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【完結】方舟の子 ~神代の遺産は今世を謳歌する~  作者: 篠見 雨
第3章 ローエンディア王国と士官学校
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第3章 第24話 西迷宮体験ツアー(1)

 週末の連休と週明けの実技の免除を合わせて西迷宮に挑むツアーを計画した。西迷宮のマップは交流のある≪緋の戦乙女(ヴァルキュリア)≫から提供してもらった物のため、信頼度が高い。代わりに東迷宮の攻略階層更新の遠征への協力を頼まれたが。


 アーシェスとラクスレーヴェは人生初のダンジョン攻略である。計画を立てて実感が湧いてくるとそれはもう子供のようにはしゃいでいた。


 そして、この迷宮攻略にあたり、二人に約束させた事がある。

しっかり指示に従うこと、気になる物を見付けても迂闊に触らないこと、無理をして怪我をしないこと、そして最後が「≪黒絹≫について知り得た秘密は決して他言しない」ことである。


 これが信用度の低い利害関係者であれば契約魔法で契約書を作って約束させてもいいのだが、今回は自分達の生徒だ。口約束でもしっかり秘密は秘密として守ってくれるという信頼である。


 攻略予定日、西迷宮の入口の小屋で迷宮入りするための手続きを行う。今は迷宮に挑戦中のパーティが五組も居るらしい。途中で接触して余計なトラブルにならなければいいのだが。


 ダンジョンの入口を跨ぐと、何時ものように魔素の濃さの差によって空気感が変わる。最序盤はやや駆け足で進んでいく。先行しているパーティが近いようで、生きているターゲットは居なかった。最序盤でコツコツやっている感じだろうか。

 マップを片手に進行していき、特に戦闘らしい戦闘もないまま十階層にまで着いた。この階層でうろうろしていたパーティを一つ追い抜き、更に奥へと向かう。ボス部屋も開いていてはやることもなく若干気が抜けてきている気配を感じる。

 ここからも駆け足で進行し、二十階層に届いた頃に漸く生きている敵と相まみえた。


迷宮二十階層。

 豚鬼オークの群れ。大き目の部屋に大量の豚鬼オークが住んでいて、なおかつ次から次に応援がやってくる。なるほど、これは「質より数」だ。

 はじめての実戦で緊張しているだろうが、都合よくタイマンの状態を作ってあげられる程の余裕はない。二人には一匹ずつ相手が出来るように誘導はしているが、アーシェ側に二匹同時に行ってしまう場面もあった。

 彼女達ははじめての実戦でも臆する事無く、きっちりと仕留めてみせた。次から次にお替りがやってくるため、余韻や感慨に耽る間もなく連戦である。

 ようやく襲撃が一段落したところで少し休憩を取る。休憩中にマツリと一緒に死骸を回収していく。


「思った以上に連戦で、感慨に耽る間もありませんでした」

 体力はまだまだありそうだった。

「このままボス部屋にまで行ってしまおう」

 駆け足で走っていく。しばらく後に両開きの扉が見えてきた。

「あの扉を開けたらボス部屋だ。指揮官の豚鬼オークがいるようだから、戦術には気を付けて」


「「はい!」」


 ボス部屋を開くと豚鬼オークの指揮官が一体、身体の大きい個体だ。その兵隊として剣や斧を持った配下の豚鬼オークが並んでいる。飛び道具や魔法もなさそうで初のボス戦としては楽であろう。出来るだけ早くに配下を全滅させ、残った指揮官をラクスレーヴェとアーシェスに任せて見守る。敵の攻撃もしっかり見えているようで、無駄のない回避からの反撃を積み重ねている。やがて首を裂いた攻撃が止めとなり戦闘が修了した。マツリが死骸を回収していく。



迷宮二十階層の下り階段部屋。


 ここで一旦休憩を取る。部屋の端に【ボックス・トイレ】を設置し、マツリが使い方を教えている間にテーブルを出して食事の準備を進めておいた。


 戻って来た女子二人は温かい料理が一瞬で用意されている事に驚いていた。

「≪黒絹≫の秘密だよ?俺達は特別製の異空間収納を持っているんだ。温かい食べ物を入れれば温かいままで取り出せる。屋台料理が殆どだけど、味気ない干し肉と硬いパンより余程いいだろう?」

 ≪黒絹≫の秘密と言われると顔が真剣になって頷いていた。


 「もう判っていると思うけど、【ボックス・トイレ】も収納しているし、今回倒した敵も全部収納に仕舞ってある。これから倒す敵も全部持って帰る予定だ」


 食後に、マツリから二人に鎧の上から羽織れる大き目のローブが渡された。これを着ていれば致命傷は避けられるであろうという物で、そんな装備を持っていることも勿論秘密の一つである。


 なにせ今回は大切な生徒たちを生還させるのが最優先だ。ちょっとやそっとの秘密の開示だけでは守り切れなかった時にどれだけ悔やむか。だから自重せず万全を期すべきだった。


 迷宮二十一階層から二十三階層までは食人鬼オーガが沢山出てきたが、迷宮二十四から二十五階層に掛けては、生きている敵はいなかった。閉じられた両開きの扉をみるに別パーティがボスと戦闘中だろうか。中の気配を探ってみてもそんな感じだった。戦闘の気配がなくなり両開きの扉を開けられるようになってから中に入ると、ボスは不在だった。下り階段の部屋に進むとそこでキャンプの準備をしているパーティがいたため、挨拶をしておく。


「休憩ですか?先に進ませてもらってもいいかな?」

 声を掛けると、相手は頷いて返事を返してくれた。

「こちらは今夜はここでキャンプです。お先をどうぞ」

「ありがとう。それでは」


 簡単なやり取りが終わると、迷宮二十六階層に降りていく。

「これで二パーティ目かな?あと三パーティは先かもしれないね」

 穏便に済めば言うことはないのだが。

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