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【完結】方舟の子 ~神代の遺産は今世を謳歌する~  作者: 篠見 雨
第3章 ローエンディア王国と士官学校
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第3章 第22話 ベルレイユ公爵家

 後日、改めてラクスレーヴェからアーシェス宛にお茶会のお誘いの招待状を受け取った。学校が休日の日の午後イチからのお誘いである。当日は送迎の馬車が来る予定だった。


「友達のお茶会なんてはじめてだわ。ドキドキします」

 アーシェスは社交向きの着慣れないドレスを纏い、そわそわが隠せていない。

「どうでしょうかラムザ先生。変じゃないですか?」

 何時も動きやすい訓練着か学校の制服姿ばかりなので、とても新鮮にみえる。

「とてもよくお似合いで、可愛らしいですよ」

 ラムザがそう答えると、にまにまして嬉しそうになっていた。発言が本物かどうか視たに違いない。

「私はどう?メイド姿似合っている?」

 マツリが自分も褒めろとばかりに言って来た。

「あぁ、マツリも似合っていて可愛いよ。装いだけじゃなく、立ち振る舞いを磨けばきっと評判の良い人気メイドさんになれるね」

「立ち振る舞いは治らなそうだけど」という感想を伝えなかっただけだから、嘘発見機アーシェスは反応しない。

 そしてエイルはまた執事の装いにされていた。アーシェスもラクスレーヴェも喜ぶのだから、着ても良いかな、という気分になる。


 応接の間の隣にある談話室で話をしていると、屋敷の敷地内に馬車らしき気配が入って来たのを感知する。


「お嬢様、どうやらお迎えの馬車が参られたようです。エントランスに向かいましょう」


◆◆◆◆


 ベルレイユ家の王都の屋敷は、アーシェスの王都の屋敷より更に規模の大きい物だった。

「公爵家ともなるとお屋敷も大きいのですね」

 小国の城より豪華かもしれない。


 馬車から降りると、一旦応接室に通された。

アーシェスがソファに座り、その背後にマツリと一緒に控える。アーシェスがチラリと背後を振り返って来る。マツリと二人で小さく手を振ってやると、にまにま顔になっていた。


 侍女がアーシェスにお茶を淹れてくれた。そしてマツリとエイルをみると困った顔をする。

「私達は使用人として控えているなので、お気になさらずに」

 困り顔の侍女に柔らかく笑顔を送り、気にしないで欲しい旨を伝える。


 応接室で暫く待っていると、扉がノックされた。

 座っていたアーシェスも立ち上がり、入室を待つ。こちらの準備が出来た事を察した侍女が扉を開け、傍に控える。

 中に入って来たのは、ラクスレーヴェとその父であった。


「ルーゼルバイン・フォン・ベルレイユだ。アーシェス殿はお久しぶりですね。また一段とお美しく成長されたようだ」

 流石は公爵、第一声から女性を仕留める手管に恐れ入る。

「そして後ろのお二人ははじめまして。≪黒絹≫としての評判は聞いているよ」

 流れるようなに背後の二人にも挨拶をし、同時に「調べは付いている」と言わんばかりの言葉を添える。

「恐縮です」

 エイルは会釈し、畏まってみせる。もっと下手に出て然るべきなのかもしれないが、今日はアーシェスのお付きとして来ている。畏まりすぎは主人の格を下げるかと思い、振る舞いを調整する。

 この塩梅は相手の感じ方次第な部分もあるため何時まで経っても慣れる事はないが、今回は「ラクスレーヴェの友人のアーシェスの同行者」として妥当な対応を取れたようだった。


「それで、単刀直入に聞かせて貰いたいのだけれど。ラクスが君たちに剣術を習いたいそうだ。良ければ教えてやってはくれないだろうか?」


 あまり細かい腹の探り合いや飾った言葉を好まない性格の方のようだ。


「我々でよろしいのでしたら、引き受けさせて頂きます。ただ、我々はフェリオール家に下宿させていただいている身です。学校帰りや休日などの訓練は、できればフェリオール家の敷地でやらせて頂きたいと思うのですが、よろしいでしょうか」


 こちらも敢えて腹芸をする必要はない。フェリオール家とアーシェスに義理は通し、その上で良いのであればという条件で引き受けることとする。


「あぁ、それで構わないよ。詳しい話は帰りまでに遣いを寄越すから、そちらで詰めて貰えれば良い」

 公爵はからっと笑うとエイルとマツリの肩を軽く叩き、

「娘を宜しく頼む」

 と一言残して退室していった。


◆◆◆◆


「こんにちは、ラクスレーヴェお嬢様」

 エイルとマツリがラクスレーヴェに改めて挨拶をする。

「こんにちは、ラムザさん、マツリさん。正式に剣術を師事する事になりましたので、先生呼びの方が宜しいかしら?」

 悪戯っぽく微笑んでくる。

「今はお茶会にお呼ばれしたアーシェス様のお付きでございますれば」

 こちらも口元を緩めつつ切り返す。

「それでは、テラスに向かいましょう?お茶の支度が出来ているはずです」

 ラクスレーヴェと侍女に案内され、中庭のテラス席へと案内されていく。

「ところで、お父様の仰っておられた≪黒絹≫とは何のお話でしょうか?私だけ知らないのかしら?」

 口元に指を添え、小さく頭を傾げて見上げて来る。

「ラムザ先生とマツリ先生は本業は≪黒絹≫という探索者チームで、黄金ゴールド級の凄腕なんです」

 アーシェスが自分のことのように自慢気に話をしているのが微笑ましい。

「まぁ、そうだったんですね?士官学校でも別格の実力者だとは思っておりましたが。詳しくお話をお伺いしたいわ」


 今日のお茶の茶菓子の添え物に≪黒絹≫の活動を色々とお話する事になるのであった。

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