに」のジェスチャーをしつつ、プレートに魔力を流した。刻まれた文字が光り、本人証明が成立する。


「本人確認が取れました……。あの、随分若返っていませんか?」

職員は困惑顔を隠せていない。


「それが訳アリの理由でして。この成りでこのプレートは余計なトラブルの予感しかないので、新規で二枚目のプレートを作らせてもらいたいのです」

「はぁ……。ギルドに行方不明の連絡は届いていましたが、まさかこのような……。ギルド長に話を通してきます。少々お待ちください」


 職員が奥に引っ込むと、代役の女性職員が出てきて列を再度さばき始めた。エイルとマツリは少し横にズレて待つ。しばらくすると、応接室に通された。部屋には上座に三十路頃の男が腰かけていた。体格は立派で、良く鍛えられている事が分かる。


「ナハートの探索者ギルド長、ガウェーズだ。」

「日緋色金級エイル・カンナギ。訳あって身の丈が縮んでしまった。こっちは連れのマツリ・サクラダという。宜しく頼む」


 二人はガウェーズの対面に座ると、早速とばかりにエイルは懐から日緋色金のプレートを出して魔力を通して見せる。


「本人認証も出来ているな……。それじゃあアンタほんとにエイル・カンナギなのか」

「そうなる。この背格好で日緋色金のエイル・カンナギだと広まっても、面倒事が寄ってきそうで困っているんだ。偽名で二枚目のプレートを作らせて欲しい」


 ガウェーズは顎を擦りつつ確認をする。


「そうなった理由は分からんが、二枚目のプレートが必要な理由は納得した。発行しよう」

「助かる」

「ただし、ギルド間通信で情報共有はさせてもらうからな。あと、クランの方にも発見報告は入れさせてもらう」

「あぁ、了解した。むしろ助かる。迷宮都市群に戻るつもりだから、その伝言も頼む」

「わかった。プレートはこのまま応接室で作って持って行ってくれ」


 ガウェーズが席を立つと、すぐに機材を持って職員がやってきた。登録用紙に必要事項を記入し、機材に魔力を通して登録プレートと魔力をリンクさせる事で作業が完了する。


 プレートは中級探索者に使用される鉄製。設定は中級下位、偽名は【ラムザ・クロガネ】。マツリの方もエイルの推薦があり中級下位からのスタートとなった。完成したプレートを受け取り、職員に近場のお勧めの宿を教えてもらった。


「あぁ、そうだ。カナリエとレーヴィアという汎人種ヒューマンの女性二人組が来ていると思うのだけど」

「はい、先日ギルドに参りました」

「なら、伝言をお願いする。”仇は討った。捕虜は衛兵所に預けた”」

「承りました」

「同じ件で、サイアリス・フィンレット嬢に連絡を取りたい。宿を取って部屋が決まったらまた来る」


 二人は探索者ギルドを出ると、南門広場に程近い宿屋【西華亭】で一人部屋を二つ取り、昼食をとった。


「……。ねぇ、エイルってすごい有名人だったの?」

「あぁ、長命種だから探索者歴も長いんだ。それより偽名の【ラムザ・クロガネ】で頼む」

「了解。その名前の由来は?」

「故郷の昔話に出てくる人斬りの名前」

「あ、はい」



 久しぶりのちゃんとした食事を楽しんだ後、再び探索者ギルドへ。窓口で宿泊先を伝え、サイアリスの連絡を回して貰うように手続きをすると、取り急ぎで行う予定は完了した。


「さて。マツリさんや、どうしますね」

「どうしますかね、ラムザ君」

「特に希望なしなら、食品とか生活物資の買い出しに行きますか」


中央通りの商店街で調味料や乾燥食材、野菜、屋台料理などを購入して収納し、宿屋へと戻るのだった。

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