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【完結】方舟の子 ~神代の遺産は今世を謳歌する~  作者: 篠見 雨
第3章 ローエンディア王国と士官学校
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第3章 第27話 士官学校の代理戦争

士官学校一学年 十ヶ月目。


「ラクスレーヴェ・ベルレイユ、アーシェス・フェリオール、ラムザ・クロガネ、マツリ・サクラダ、以上四名は迅速に校長室に出頭するように」


 校長からの呼び出しなどはじめてだった。何か不味い事でもやっただろうか?最近はラクスレーヴェとアーシェスの特訓に付き合うくらいしかやっていないし、学校も出席日数稼ぎかお嬢様方とのお付き合いでしか登校していない。


 呼び出される理由に見当が付かず、四人は顔を見合わせた。ともあれな出頭を求められた以上、行動に移さねばなるまい。


 四人は連れ立って校長室の扉をノックした。


「入りたまえ」


 中から声が掛かり、扉を開けて入室する。


「ベルレイユ、フェリオール、クロガネ、サクラダの四名で良いな?」

「はい、そうです。迅速な出頭を命令されましたので、お伺い致しました」


 校長をまじまじと見たのは入学式以来かもしれない。


「よろしい。では、正直に答えてくれたまえ」

「はい、なんでしょうか?」


 校長は椅子に反り返り、片眼鏡モノクルを外して机に置いた。


「君たちは魔法実技と剣術実技の授業を免除されている。そうだな?」

「はい」

「何故だ?」

 校長は片眉毛を上げつつ問う。

「……?仰る意味が分からないのですが」

 意図を掴みかね、エイルが代表して訊ねる。

「何故免除になっているのかと聞いている。おかしいではないか。今年は貴族派の子弟で免除になった者がいないのだぞ?」

「お言葉ですが、授業免除は成績によるものと認識しております。何故主義や派閥の話が出るのでしょうか?」

「貴族派の父兄から監査を求められている。ベルレイユとフェリオールだけを優遇し過ぎではないか、とね」

「……。つまり校長は、ベルレイユ家とフェリオール家が不正を働いているのではないかとお疑いになっていると?」

 エイルの声が冷えていく。

「そうは言っていない。だがおかしいとは思っている。監査が入れば困るのではないかね?」

「校長は実技科教師の判断をお疑いになると?監査が入ると困るというのは何故でしょうか?」

「実技の講師など新参者の判断の何を信じろというのだね?監査が入れば家が困るだろうと言っている」

 エイルは横目で三人の顔を眺める。何れも不快感を隠していない。

「つまり校長は貴族派と癒着していて、貴族派の言いなりで、監査では証拠がなければ証拠を作ると?」

 校長はスッと表情を消していう。

「言葉を慎みたまえ。これだから話の通じない平民は嫌いなのだ。ベルレイユとフェリオールもよく考える事だな。幸い切り捨て易い平民がいるのだからな。終わりだ。出て行きたまえ」

「……それでは失礼します」



 校長室を出ると、エイルは自分を中心にした【防音】の結界を張った。

「防音結界を俺を中心に張った。喋っていいぞ。とりあえず中庭にでも移動するか」


「あれ癒着と不正を隠す気もない感じ?」

「監査を抱き込んで証拠作りをしそうですね。言質を確認できなかったのが残念です」

マツリが不愉快です。という顔で言い、アーシェスは審理の魔眼で言質を取れなかった事を悔やむ。ラクスレーヴェは父親を巻き込んでの対策を思案しはじめる。

「幾つもの手を同時に打って来るはずです。先ずはお父様達とフェリオール辺境伯に連絡を」


 エイルが溜息を吐きつつ空を仰ぐ。

「この国はそういうのに厳しいって聞いてたんだけどな。尻尾出し始めたのなら成功か?」


◆◆◆◆


 今日の訓練は中止し、フェリオール家の屋敷に向かう。ガーラッドに面会して状況を説明すると、次にベルレイユ家の屋敷に移動してルーゼルバインにも状況を伝える。


 両家とも怒りを押さえた笑顔で鉄鎚の落とし方を検討するそうだ。貴族社会の事は貴族に任せるのが一番である。ラクスレーヴェの部屋で四人でお茶を飲みつつ、検討会をはじめる。


「先ず、今日の言い掛かりについて。あれは相応の実力が認められれば難癖でしかない事が証明出来るはずだ」

 エイルが要点を離すと、証明するための成績など根拠の情報そのものの操作についての懸念をアーシェスが指摘する。

「ですが成績の操作などの汚い工作もやってきそうです」

 

 そこにエイルが首肯し、条件を足す。

がある誤魔化しのできない状況を作り、そこで実力の証明ができれば良い。例えば剣術大会で好成績を残すとかだな」

「何か口実が欲しいですね。天覧試合でも行えれば良いのですが……」

 ラクスレーヴェが真剣な表情で検討をはじめる。

「学校のイベント事でそういう場はないのかな?」

 マツリが残り二ヶ月の期間で何かイベント事が無かったかを思い出そうとする。

「士官学校代表戦がありますが、私たちは出場を辞退しています」

 士官学校代表戦の成績は卒業後の進路に直結するため、二年生や三年生で必要な人達が選ばれれば良いと思って辞退している。出場すれば上位を四人で占められるという確信があったからだ。

「こうなるなら四人とも出場しておけば良かったね」

 マツリが悔しがるが、ラクスレーヴェがそれを宥める。

「出ていれば出ていたで、手口と手段が変わっただけですよ」

 エイルがラクスレーヴェに確認する。

「士官学校代表戦の時に特別試合をやらせてもらうとかどうだろうか」

「なるほど……。国を代表する現役の騎士に挑戦する学生という形で特別試合を捻じ込めれば、天覧試合にもなりますし誤魔化し切れませんね」

 エイルがラクスレーヴェに頷く。

「それを捻じ込むのを、辺境伯と公爵でなんとかできないかな。その後は俺達が勝てばいい」

「行けるかもしれないですね。父に相談しておきます」

 アーシェスも目に力が籠る。

「私も、屋敷に帰ったら相談してみます」


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