第3章 第14話 東迷宮の合同遠征(4)
四十一階層目から四十五階層目。
四十階層目のボスを独り占めしたことで、その後の雑魚戦はしばらくマツリに独占されてしまった。
仕方がないので、カナリエ達としゃべりながらついていく。
「最近錬気の方の調子どう?」
「あまり変わらず、です。前よりもはっきりと分かるようになってきたんですが、霊気を動かすとか魔力に溶かし込むとか、そこら辺がぼやーッとしてて、上達している感じがしないんですよね……」
カナリエが困り顔でそう答える。レーヴィアの方も似たような様子なのか、頷いていた。
「そうか、うーん……。なんかごめんな?もしかしたら素養とかの話かもしれないし……」
身にならない修行をやらせているかも知れないという後ろめたさから、思わず謝ってしまう。カナリエとレーヴィアは慌てて手を振りつつフォローする。
「あ、でも、魔力も前よりはっきり感じるようになって来たので、無駄じゃないですよ!教えて欲しいと頼んだのはこっちですし!」
カナリエ達を慰めるつもりが逆に慰められてしまい、据わりが悪い。
「そうだ、ちょっと試してみてください」
カナリエがそういってエイルの右手を両手で包む。
「?」
「むむむむむ……」
眉間に皺を寄せて何やら念じている。それを眺めていると、包まれた手にほんのりと霊気が流れて来た。
「お?ちょっと流れて来たよ」
「ほんとですか?上達してますか?」
「うん、ほんとほんと」
エイルがカナリエの努力を見てほっこりしていると、左手をレーヴィアが包んで同じことを始めた。
「う~~~~ッ」
「あぁ、レーヴィアもちょっと流れて来た。二人ともちゃんと努力続けてるんだな」
レーヴィアにも成長がみられてエイルが喜ぶ。
「(この子達なりにゆっくりと成長してる。それを俺が勝手に見切りをつけてちゃ駄目だよな)」
エイルはほっこりすると同時に、バツの悪さを感じる。また何か良い修行方法を考えてやらないと、という気持ちになっていた。
一方、オフィーリア達≪緋の戦乙女≫のメンバーはエイルのボスとのタイマンに手に汗握り、マツリの無双っぷりに爽快感を覚えていた。「こんな特等席そうそうないぞ」とばかりに、目で通じ合っている。
それに気付かないのはエイルとマツリだけであった。
四十五階層ボス戦。
首のない馬に跨った、首無し騎士が待っていた。片手で手綱を持ち、もう片手でランスを携えている。
首無し騎士は馬首(?)を巡らせ突出したエイルとマツリに向かって馬を駆る。擦れ違い様に突き出されたランスを回避すると、反撃前に距離を稼がれてしまう。首無しの馬は魔馬の一種と言って良いものかは微妙だが、普通の軍馬よりもずっと機動性が高く、頑丈そうだった。
エイルは大身槍の長槍を構え、擦れ違い様に首無し騎士に穂先を突き込む。マツリは手綱を持つ逆サイドからから、馬の脚を刈り取るように大戦斧を叩き込む。
マツリの大戦斧で前足を斬り飛ばされた馬が崩れ落ち、バランスを崩した首無し騎士の脇腹を大身槍の穂先が貫く。
落馬した首無し騎士はエイルの追撃を素早く躱して立ち上がり、ランスを捨てて腰の長剣を構えた。首無し騎士は脚を奪われた自分の乗騎に長剣を突き刺すと、首無し馬は枯れ細っていく。反対に、首無し騎士の貫かれた脇腹は修復が済んで、纏う魔力の気配が一層濃くなった。首無し騎士は長剣を両手持ちし、素早く間合いを詰めて突き、薙ぎ、斬り落しと流れるように淀みない連携でエイルに迫る。感じる魔力は大したものだが、ガーラッドの剣を見た後だと盛り上がりに欠けると言わざるを得なかった。
大身槍を手放し打刀の抜き打ちで左腕の肘の内側、鎖編みの部位を深く斬り付け、踏み込みながらの返す袈裟斬りで右腕の脇の下、鎖編みの部位を的確に刻む。
首無し騎士の両手持ちした長剣の勢いが鈍る。
大戦斧から大戦鎚に持ち替えたマツリが胸当を真正面からフルスイングで殴打し、首無し騎士が落馬した時以上の勢いで飛ばされ地面を転がって仰向けで止まった。
首無し騎士の胸当は大きく陥没しており、その下の身体構造まで破壊しコアを割砕いたであろう事が窺えた。
「情緒もへったくれもねぇな」
エイルが敵ながら哀れに思えてならず、成仏して来世は幸せになれよ、 と心の中で哀悼の意を表した。
◆◆◆◆
首無し騎士が子供の玩具のように壊れて転がった。あんまりな光景に「ふひっ」と誰かが噴き出した。ラムザの正確で洗練された刀捌きに魅せられた次の瞬間、これである。変な笑い声が出ても仕方あるまい。英雄譚というより喜劇である。
「隊長が変な声出して笑ってるッス」
誰かがそう指摘した。え?隊長?さっきの「ふひっ」が?隊長でもそうなるんですね。
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