第3章 第23話 誕プレ開封の儀
お茶会から五日後、ラクスレーヴェの誕生日だった。茶目っ気で誕生日アピールをしていたから準備はしておいたのだ。
「ラクスレーヴェお嬢様、誕生日おめでとうございます」
誕生日のプレゼントに購入しておいた指輪の入った小箱を手渡す。
「まぁ、本当に頂けるとは思っておりませんでした。今開けても?」
ラクスレーヴェに頷き返すと、几帳面に包装を剥がしつつ小箱を取り出し、中を開いて確認する。
中に収まっていたのは、当然ながら天銀合金製のシンプルな指輪である。
「こちら、天銀合金製の魔道具の指輪となります。【サイズ自動調整】の他、【精神魔法耐性】の効果が付与されております。この指輪で洗脳や催眠などの搦め手から、お嬢様をお守りできればと思いご用意いたしました」
ラクスレーヴェはとても喜んでくれたが、アーシェスとマツリは物言いたげなジト目を飛ばしてきた。
「ラクスレーヴェお嬢様の誕生日のお祝いを申し上げた席で申し訳ありません。アーシェスお嬢様とマツリのお誕生日プレゼントを、この場で前払いさせて頂きたいと思います」
そういうと、ラクスレーヴェに渡した指輪と同じ小箱をアーシェスとマツリに渡す。二人とも中身を確認し、お揃いの指輪である事に気付いて喜んでくれた。
「【サイズ自動調整】機能付きのため、小指など邪魔になり難い指に付けていただければ幸いです」
そういうと、自分用に購入していた【精神魔法耐性】お指輪を付けた小指をみせる。デザインは殆ど一緒だが、女性用に比べてリング自体が幅広で、無骨な印象がある物になっている。
「前払いとは何事かと思いましたが、なるほど納得です。ラムザ先生ありがとうございます」
「ラムザありがとう、貰えるとは思っていなかった」
三人娘はお互い小指に付けた指輪を見せあい笑顔の華をさかせていた。
「(うん、喜んで貰えて幸いだよ)」
その光景をみてラムザはやりきった達成感を感じ、頬が緩むのを感じていた。
◆◆◆◆
ラクスレーヴェの剣術指導を引き受けて一ヵ月、彼女は魔力量が多く魔法が得意という事もあり、魔力による身体強化を中心に、攻撃を避け、受け流す、身を守るための体捌きを中心に教えていた。
敵の接近戦を凌ぎつつ魔法を使えるようになれば上々ではなかろうか。学校の成績のためにも攻撃の方も学びたいとは言われたが、それは体捌きが身に付いてきてからで構わないと考えている。攻撃を捌けるようになれば、自然と隙を突けるタイミングも判って来るだろう。ラクスレーヴェは地頭が良いので、体捌きで隙が出来るように誘導する戦い方も出来るようになるだろう。
一方、アーシェスの魔法の練習も、次の段階に移ることになった。本人の強い意向により、学校で習う範囲の魔法実技の修了を目指す事になった。ラクスレーヴェが魔法実技の免除を貰っているので、アーシェスも魔法実技の免除を貰って、何とか授業のコマを空けたいようだ。
ラクスレーヴェが剣術実技の免除を貰う前に何とかしたいという、強い対抗意識が感じられた。基本的に二人とも負けず嫌いらしい。アーシェスはラクスレーヴェ程魔力に恵まれている訳ではないが、剣術で鍛えた集中力には素晴らしい物がある。その集中力を武器に魔法の構成速度を磨いた。結果、接近戦をやりながら補助的に魔法を使いこなせるようになった。
第一学年も残り三ヶ月に迫った頃、第一学年分の魔法と剣術の履修が終わった。第二学年分、第三学年分はまだ残っているが、とりあえず三ヶ月は自由を勝ち取れた。アーシェスとラクスレーヴェはそれぞれ学年でトップ争いをしていて座学の心配もない。
三ヶ月分の実技免除により空いた時間で、「先生、ダンジョンに潜ってみたいです!」とアーシェスが言い始めた。ラクスレーヴェも目の色を変えて賛意を示し、「ご家族の同意を取ってこれたら考えてあげる」と答えたところ、程なくして二人とも父親の同意書を持って来た。
「同意書には≪黒絹≫が同行する場合に限り」と明記されており、その信頼は裏切れないな、と感じた。皆で協議したところ、潜るのは西側迷宮になった。こちらは以前に行った東側迷宮に比べて敵の戦力が「質より量」である。量を捌けるように体力トレーニングを課してきた。東の方は二人を前に出すには事故が怖いが、西なら何とかなるはずだ。
事前の下調べの一環として≪緋の戦乙女≫に接触した。西側迷宮のマップの提供の依頼だ。勿論タダとは言わず、それなりの礼金は用意してある。
オフィーリアとカイエの許可をもらった上で西側迷宮のマップの写しを作成できた。六十階層までのマップだ。ありがたい。その代わりに東側迷宮のダンジョンアタックへの協力を求められたので、予定の調整さえさせて貰えればと了承した。
魔道具屋に行き、各種ポーション類の消耗品を大量購入した。その後は屋台料理などテイクアウト出来る食事や果実水なども大量購入していく。
今回は貴族のお嬢様二人をエスコートしないといけないため、自重などして居られない。≪黒絹≫の名前で預かる以上は必ず無事に帰すのだ。
評価、ブックマーク登録、いいね などの応援をお願いします。
モチベーションや継続力に直結しますので、何卒よろしくお願いいたします。




