第3章 第37話 マツリに相談してみる
マツリからのアドバイスで失踪者の救出が出来た事で、ある程度肩の荷が降りたのだが、失踪者の人数からみて救出した人数はまだ足りていないらしい。別の拠点に隠されているのか、闇ギルドに連れて行かれているのか、はたまた貴族派の手に渡っているのか。
依頼主と依頼主に連なる黒幕の貴族達は無事に逮捕されたと公爵からは聞いたが、行方不明者の問題がまだ残っているらしい。後は大人が頑張るということで、依頼は一旦完了の扱いとなった。
また、今回の事件は大事になっていたようで、解決に尽力したとして再び褒賞の話に及びかけたが、現金でのお支払いで済ませて頂いた。別に現金が欲しい訳でもないのだが、それ以外の褒賞には要らない物が付いてくる。さりげなく宰相の身内だとか王族に連なる者だとか、嫁にやろうとか言われても、会ったこともない人を嫁に欲しい訳がない。爵位と同じでお断り案件である。
という訳でギルドの銀行口座の預金額が、そこそこの貴族家の予算?という程になってきた。食と住が提供され、衣もそれなりに持っていて、武装も新しく買う必要がない。最近減る機会がないのだ。世の経済を回すには使った方が良いと昔の友には言われたものだが、だからと言って要らない物まで買い込む趣味はない。
そして困った事がもう一つ。ギルドから魔法金属級への昇進の打診を受けた。日緋色金の事を知っているユーフェミアが、気まずそうに言って来た。これで天銀にでも上れば、日緋色金を隠している意味がない。そろそろ潮時かもしれない。
今後の身の振り方について頭を悩ませていると、既視感のある赤髪の少女が近付いてきた。
「確か倉庫で助けた……」
名前は出て来ない。何人も同時に喋るから聞き取れなかったのだ。
「はい。その節はお世話になりました。シズリネ・ランカーシャと申します」
「あ、いえ、どうも。ラムザ・クロガネです。お元気そうでなによりです」
シズリネ・ランカーシャ。よし、今度は覚えた筈。二言三言世間話をして別れ、錬武場に向かう。
錬武場に入ると、いつもの三人が先に来ていた。
「すみません、お待たせしました。ちょっとマツリ借りて良いですか?」
三人とも首肯して返したので、マツリを手招きする。
「なに?」
「ちょっと遮音結界で相談事を」
「わかった」
遮音結界を張ったことを確認して、エイルが口を開く。
「探索者ギルドから《黒絹》の天銀級への昇格の打診があった。魔法金属級になってしまうと日緋色金級を隠している意味が薄くなってしまう。そろそろ色んな意味で潮時かなーと思ってさ。」
「ラムザ・クロガネを止めてエイル・カンナギに戻る?」
「天銀の次の神鉄鋼に上る時でも良いのだけれど。どう思う?俺の回復具合とか」
「昔ほどまだ動けないし魔法も使えてないんでしょ?時期尚早では?」
マツリが冷静に待ったをかけてくれる。
「……そっか、そうだよな。ありがとう」
マツリに礼を言う。
「まぁ、お嬢様方に先に教えちゃうのは止めないよ?隠し事してるのが心苦しいんでしょ?」
エイルはマツリの言葉に目を瞠った。
「あー、そうか、そういうことなのかな。ありがとう、スッキリしたわ」
お嬢様方の所へ戻ると、本日の特訓を開始する。
二人とも、育成開始時点からは考えられないくらいに強くなったと思う。アーシェスは武器に錬気を纏わせて切断力や耐久性を向上させられるようになってきたし、ラクスレーヴェも身体強化だけでなく、武器に纏わせて耐久性を上げるくらいは出来るようになっている。錬気に限らず、接近戦をしながら魔法を構築して使う並列行使の才能を開花させた。どちらも、第三学年の実技も免除してもらえるだろう。
あとは用兵についてしっかり学べば、即戦力の士官にも成れるかもしれない。まぁ、士官学校を卒業したからと言って軍役に就くとは限らないのかもしれないけど。
その日の特訓が終わりベルレイユ家に戻る。フェリオール家は徒歩で帰っていたが、ベルレイユ家は態々馬車を回しておいてくれる。御者さんを待たせるのも悪いので、最近は学校での訓練時間は短めだった。
帰りの馬車の中、ぼーっと窓の外を眺めていると、不意に視線を感じた。視線の主に気取られないように視線は向けず、生体感知と魔力感知を広げてみる。視線の主らしき反応は見付けたが、急速に離れて行く。逃げられたらしい。
状況は大分落ち着いたと思っていたが、まだ気は抜けないようだ。
ベルレイユ家の夕食の席で、ベルレイユ公爵から情報を頂いた。
闇ギルドの末端周辺は大方潰し終わったが、肝心の大物を取り逃がしたままらしい。新しい組織が出来るか、取り逃がした大物が再起するかは分からない。どちらにしろ、王都のような規模の街があれば、必ず闇ギルドは出て来る。こればかりは小鬼と同じで根絶が難しいと、公爵も難しい顔をしていた。
取り逃がしたといえば、帰宅時に感じた視線の件も公爵に話しておく。もしかしたら取り逃がした大物とやらかもしれない。何か判ればお互い共有しあうという事で頷き合った。
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