第3章 第38話 誕生日シーズン再来
「ということでマツリさんや、アイデア募集中です」
ジト目を喰らった。分かってる、そんなの人に訊くなってことだよね?うん。
「なんかさー、ほら、こう、欲しがっている物とか何か言ってなかった?」
どうせなら喜んでもらいたい。なのでこうして訊いているのだ。
「ラムザ好みのえっちぃ下着でもあげれば喜ぶとおもうよ?」
「訊かなきゃよかった!」
困った時の魔道具屋さん。安定感が半端ない。やはり装飾品の魔道具が良いかな。
去年は【精神魔法耐性】の指輪だった。これはかなり役に立ち、これのお陰で生還できた場面もあった。≪緋の戦乙女≫の救出作戦の時とか。
今回も、そういう実用性に長けた物が良いと思う。【毒耐性】かな?耐性のある毒の種類で値段が大きく変わるようだった。なるべく危険な毒に耐性を持つ物を選ぶと、自然と高価な物になってしまうが、それで命が買えると思えば悪くはない。幸い使う予定のないお金はたっぷりある。
女性店員に相談をしてみると、常に身に着けて身を守る物であれば、と結局指輪タイプになった。去年も指輪だからどうかと思うが、ペンダントは服装に合わせて変えたり外したりすると言われてしまえば、納得させられてしまう。
付与効果が強力な物は素材に魔力金属系が使われる。前回も天銀合金製の指輪だったが、今回も結局はそうなった。プレゼントがワンパターンとか思うところはある。効果のためだ。目を瞑って欲しい。
去年買った天銀合金製の指輪よりも飾り彫りが目立つが、場面を問わず使える範囲の清楚な華やかさの範囲だと思う。
【自動サイズ調整】で【毒耐性】が付与された天銀合金製の指輪を女性用三つと男性用一つを購入した。
昼過ぎに店に行ったのに、出た時には既に夕暮れ時であった。自分でも悩みすぎだとおもう。
◆◆◆◆
夕食後、女子部屋にお邪魔して三人にプレゼントを渡した。誕生日が若干早いラクスレーヴェに合わせて前払いとさせてもらう。去年と同じ渡し方だった。
「お嬢様方、お誕生日おめでとうございます。今年は【毒耐性】の効果が高い指輪をご用意いたしました。お嬢様方の身に危険が迫った時、この効果でお命が守れれば幸いです」
また指輪かよ!みたいな反応だったら嫌だなーと思いつつ畏まって様子を見ていると、どうやら三人とも喜んでくれたらしい。特別試合でウルズ・ゴーガンと戦った時より緊張した。難所を乗り越えた気持ちで一杯だ。今日は瞑想睡眠せずにガッツリと寝よう。
部屋に戻るとベッドが変わっていた。シングルサイズだと正直狭かったのでありがたい。あと枕を増やしてくれたのも頼んだのを覚えていてくれたらしい。枕が一つだと気が付いたら頭の下ではなく抱え込んでいる事が多い。なので一つ頭の下、もう一つをはじめから抱えておくのだ。睡眠中の抱きつき癖は意識がないから治しようがない。苦肉の策である。
ベルレイユ家の侍女ーズは主人を売りはしても仕事はちゃんとするということか。見直した。
新しく柔らかいベッドで横になると、何かに飲み込まれるかのように意識がすーっと沈んで行った。
◆◆◆◆
深夜のベルレイユ公爵家。
「報告します。標的の入眠を確認。部屋の扉は既に開錠を済ませております」
跪いた侍女が真面目な声で報告をする。それに真面目な顔で頷き返したのはラクスレーヴェである。
「よろしい。では作戦を決行します。いきますよ、マツリさん、アーシェさん」
◆◆◆◆
翌朝、エイルが目覚めると枕の代わりにアーシェスに抱き付いていた。
「!???」
後ろに下がろうとすると直ぐに柔らかい物にぶつかる。恐る恐る振り返るとラクスレーヴェがエイルを後ろから抱えるように寝ていた。更にその奥には、マツリが掛け布団を蹴飛ばして寝ていた。
「(ベッドが大きくなってたのはこの為か!ちくしょう、また侍女ーズに計られた!)」
何とか脱出しようとするが、前から後ろから抱えられていては起こさずに抜け出す事が難しく、次第に諦めの境地へと至り、二度寝した。
二度寝から目覚めた時は既に一人になっていた。何も起こらず、何も気付かなかった。良いね、俺。
◆◆◆◆
「マツリ先生。ラムザ先生はヘタレが過ぎるとおもうのですが」
ラクスレーヴェに同調するようにアーシェスが頷く。
「せめて眠っているところに悪戯するくらいは男の嗜みなのでは?」
マツリは半眼で二人をみやる。
「悪戯で済まなくなりそうだからやり過ぎは駄目ですよ?いざとなったらラムザを殴って寝かしつけますからね」
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