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【完結】方舟の子 ~神代の遺産は今世を謳歌する~  作者: 篠見 雨
第3章 ローエンディア王国と士官学校
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第3章 第30話 打ち上げと長期休暇

「特別試合お疲れ様でしたー」

 ベルレイユ家の屋敷で打ち上げである。マツリもアーシェスもラクスレーヴェも、侍女の皆様までにっこにこである。


「お嬢様かっこよかったです!あんなにお強くなられていたなんて!」

 観戦に行った侍女が仕事中だった侍女に滔々と語って聞かせている。見に行けなかった侍女達が悔しそうに、でも嬉しそうに聞いている。


 この屋敷はラクスレーヴェと侍女の距離が近くて良い所だと思う。侍女達が心からラクスレーヴェを可愛がっているのが伝わって来るのだ。それはフェリオール家も同じである。あそこも皆がアーシェスを可愛がっている。フェリオール家に帰れば、あちらでも大騒ぎするのだろう。


「ラクスレーヴェお嬢様は相手選手の動きを良く見ていて、いつも通り冷静に対処できていましたね。体力作りなど基礎的で地味な練習もきっちり積み重ねたのが良く判りました。日頃の努力の賜物ですね」

 エイルがラクスレーヴェの戦いを思い出して褒めた。

「ありがとうございます」

 ラクスレーヴェは照れくさそうに喜んだ。


「アーシェスお嬢様もかっこよかったですよ。最後の回避と攻撃が一体になった一撃、痺れましたね。日頃のマツリの悪辣な稽古に耐えてきた結果が出て良かったです」

 エイルがアーシェスの戦いを思い出して褒める。

「マツリ先生の指導のお陰ですね!」

 アーシェスも嬉しそうにしている。


「マツリは……。うん、小手を砕かず勝てたんじゃないか?ちょっと可哀そうだったよ」

 マツリにはジト目を贈る。

「文句の付けようのない圧倒的勝利を目指したんだから良いの。大体、手加減したから骨折で済んだし」

 マツリは肩を竦めて非難を受け流す。

「それに、ラムザだってあそこまでやる?相手は国一番か二番って言われてたんだよ?」

 逆にエイルに言い返している。

「一撃勝負を持ちかけてきたのは相手だったんだし、仕方ないよ」

 こちらも肩を竦めるだけで反省はしていない。


「ま、何はともあれ。これで校長の横暴は通らなくなったな」

 エイルの纏めにアーシェスとラクスレーヴェも頷いた。

「あとはお父様達大人のお仕事ですね」

 これを機に校長の不正が糾弾され、そこから芋づる式に貴族派の連中が処罰を受けるようになる。大人の大掃除のはじまりなのだ。

「討ち漏らしや対処までに時間が掛かる輩とか出るかもしれないから、まだ暫くは警戒が必要だ。余り油断し過ぎないようにね」


 ベルレイユ家を後にしてフェリオール家に戻ると、何というかやはり大騒ぎになった。


◆◆◆◆


 特別試合から三日後、年度末の最終登校日。全校集会をやって宿題を課されて一ヶ月近い休暇がはじまる。


「なんか何時もより視線を感じるな」

「特別試合のせいじゃない?」

「それかー」


 視線を感じるのは前からだったが、視線の質が変わった気がした。前はもっと殺気の籠った嫉妬の視線が多かったのだが、特別試合のせいか殺気が殆どなくなったようだ。


「なんだかラムザ先生への視線が増えましたね?」

「えぇ、威嚇しておきましょう」

「?」

 視線に殺気がなくなったのは良い事なので、そんなに威嚇する必要はないと思うのだが。

「先生が殺気がなくなったから威嚇しなくて良いのでは?という顔をしています」

「……そんなに顔に出てました?」

「先生は先生ですね、まったく」

 何か呆れられたがジト目が返って来るだけなので気にしないフリをしておいた。


◆◆◆◆


 年度末のホームルームも終わり、一ヶ月近いまとまった休みに入った。


「≪緋の戦乙女(ヴァルキュリア)≫から東迷宮の攻略の手伝いを頼まれているんですが、アーシェスお嬢様とラクスレーヴェお嬢様はどうなさいますか?」

 アーシェスとラクスレーヴェが思案する。

「≪黒絹≫の秘密の件、どこまで出すんですか?」

「【ボックス・トイレ】だけです」

 アーシェスとラクスレーヴェが長考に入る。

「死骸の片付けとかベッドのある部屋とか出さないんですか?」

「はい、使わないですね」

「……乙女として譲りたくない最低限は確保ですね」

 やはりお風呂と柔らかいベッド付きを覚えると抵抗感が出るようだ。

「六人用くらいのテントを買って行こうか。ラムザに添い寝できるチャンスだよ(悪顔)」

「「いきます(決意)」」

 その後、三人は女子の買い物に行くらしいので、探索者ギルドに顔を出す事にする。≪緋の戦乙女(ヴァルキュリア)≫のメンバーを探してみるが見付からなかった。ダンジョンに行っているのだろうか。キョロキョロしているとユーフェミアに捕まった。ユーフェミアは小声でラムザに話しかける。


「ラムザさん、≪緋の戦乙女(ヴァルキュリア)≫が帰還予定日を過ぎても東迷宮から帰ってこないんです。ダンジョンは早めに切り上げる事はあっても、あえて滞在を伸ばすのはリスクが高いので、もしかしたら遭難ではないかと心配で……」


 考えすぎで戻ってくれば笑い話にできるが、もし本当に助けを必要としていたら、時間との戦いの可能性がある。


「胸騒ぎがするね。遭難者救助の指名依頼を出してほしい。マツリ達を探してくる」


 エイルはユーフェミアにそう言うと、女子達が行ってそうな店を回ってみると、魔道具屋で漸く捕まった。


「≪緋の戦乙女(ヴァルキュリア)≫が遭難しているかもしれない。遭難者救助の依頼を受けてすぐにでも出たい」

 マツリは頷き返し、アーシェスとラクスレーヴェをみる。

「一緒に行きたいならお家に連絡して、許可をとること」

 アーシェスとラクスレーヴェは頷き、許可を取る方向で一旦屋敷に戻る事になった。アーシェスはマツリに任せ、ラクスレーヴェはエイルが屋敷まで送り届けた。しばらく待つと公爵の許可書を持って帰って来たので、フェリオール家の屋敷に向かう。フェリオール家の方の許可も丁度取れたとの事で、四人は探索者ギルドに戻って指名依頼を受諾した。

 東迷宮の入口の小屋で帳簿を確認すると、確かに帰っていない。帳簿に必要事項を記入して四人は東迷宮へと潜って行った。


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