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【完結】方舟の子 ~神代の遺産は今世を謳歌する~  作者: 篠見 雨
第3章 ローエンディア王国と士官学校
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第3章 第28話 ローエンベルグ士官学校の噂の彼ら

 ローエンディア王国には五つの士官学校があり、能力さえ示せば平民上がりでも国勤めが可能になる。


 東部: カレイゼン辺境伯領領都【アルゼヒト】にあるアルゼヒト士官学校

 西部: フェリオール辺境伯領領都【グランフェニア】にあるグランフェニア士官学校

 南部: ゴーガン辺境伯領領都【カマス】にあるカマス士官学校

 北部: セオニアス辺境伯領領都【カーナ】にあるカーナ士官学校

 中央: 王都【ローエンベルグ】にあるローエンベルグ士官学校


 以上、五つの士官学校である。各士官学校には共通項目として【政治経済学科】と【騎士科】があって、各辺境の士官学校の卒業生は、その地方に就職する事が多い。対して王都ローエンベルグ士官学校の卒業生は、王城勤務や王立騎士団といった華々しい肩書を持った職に就く事が多くなる。故に、各辺境伯家や地方の権力者がその子弟を王都に進学させる事は決して珍しくない。


 そんな五大士官学校であるが、年一回ローエンベルグに集合する機会がある。各学校の優秀な生徒達が母校の看板を背負い、政治経済学科は論文の発表会を、騎士科からは武術大会が行われ、その年の各学校の成果としてお祭り騒ぎの品評会が行われるのだ。

 その品評会が行われるのが、年度の終わりに近い十一ケ月目である。


 前評判として今年の騎士科は大荒れすると思われていた。ローエンベルグ士官学校の一年生に学生離れした戦闘力を有する平民がいるという噂が確度の高い情報として広まっていたのだ。ところが蓋を開けてみると圧倒的強者とされる者達が武術大会への参加を辞退していたという。平民が活躍するのを良く思わない連中の妨害、あるいは裏取引があったのでは?いや、実は大した事がないのがバレないように逃げたのでは?というように、憶測が憶測を呼び様々な陰謀説が流布された。


 品評会も開催間近となり、各学校の代表達が王都入りしていた。噂の平民と戦ってみたかったと考えている騎士科の生徒はどの学校にもおり、親睦会という名目でローエンベルグ士官学校に先乗りして一目見てみよう、あるいは一戦お付き合いいただこうと、ローエンベルグの代表達に絡むのであった。


 曰く、美少女と美少年で、どちらも黒髪である。

 曰く、実技科教師が揃って自分より実力者と認め、実技訓練が免除されたという。

 曰く、王都の二大迷宮の攻略階層更新において活躍したという。

 曰く、黄金ゴールド級探索者をしており、その実力は魔法金属級に最も近いという。


 美少女と美少年を見てみたい派と黄金ゴールド級の実力を確かめたい派が、ローエンベルグの代表に無理矢理案内をさせている。

「顔は知ってますけど、友達ではないので呼び出しとか無理ですからね」

ローエンベルグの代表は困り顔でそう応えるのだった。



 ローエンベルグの代表の一人、第二学年ジェレミア・マクガ-レンは、無理矢理両側から肩を組まれ、カツアゲされている絵面で歩かされていた。


「えーと、確か今くらいの時間帯はここら辺に……」


 昼休憩中、天気の良い日は中庭の木陰で休憩しているらしいと訊き行ってみると、いた。


「居ましたね。黒髪ロングで髪を縛っていないのがマツリ・サクラダ、黒髪ロングでサムライテール結びなのがラムザ・クロガネ。どちらも平民。亜麻色の髪の子がアーシェス・フェリオール辺境伯令嬢、金髪の子がラクスレーヴェ・ベルレイユ公爵令嬢です」


「美少女が四人にしか見えないのだが」

「残念ながら一名男子です」


遠目にみると、手元に小さな魔法を出して次々に属性を切り替えている様子がみられる。辺境伯令嬢と公爵令嬢に手解き中だと思われる。


「よし、乗り込むぞ」

 噂の強者と戦ってみたい勢の西校のライゲル君がガッツリと肩を組んだまま言う。

「僕は遠慮します」

 ジェレミア君は遠慮するのだが認められない。

「遠慮すんなよ、行こうぜ」

「いや、結構で……力つえーな離せ!くそ!」

「……」


 ジェレミア君が引き摺られていく。

 ライゲル君に続き、東校トーセン嬢と南校パラミス君が続く。

 北校のベーゼル嬢は静観を決め込んでいる。


「やあやあ!士官学校代表戦でやってきた西校のライゲルという。よろしく」

「南校パラミスです」

「東校のトーセンです。後ろで見てるだけなのは北校のベーゼル嬢ね」


 ラムザとマツリが顔を見合わせ、ラクスレーヴェに向く。顔を向けられたラクスレーヴェはきょとんとし、アーシェスに顔を向ける。

 アーシェスは皆に心当たりがないらしい事を悟り、代表して口を開く。


「えーと?何か御用でしょうか?」

「結婚して下さい!」

「お断りします」

 ライゲル君は秒で振られた。


「じゃなくて、対抗戦に出場しなかった凄腕と訊いて。少し腕試しで実力をみてみたいなーという話」

 東校のトーセン嬢が箱を横に場所を変えるジェスチャーをしながらそういった。

「まぁ良いですけど……。訓練所いきますか」


 エイルは立ち上がると、先導して歩き始めた。


◆◆◆◆


 訓練所の一画を借りて、訓練用の木製武器を手に振り心地を確かめる。エイルは木刀を手にした。

「誰から来ますか?手短に頼みたいので全員まとめてでも良いですけど」


「噂の実力者、試させてもらおう!西校ライゲル参る!」

 ライゲルが両手剣型の木剣を持って突貫してくる。エイルはそれを眺める。期待外れ感が拭えない。振り下ろされる両手剣型木剣に木刀を振り抜く。

「は?」

 ライゲルの持っていた両手剣型の木剣は根元からされて宙を舞う。思考が停止したライゲルの首元に木刀を突き付けて静止する。


「はい、終わり。次どうぞ」


 ライゲルは未だに呆然としているが、回復を待ってやる義理はない。


「あ、それじゃぁ南校パラミス、いきます」

 決闘剣術の構えで片手剣を持って間合いを計り、突きを繰り出してくる。

 瞬間、間合いを詰めたエイルが木剣をまたして首元に木剣を沿わせる。


「もういいですか?」

 エイルが女子のトーセンとベーゼルに訊く。

「「結婚してください」」

「お断りします」


実力確認の手合わせは、手合わせにもならない結果で終わった。今年の大会に出て来ないことを心底喜んだという。

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